世界樹の復活
エルフ王国に着いた僕達は、歓迎会を開いてもらった。そこで女王アイナノアといろんな話をした。部屋に戻った僕達はぐっすりと寝たのだが。メアリーだけは光り輝く存在に導かれ天界に行った。そこには亡くなった母親と管理神ディーテがいた。自分が元々天使であり、この世界の聖女であると聞かされて、メアリーは世界を平和にしようとあらためて決意した。そして、今日は世界樹に行く日だ。夢のことを皆に話そうかどうか悩んだが、話せないまま時間が過ぎて行った。
「そろそろ世界樹ですよ。シン殿。」
目の前には巨大な木があった。だが、元気がない。葉もしな垂れていた。女王陛下を始め、エルフのみんなが世界樹に向かって片膝をついている。僕達も真似をした。すると、世界樹から眩しく光る球が7つ飛び出した。その光球がどんどん人型になっていく。
「シン殿。久しぶりだな。」
そこに現れたのは7大精霊達だ。
「サラマンダー様じゃないですか?それに皆さんも。先だってはありがとうございました。アラス王国の魔素も減って物凄く助かりました。」
すると闇の大精霊シャウプが反応した。見た目は子どもだ。
「いいのよ。シンちゃん。」
初めて見るメアリーはキョトンとしている。当たり前だ。伝説の存在である大精霊が現実に目の前にいるのだから。すると、一際大きな光球が世界樹の中から出てきた。人型に変化していく。
「よく来てくれました。シン様。私は精霊女王のソフィアです。皆さん立ってください。」
言われた通り僕達は立った。すると、ソフィアが僕に言ってきた。
「シン様が来るのを長いこと待っていたんですよ。」
「どういう意味ですか?」
「私はこの世界の管理神様ディーテ様から世界樹を守るように命じられているのです。そしてもう一つ命じられていることがあります。」
僕はソフィアが何を言おうとしているのか、少しだけ想像できた。恐らく、僕は神の使徒か何かとしてこの世界を平和にする役目が与えられているのだろう。
「神獣であるフェンリルのギンを従え、天使族の少女マギーを従え、さらに聖女メアリーを従えているんですよ。シン様は自分が普通の人族ではないことは気付いていますよね?」
「はい。もしかしたら、僕は神の使徒か何かかもしれないとは思っていました。」
「そうですか。なら、もう一つの役目をここで果たしましょう。」
精霊女王ソフィアは両手を広げて何やらぶつぶつ言っている。すると、僕は目の前の景色が変化した。あの不思議な夢で見た世界だ。
「ここは?」
目の前に一人の少年が現れた。どうやら家族と思われる人達と一緒に自動で動く金属の馬車に乗った。そして、以前見たレストランに入って談笑しながら食事をしている。その帰り道、金属の馬車が他の馬車と衝突した。
「痛い!」
僕は胸に激しい痛みを覚えた。景色が変化する。どうやらここは病院のようだ。少年はベッドに寝かされている。そして、再び景色が変わった。黒い服を着た人々が長い列を作って並んでいる。あの少年の家族の絵が飾られている。もしかしたら亡くなったのかもしれない。
「痛い!」
再び僕の胸が痛んだ。そして、再び景色が変化した。白い服を着ている男性がいる。どうやらここは病院だ。多分、あの白い服の男性は医者なのだろう。再び景色が変化した。上空を金属の鳥がたくさん飛んでいる。そして、金属の鳥は黒い塊を地面に落としている。それが爆発して、家が燃える。先ほどとは違って地獄のような景色だ。
「痛い!」
白い服を着た男性が病院で怪我人を治療している。だが、その建物に金属の鳥が黒い塊を落とした。病院はゴウゴウと音を立てて激しく燃えている。白い服を着た男性が怪我人を外に運び出している。
「危ない!」
再び景色が変化した。そこは真っ白な神殿のような場所だ。そこに7人の男女がいた。そして、あの少年が自分だと分かった。あの白い服を着た男性が自分だと分かった。7人の男女が僕に話しかけてきた。
「あなた様の修行は終わりました。これから、別の世界で修行していただきます。よろしいですね。」
そして、僕はあの魔物の森に倒れていた。そこで、僕は我に帰った。
「どうですか?シン様が疑問に思っていたことが、これでお判りいただけましたか?」
「はい。僕がなぜこの世界にいるのか、自分が何者なのか、すべて思い出しました。」
「そうですか。」
精霊女王ソフィアを始め大精霊達が僕に片膝をついた。周りの人々は驚いて見ている。ギンだけはうすうすわかっていたようだ。ソフィアが代表して言ってきた。
「これより先、我らはあなた様の指示に従います。」
「ありがとうございます。でも、僕のことは今まで通り人族扱いで頼みます。目立ってしまうと何かとやりづらいので。」
「畏まりました。」
「世界樹に元気がありませんね。僕が何とかしてみましょう。」
ソフィア達が立ちあがった。僕は全身の魔力を解放する。銀髪が逆立ち瞳は黄金色に変化する。そして、少年から青年の姿に変化し、今までよりもはるかに眩しい光が放たれた。誰もが目を開けていられない。世界樹のところまで行き、僕が世界樹に手を触れると、枯れかかっていた世界樹が見る見るうちに元気になっていく。葉は青々と茂り、辺り一帯に清々しい空気が流れる。そしてどこからともなく甘美な匂いが漂い始めた。
ソフィアが声をかけてきた。
「さすがです。シン様。」
「世界樹のことは頼みますよ。ソフィアさん。」
「はい。」
僕の周りには小さな精霊達が集まってくる。僕は魔力を戻した。
「ギン。マギー。メアリー。この国での役目は終わったよ。ドワーフの国に行こうか。」
すると、マギーが声をかけてきた。
「どうしたの?シン!何か雰囲気が違うわよ!成長したみたいなんだけど。」
「へんかい?マギー!」
「別に変じゃないわよ。なんか急に男らしくなったって言うか、そんな感じよ。ねっ!ギン!」
「はい。でも、私はどんなシン様も好きですから。」
僕達は一旦王宮に戻ってからドワーフ国に向かうことになった。その途中でマギーが聞いた。
「ところで、メアリー。精霊女王様があなたのことを聖女って言っていたけど。どういうことなの?」
メアリーは言おうかどうしようかと悩んでいたが、思い切って昨夜あったことを話すことにした。
「実は、昨日の夜、変な夢を見たんです。夢にお母様が出てきて、管理神のディーテ様までいらっしゃったんです。」
マギーはかなり気になるようだ。
「それで、何か言われたの?」
「ええ。なんか私は元々天使族だって。この世界を平和にするためにお母様とお父様の娘として転生したとか言われたの。自分には全く覚えがないんだけどね。」
「へ~。メアリーも天使だったんだ~。」
「そうみたい。私は聖女になるためにシン君達と出会う運命だったんだって。」
ここでギンが言った。
「私はメアリーさんからどことなく神聖なものを感じていましたから、もしかしたらとは思っていましたよ。」
「そうなの?」
「ええ。メアリーさんは人族にしてはあまりにもうぶですから。シン様の手を握る時も物凄くドキドキしている様子でしたからね。」
「何よ!ギン!なら、私は天使には見えないってこと?」
「違うわ。マギー!あなたからも神聖なものを感じるわ。無理してるみたいだけど、あなただってかなりうぶよね。」
「ふん!べ、別に私は無理なんかしてないわよ!」




