ミーアとの別れ
僕達は魔族とワイバーンを討伐してミーアの生まれた街に行った。そこにはミーアのことを長年心配していた父親と母親がいた。感動の再会を終えた後、街の人々達と一緒に大宴会を開いた。そして、ミーアを置いて魔物の森の家で寝てきた僕達は、翌朝ミーアを迎えに行ったのだが、そこには寂しそうな顔をしたミーアがいた。
「おはよう。ミーア。」
「おはようにゃ。」
しばらく無言状態が続いて、ソマリがミーアの背中を抱きしめながら言ってきた。
「皆さんに話があるんです。ミーアは皆さんとは・・・・」
ミーアがソマリさんの話を止めた。そして、目に涙を浮かべながら言ってきた。
「ご、ごめんにゃ。みんな。私、みんなと行けないにゃ!もう、旅に出れないにゃ!」
予想していた通りの展開だ。全員がミーアのもとまで行った。恐らくこの中で一番辛いのはミーアだろう。そのことをみんなはわかっているのだ。
「わかったよ。ミーア。お父さんとお母さんを大事にするんだよ。」
「シ———ン!!!ワ———ン・・・・・・」
しばらくしてミーアがやっと落ち着いたようだ。
「ギン、メアリー、マギーにゃん。シンのことを頼んだにゃ!」
一番付き合いの長いメアリーが涙を流しながら言った。
「大丈夫よ。ミーアも幸せになってね。両親を大切にね。」
「うん。」
今度はマギーが泣きながらおどけて言った。
「ミーア!次に会う時にはちゃんと成長してミーアより大きくなってるんだから。」
「マギーにゃん。ありがとうにゃ!」
最後にギンが声をかけた。
「ミーア。これを渡しておくわね。」
「これは何にゃ?」
「困ったことがあったらこれに魔力を込めて念じるの。そしたらシン様に伝わるから。」
「ギン!ありがとうにゃ!」
僕達はミーアと別れてアニム王国の王都ライオネルに向かうことにした。
「シン君。なんか寂しいわね。」
「仕方ないよ。それより、この先に森があるから、そこで魔物を討伐しながら行こうか。」
「シン様は優しいんですね。」
「どうしてよ?ギン!」
「ミーアのいる村に魔物の被害が出ないように考えているのよ。」
「なるほどね~。」
「それより、マギーちゃんが大食いだったのには理由があったのね。」
「別に理由なんかないわよ。食べたいから食べるだけだし。」
マギーは胸がみんなよりも小さいことをよほど気にしているのだろう。沢山食べて早く成長したいと思っているのかもしれない。なんか妹のようなマギーがすごく可愛く感じた。
「シン様。オークの集落があるようです。」
「結構大きいね。どうしようか?」
「全部討伐するに決まってるでしょ!」
マギーが上空に舞い上がった。どうやら上から魔法で攻撃するつもりのようだ。今までならマギーのオーラは黒色をしているのだが、今は無色に光っているだけだ。しかも、光が今までで一番眩しい。
『シャドウアロー』
マギーが魔法を放つが魔法が発動しない。
「あれ?」
今度は違う魔法を唱えた。
『シャドウバンブ』
やはり何も発動しない。マギーが慌てて僕のところに舞い降りてきた。
「どうしよう?シン!私、魔法が使えなくなっちゃったよ!」
もしかしたら、マギーに闇魔法の適性が無くなったのかもしれない。
「マギー!今まで闇魔法を使ってきたけど、これから光魔法を使ってみたら?」
「光魔法なんて使ったことないわよ!」
「同じさ。ただ、闇の攻撃のイメージを光の攻撃のイメージに変えるだけだよ。」
「だって、魔法の名前なんて分からないわ!」
「自分で名前を付ければいいよ。」
「それでいいの?闇魔法はお父さんやお母さんから名前を教わったんだよ。」
「本来魔法に名前なんてないんだよ。勝手に人が名前を付けてるだけだから。大丈夫。僕を信じてやってごらん。」
「わかったわ。」
再びマギーが上空に舞い上がった。そして、魔法を唱えた。
『シャイニングアロー』
すると、上空に光り輝く矢が無数に現れた。それが地上にいるオーク達に放たれた。
ブギャー
ブヒブヒ
ブギョー
地上のオーク達は次々と地面に倒れていく。そして、異変に気付いたのか、森の中から身体の大きなオーク達がやってきた。ジェネラルとキングだ。
「ギン!メアリー!行くよ!」
「はい。」
3人は刀と剣を抜いてジェネラルとキングに向かって行った。ほんの数分の出来事だ。ジェネラルもキングももはや僕達の敵ではない。あっという間に討伐が終わった。僕はオーク達の亡骸を魔法袋にしまった。
「シン。ありがとう。」
「何が?」
「魔法を教えてくれたでしょ。」
「マギーならできると思ってたからね。」
「ところでどうして魔法袋に入れてるの?」
「マギー!シン様はこのオークの亡骸をミーアに届けるつもりなのよ。」
「さっすがー!シンだね。」
「シン君。優しいです。」
僕達はミーアの家の前にオークの入った魔法袋を置いてきた。当然、手紙も一緒だ。魔法袋に何が入っているか分からないと困るだろうからだ。
「さあ、今度こそ王都に行くよ。」
「うん。」
僕達は王都に向かった。




