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「ちょ、何よ急に手を繋いで!」

「いや、俺しか塔の中に入れなかったら困るだろ」

「さ、先に何か一言いいなさいよ!」

「いいだろ別にこれくらい!」


 ぎゃーぎゃーと掴み合いながらごねていると、部屋の奥のほうから声がした。


「もし」


 凛、と透き通った、鈴の音みたいな声だった。


「久し振りですね、ゾーイさん」

「二度と見たくない面だわ、リリィ」

「そしてあなたが、古代端末を持っている異国の民ですね」

「ノーフェだ」

「ノーフェさん。わたくしはパル愛護団体のリリィです。以後お見知りおきを」


 にこり、とこれまた綺麗な愛想笑いを浮かべるリリィ。

 白髪に薄紫色の瞳。美少女だな。間違いない。

 ……にしても変な空気だな。てっきり入った途端に臨戦態勢かと思ったが。


「ノーフェさん、パル愛護団体に入りませんか?」

「入らないけど、なんで?」

「パルは清らかな生物です」

「……ん?」

「まさに自然界の産んだ奇跡。その神秘な生命を持つパルを、ともに守り生きていきませんか」

「いや、うーん? 動物園を作りたいってことか……ですか?」

「ドウブツエン……?」

「パルを捕獲して、見世物にして生かすみたいな」

「そんな、非道な! まずパルスフィアの使用を止めるのです。そして不要にパルを傷つけるのを止め、パルの肉を食べることも止めるのです」

「いやー、それは無理じゃない、すかね。普通にこっち殺して食おうとしてくるじゃん、あいつら」

「それは自然な対応です。あの口にするのも忌々しい……『球形の監獄』を用いて生き方を縛る人間たちの存在のほうが、歪なのです」


 球形の監獄。パルスフィアな。


「そうかなぁ」

「そうです。パル自体は善でも悪でもない清らかな存在なのです。人間の触れ方ひとつで、白にも黒にも染まる美しい生き物。だから我々人間が、悪に染めてはならないのです」


 ふむ、と俺は少し思案する。

 なんか、話が噛み合わねぇな。


「俺には善とか悪とかわかんねーな」

「パルの意思を無視し、強制的に労働させ、さらには争いの道具にさえ扱う。人間たちのそんな醜い所業が、パルを悪に染めるのです」

「でもさ、悪だって判断したのがお前なら、お前が悪なんじゃねーの?」

「……どういう意味ですか?」


 リリィの藤色の目が、一段と冷めた気がした。

 俺は構わず話す。


「お前がいなきゃ、悪を悪だと認識できる人間がいないってことだろ。じゃあ、お前が悪人じゃねーか。俺たちはあるものをあるがまま受け入れてる人間で、お前らは『わざわざ悪人を決めつけて』生きてる。そっちの生き方のほうが、よほど歪だと思うけどね」

「無法であることが美しいとは限りません。わたくしたちはより清く生きようとしているだけです」

「なら、どうして『悪』を作ったんだよ。それなら自分の生き方を他人に押しつけることなく生きていけばいいだけじゃん。他人を悪者呼ばわりしてるあんたらこそ、諸悪の根源だろうがよ」

「悪はあなたたちです」


 がくん、と俺は項垂れる。

 ダメだー、こりゃー。


「はぁー、がっかりだよ、俺ぁ。生き方に芯のある人間と会えるって聞いて、どんな崇高な理念持ってるのかとウキウキしてたのに、ただの勘違い女の妄言聞かされるだけなんてなー」

「あなたはわたくしたちの考えに異を唱えるということですね」

「他人に迷惑かけずに生きましょうって、オヤジかオフクロから教わらなかったか?」

「……っ!! わたくしに『親』などおりません!」


 なぜか、『親』という単語に異様なほどの反応を見せ、リリィが声を荒げた。

 そしてどこからともなく、一体のパルが俺たちの間に割って入ってくる。


「リリクインさま! 参りましょう! 賊を打ち倒すのです!」


「結局バトルかぁ」

「だから言ったでしょ。話すだけムダって」

「……あれ、そんなこと言ったっけ?」

「少なくとも言った気になってるわ」


 俺はヒギツネを、ゾーイはエレパンダを出し、戦闘に備える。


『パル愛護団体創始者 リリィ&リリクイン HP69,375』


 ぽかん、と俺は口を開けたままフリーズした。

 ろく……ろくまん……?

 ゾーイ&エレパンダの2倍強。

 そのゾーイ&エレパンダが仲間になっているとはいえ、急に無理ゲーが始まった気がした。


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