魔族四天王ベガ
僕達は二手に分かれてコカトリスと地竜を討伐することにした。僕とメアリーはコカトリスを担当し、ギンとマギーが地竜を討伐することになった。ギンとマギーが二人の連携で地竜を討伐すると、後ろから拍手をする魔族が現れた。魔族四天王の一人ベガだ。彼からは100人隊長を遥かに超えるレベルの魔力が感じられた。一方、その頃、僕とメアリーはコカトリスを討伐していた。
「メアリー!僕が目を攻撃するから、メアリーは上から攻撃して!」
「わかったわ。」
コカトリスは口から毒液を吐いてきた。僕はそれを横に飛んで避けた。
「危ないなー!お返しだよ!」
『シャイニングビーム』
僕の指から光線が放たれ、コカトリスの右目に直撃した。
ギャギャギャ
次の瞬間、メアリーが上空から剣を振り下ろした。だが、コカトリスは翼をはためかせて風を起こした。思わずメアリーは大きく吹き飛ばされる。
「メアリー!こういう相手は急いじゃ駄目だよ。少しずつ削って行かないと。」
「わかったわ。」
今度はメアリーが剣に炎を付与して切りつけた。コカトリスは鋭い爪でそれを受け止めようとしたが、メアリーの剣が爪を砕き翼に食い込んだ。
ギャー ギャー ギャー
僕はその隙に再び残った目に攻撃を仕掛けた。
『シャイニングビーム』
すると僕の放った光線がコカトリスの左目に直撃した。コカトリスは左右の目から血を流しながら暴れた。
「メアリー!今だ!」
一旦コカトリスから離れたメアリーが上空高く舞い上がり、眩しく光る剣を一気に振り下ろした。すると、コカトリスは頭から2つに分かれ絶命した。
「終わったわね。」
「ギン達のところに行こうか?」
「うん。」
僕とメアリーはギンとマギーのところに向かった。
その頃、ギンとマギーは魔族四天王ベガと交戦中だった。
「なかなかお強いですね。ギンさん。やはりフェンリルだけのことはある。ですが、これは受け止められますかな。」
『シャドウミスト』
辺り一帯が黒い霧に覆われていく。そして、マギーとギンの身体に次々と傷ができる。
グハッ
マギーは耐えきれずに地面に倒れた。ギンは力を振り絞って魔法を放つ。
『サンシャイン』
すると、フェンリル化しているギンの口から光の玉が現れ、どんどん大きくなる。以前僕が使った魔法だ。その輝きが黒い霧を消滅させていく。そして、ベガに向かって飛んで行った。ところが、ベガは手から黒い霧を出してその太陽を飲み込んでしまった。
「さすがですね。そこの裏切者とは比べ物にならないほどお強い。ですが、そろそろ終わりにしましょうか。」
丁度その時、僕とメアリーが戦闘場所に転移してきた。目の前には怪我をして倒れているマギーと傷だらけのギンの姿があった。
「お前がやったのか?」
「これはこれは。あなたがシンさんですか?初めまして。私は魔族四天王の一人ベガです。この方達にはちょっと遊んでいただいていたんですよ。」
「そうか。ならば、今度は僕が遊び相手になってやるよ。どこからでもかかってくるがいいさ。」
僕は魔力を解放していく。銀髪が逆立ち瞳が黄金色になった。さらに全身からは光が溢れ出る。
「あなたのそのお姿は人族ではありませんね。ならば、私も本気を出しましょう。と言いたいところですが、時間が来てしまったようです。近いうちにまたお会いすることになりますから。その時は是非、遊んでください。」
四天王のベガはそのまま姿を消した。瞬間移動で立ち去ったようだ。僕は急いでマギーとギンに『ヒール』をかけた。
「ありがとうございます。シン様。」
「ありがとう。シン。やられちゃった!」
2人は少し気落ちしているようだ。ここでメアリーが慰めた。
「2人ともそんなに気落ちしないほうがいいわよ。相手は魔族の四天王だったんだから。」
「いいえ。負けたのは事実です。もっと強くならないとだめですね。」
「私なんか全然相手にならなかったわ。シンと出会って強くなったと思っていたけど、全然よ。」
「2人とも良かったんじゃないかな~。」
3人ともキョトンとしている。
「どうしてですか?シン様。」
「だって、ギンもマギーもまだまだ強くなれるってことじゃないか。自分より強い相手と出会ったなんて幸せなことだと思うよ。」
「そうね。シン君の言う通りね。」
「なら、シン!どこかで修行しようよ。私、今度あいつにあったら絶対に負けたくないんだから。」
3人の目がキラキラと輝いている。ギンもマギーも負けたことがよほど悔しかったのだろう。
「わかったよ。」
「シン様。どこか当てがあるんですか?」
「ちょっとね。」
僕達は魔物の家まで転移した。
「シン!ここで修行するの?」
「違うよ。ちょっと待ってて。」
僕は久しぶりに魔法の本を取り出した。その本の最後の方に重要な魔法が書かれていた。今までは読むことができなかったが、精霊女王様にあってからは何が書いてあるのか理解できるようになっていた。そして、僕はみんなを同じ部屋に集めて魔法を唱えた。すると、目の前の景色が変化していく。転移とは全く違う感覚だ。部屋にいたはずなのに、上空が青空の大平原にいた。そこでは地面が宙に浮いていた。どう見ても地上世界には見えない。
「シン様。お越しになったんですね。」
「うん。この子達の修行をお願いしたいんだけど。」
「わかりました。このフドウにお任せください。マジクも来ておりますので。」
「ありがとう。頼んだよ。僕はドワーフ国に戻るから。」
「畏まりました。修行が下り次第ご連絡します。」
メアリーもマギーも何が何なのか理解できないようだ。
「シン君。この方は誰なんですか?それにマジクとか聞こえたんだけど。」
「気にしなくていいよ。それよりも、しっかり修行して。」
「シンはドワーフ国に行っちゃうの?」
「そうさ。まだやり残したこともあるからね。」
「マギー。私達だけで頑張るわよ!」
「わかったわよ。」
ギンだけはブドウとマジクの正体に気付いているようだ。僕は3人を置いて再びドワーフ国に転移した。




