アニム王国の武術大会始まる!
僕達はアニム王国に王都ライオネルに到着した。いきなり牛耳族の男に絡まれたが、僕は軽くあしらった。すると、虎耳族の男ベンガルに声をかけられた。どうやら、ベンガルは東大陸のタカモリと一緒に修行に励んだようだ。この国で行われる武術大会に参加するようだ。ベンガルと話し終わった僕達は、再び街を散策し始めた。
「シン!あそこの屋台で肉串を買うわよ!」
「わかったよ。」
僕は肉串を5本買った。僕とギンとメアリーが各1本。マギーだけは2本だ。
「シン君。これって何の肉かしら。少し臭みがあるんだけど。」
「これをかけて食べるといいよ。」
僕は空間収納からペップを取り出した。メアリーもギンもマギーもペップをかけて食べている。それを他の人達が不思議そうに見ていた。すると、屋台の店主が聞いてきた。
「なあ、その粉をかけると美味しいのか?」
マギーがいつものようにふんぞり返って説明を始めた。
「この粉はね!魔法の粉なのよ!この肉串にかけて食べると100倍美味しくなるんだから。」
「俺にもちょっと貸してくれないか?」
僕がペップを貸してあげると、店主は焼いている肉串に振りかけて食べた。
「うめー!これ、最高じゃないか!おい!この魔法の粉はどこで売ってるんだ?」
「中央大陸にも東大陸にもあるわよ!」
「まじか~!なら、この国では買えないのか~。」
僕はここに来るまでに野生のペップがあることは知っていた。そこで、僕は店主に教えてあげることにした。
「この国でも作れますよ。ここに来る途中の森で自生していましたから。」
「それは本当か?」
「ええ、本当ですよ。」
「どんな植物なんだ?」
僕は絵で描いて渡した。
「ありがとうな。感謝するぜ!」
店主は店をそのままにして、慌ててその場から立ち去った。もしかしたら、森まで探しに行ったのだろう。
「シン様!」
「ああ。気付いたよ。」
するとメアリーが聞いてきた。
「どうしたの?2人とも。」
するとマギーが真顔で言った。
「魔族がいるのよ。それもかなり魔力が強いようだから、100人隊長レベルのね。」
「大変じゃないですか!みんなに教えないと!」
「ダメだよ。メアリー。パニックが起こるからね。それに、どこにいるのかも分からないし。」
「だって魔力をたどればわかるんでしょ?」
「魔力を感じたのは一瞬だったからね。100人隊長のレベルになると魔力を隠ぺいできるんだよ。」
「シン様。どうしますか?探し出しますか?」
「多分、武術大会が関係してるんじゃないかな~。もしかしたら、武術大会に参加する獣人族を皆殺しにするつもりかもしれないよ。」
「シン。私が武術大会に参加しようか?」
「ダメだよ。そんなことしたら、いざっていう時にすぐに対処できないだろ!僕達は観客席で待機しようか。」
「はい。」
それから数日が過ぎて、いよいよ武術大会の日が来た。どうやら優勝候補は先日会った虎耳族のベンガルのようだ。ベンガルはここ2年優勝しているようだった。僕達が闘技場に向かうとそこにはベンガルがいた。
「シンではないか。やはりお主は出場しないんだな。」
「ええ。観客席で応援させていただきますよ。」
「そうか~。残念だ。できればお主と一度手合わせをしてみたかったのだがな。」
ベンガルは試合会場に向かった。僕達は観客席に行った。すると、観客席ではお酒と一緒に肉串が売られていた。
「シン君。あの人って。」
「私も覚えてる!確かペップのことを聞いてきた狼耳族の店主だわ。」
「どうやら自生しているペップを見つけたようね。良かったですね。シン様。」
「この国にペップが伝われば食の革命が起きるかもね。」
僕達が肉串を買いに行くと狼耳族の店主が言ってきた。
「ああ、この前はありがとうな。お陰で肉串が飛ぶように売れてるよ。これはお礼だ、受け取ってくれ。」
店主は肉串を4本手渡してきた。それを見てマギーが僕を見ている。僕は追加で1本だけ買った。マギーは両手に肉串を持って喜んでいた。
「わかってるじゃない。さすがシンね。」
「シン君。選手が入場してきますよ。」
試合会場に選手が入場してきた。獅子耳族、虎耳族、牛耳族、馬耳族、狼耳族、猫耳族、犬耳族、猿耳族とこの国の戦闘種族がほとんど参加している。
「シン様。魔族の魔力が感じられないんですが。」
「多分、観客の中に紛れ込んでると思うんだけどな~。」
「シン!もしかしたら選手の誰かがそうなんじゃない?」
「可能性があるわね。シン君。」
「そうだね。みんな、いざという時に飛び出す準備をしといてね。」
「はい。」
そしていよいよ試合が始まる。その前に、この国の王族が紹介された。王族達は一番上の貴賓席に座っている。貴賓席だけは結界が施されているようだ。
「最初は犬耳族と猫耳族ね。ミーアじゃないんだ~。」
「当たり前だよ。彼女は今両親と一緒に居るんだから。」
試合はどちらもスピード勝負のようだ。明らかに犬耳族の勝ちのようだが試合はまだ続いている。
「シン様。やはり先日のあのベンガルとかいう男が言った通り降参はしないんでしょうか?」
「シン。このままだと大怪我するわよ。」
犬耳族の剣が猫耳族の背中を斬りつけた。猫耳族は倒れたまま動かない。どうやら決着がついたようだが、猫耳族が心配だ。猫耳族の男は担架で運ばれていった。そして、次の試合は狼身族と猿耳族だ。狼耳族が勝つと思っていたが、意外にも猿耳族が勝った。そして、牛耳族と馬耳族の試合は馬耳族が勝った。
「いよいよベンガルさんですね。相手は獅子耳族の戦士ですね。」
「ベンガルさん大丈夫でしょうか?あの獅子耳族の男、相当の手練れですよ。」
「大丈夫さ。ベンガルさんはタカモリさんの兄弟弟子なんだから。」
「そうですね。」
ベンガルさんと獅子耳族の男が武器を抜いた。いよいよ試合開始のようだ。
「始め!」




