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『拠点にパル愛護団体の強硬派が進行中』。
初めてのパーティメンバーと一夜を明かした朝の目覚めは、物騒なアラートと共に始まった。
「やっべ、おい、お前ら起きろ」
「むにゃ……もっと冒険……外の世界……」
「おはよう、コーヒー飲む?」
「それどころじゃない。ここにパル愛護団体が攻めてくるらしい。身支度整えろ、お前ら」
「むにゃ……パチッ。あん、愛護団体ぃ……?」
「分かるのかい」
「古代端末からアラート鳴ってる。準備しろ」
ゾーイはのそりと起き上がると、ぱちゃぱちゃと川の水で顔を洗い出す。
マイペースにもほどがあるぜ。
「距離あと50m。もう来るぞ」
「待って、メイクがまだよ」
「してる場合か。スッピンでも充分可愛いから気にするな」
「かわ~~~~っっっ!!!!??? ば、バカ言ってんじゃないわよ!!」
「うるっせぇな! 敵襲だって言ってんだろ、お洒落してねぇで構えろぉ!」
があがあと言い争っていると、緑色のローブを着て、ハンドガンを持っているやべーやつらが押し寄せてきた。
「パルを強制労働させている! 許せない!」
「パルは愛すべき存在! 人間と同等に扱うべき!」
「許すまじ、許すまじ!」
「レイン密漁団が解体された今こそ、我らが力を示す時!」
ぞろぞろと押し寄せる敵の数々。
「出し惜しみはナシだ。アロニウム! 押し潰せ!」
「い、行くよスマイル! ……何変にニヤついてんのよ、行くったら行くよ、スマイル!」
昨日の敵は今日の友。
三人がかりで合計六人ほどのパル愛護団体を軽く捻じ伏せた。
ハンドガンの弾丸をアロニウムの肉壁で防御し、三連弓でヘッドショットを狙い、アロニウムで押し潰す。
もはや武装したていどの人間など敵ではなかった。
「で、アンタたち、まだアタシのこと根に持ってるワケぇ?」
エレパンダのお尻で踏み潰しながら、ゾーイはパル愛護団体のひとりに聞く。
「ぐぎ……。い、今こそパル愛護団体の……布教を……」
「何だかんだ愛護団体とやり合うのは初だな。レイン密漁団とは仲が悪いんだっけ?」
「そーね。根深い理由があんのよ。あたしも知らないけど」
「知らないけど根深い理由ってなんだよ」
「あたしが物心つく前から、ずっとやり合ってるのよ、こいつらとは」
「シオラ。こいつらと密漁団の因縁って知ってるか?」
「そうだね。完結に言うと、親族を密漁団に皆殺しにされた者たちの集まりが、パル愛護団体って感じかな」
「とんでもない恨み買ってて草」
「今では愛護団体が多方面に敵を作ってるよ。唯一、自警団とは繋がっているくらい」
「ほーん」
パルを守りたい人たちと、島に秩序をもたらしたい人たちか。
確かに、このふたつが手を取り合うのは想像できるな。
そして、略奪と暴力を繰り返す密漁団と愛護団体がどんだけ相性悪いかもわかった。
などと考えていると、スマイルを引っ込めたゾーイが俺のほうを見る。
「ノーフェ」
「なんだ」
「パル愛護団体の塔を破壊しに行きましょう」
「あ、そうか。こいつらも塔を守ってんのか」
「散らばったレイン密漁団じゃ、勢いづいた愛護団体を止める術はないわ。彼らの生きる場所のためにも、愛護団体の戦力も同じように削がなければいけない」
「お前を見限った連中の心配をしてるのか?」
「このままじゃ愛護団体にこの島が支配されるって言ってんの。いい? こいつらはパルを食べるなとも言ってるのよ。明日にはモコロンの香草焼きなんて食べられないかもしれないわ」
「マジかよ。じゃあこいつら何、一生焼きベリーでも食ってんの?」
「草食なのよ」
勝手に草食って生きて死ねばいいのに、なんでそれを他者に押しつけんだよ。
こいつらに世界の覇権を握らせるわけにはいかねぇ。
「よしわかった。次の目的はパル愛護団体の塔だな。景気づけに肉食っていこうぜ」
「羊肉は飽きたわ」
「イノボウのベーコンエッグ作るから待ってろ」
とりあえずロープで拘束したパル愛護団体を風下において、肉汁溢れるタンパク質の香りの暴力をこれでもかと味わわせてやった。
唾を飲み込まない敵はいなかった。