ギンとマギーの地竜討伐
僕達はエルフ王国を出た後、ドワーフ王国まで向かった。メアリーも自分の正体を知ったことで飛翔できるようになっていた。そこで、途中までは飛翔して行き、途中から歩いて向かっていたのだが、魔物に襲われているゼルグというドワーフを助けた。そして、一緒に王都までやってきた。王都といっても人族の街ほど文明的ではない。いろんな店はあるが、建物自体がすべて石造りなのだ。だが、目の前に見える王城だけはかなり大きい。
「シン殿。ここが宿屋だ。」
「ありがとう。ゼルグさん。」
「いいや。お礼を言うのはこっちの方だ。じゃあな。」
僕達はゼルグさんと別れて宿屋に入った。この大陸では獣人族もドワーフ族も統一の貨幣を使っているようだった。1泊2食付きで大銅貨7枚。やはり人族の国に比べて物価が安い。
コンコン
「どうぞ~!」
「シン様。食事に行きませんか?」
「シン!ご飯食べに行くわよ!」
僕達は1Fの食堂に降りて行った。物凄く酒臭い。すでにドワーフ達が酒を飲んでいる。宿屋が食堂を兼ねているのだ。僕達は、席に座って普通の定食を頼んだ。すると、ドワーフ達の話が聞こえてきた。
「あのよ~!東の鉱山は本当にもう駄目なのか?」
「ああ。あそこには地竜が出るようになったからな。」
「本当か~?おまえ、この前は北の鉱山にコカトリスが出るからダメだって、言ったばっかりじゃねえか!」
「仕方ないだろ!」
「だけどよ~。このままじゃ俺達の仕事が無くなっちまうぜ!国王様は何とかしてくれねぇのか!」
「無理に決まってるだろうが!いくら国王陛下でも、地竜やコカトリスが相手じゃどうにもならねぇさ。」
エルフ王国の女王アイナノアが言っていた通りだ。
「シン君。どうするの?」
「そうだな~。手分けしてもいいんだけど、もし魔族が関係していたらまずいかなって。」
「そうですね。普通の魔族ならいいんですが、四天王や100人隊長となると厄介ですね。」
「大丈夫よ。私がギンと地竜を討伐しに行くから、シンとメアリーがコカトリスを討伐すればいいんじゃない。」
確かにギンとメアリーなら相手が100人隊長でも問題ないだろう。だが、四天王がどれほどの強さなのか分からない。
「ギンは念話が使えるから大丈夫だね!いざという時は連絡をくれるかい?」
「はい。わかりました。」
そして翌朝、僕達は2組に分かれてそれぞれ討伐に向かった。
「メアリー!コカトリスについてどのくらい知ってる?」
「あまりよく知らないわ。」
「なら説明しておくけど、コカトリスは頭が鳥で体がスネイクなんだ。背中に翼があって空も飛ぶよ。」
「そうなの?」
「ああ。問題なのはあいつの目さ。あいつの目は絶対に見ちゃだめだよ!」
「どうして?」
「あいつの目を見ると石にされるからさ。」
「結構危ない魔物なのね。」
「そうさ。地竜もコカトリスもSランクの魔物だからね。」
「大丈夫かな~?私。」
「大丈夫さ。とにかく目を見なければいいんだから。」
「わかったわ。」
その頃、ギンとマギーも地竜退治のため東の森に向かっていた。
「マギー!そろそろよ。魔力感知を使っておきなさい。」
「わかってる。」
2人は森の中に入って行った。森の中は不自然なほど静まり返っていた。森の至る所に穴が開いている。地竜の穴なのか、ドワーフ達が掘った穴なのかはわからない。その穴をたどっていくと岩場に出た。
「マギー!来るわよ!」
ゴゴゴゴー
地面が地響きをあげながら揺れ始める。2人が上空に舞い上がると、不自然に膨らんだ場所が見えた。そこにマギーが魔法を放った。
『シャイニングボンブ』
すると光の球体が不自然な膨らみに落ちて行く。
バッバッバーン
いきなり地面から先が鋭気尖った岩が飛んできた。思わず2人はそれを避けたが、バランスを崩しかけたところに今度は土砂のブレスが放たれた。ギンは結界を張ってマギーの前に出た。
「ありがとう。ギン。」
「私も油断したわ。」
地面の中から巨大なトカゲのような魔物が現れた。地竜だ。地竜は竜といっても翼を持たない。つまり正式にはドラゴン族ではないのだ。
「マギー!私が魔法を放つわ。その隙に地竜に攻撃を仕掛けて。」
「わかった。」
『アイスグランド』
バリバリバリ
地面がどんどん凍り始める。そして、地竜は地中に逃げようとするが地中すら凍り付いて逃げられない。
「今よ。」
『シャイニングカッター』
マギーが地竜に向けて光の刃を放った。鋭い光の刃が地竜に襲い掛かる。
グサッ グサッ
ギャー ギャー
地竜の皮膚が所々破れて血が流れている。そこにギンが剣を持って斬り込んだ。
『氷結斬』
すると、地竜の身体は2つに分かれた。
ドサッドサッ
パチパチパチ・・・・・・
「お見事です。フェンリルのギンさん。それに裏切者のマギーさん。」
2人の後ろから拍手をしながら一人の魔族が現れた。かなりの魔力量だ。100人隊長のレベルではない。
「あなたは何者?」
「これは失礼しました。私は魔族四天王の一人ベガと申します。私のところのラガンがご迷惑をおかけしたようで、今日はそのお詫びに参りました。どうか、私のお相手をしていただけませんか。」
ギンはシンに念話を送った。
“シン様。魔族四天王が現れました。”
「ギンさん。念話ですね。無駄ですよ。私の結界がありますから、シンさんにあなたの念話が届くことはありませんよ。」