アニム王国のワイバーン討伐
僕達は港町ジャカルのギルドで依頼されたワイバーンの討伐に向かった。途中で兎耳族の街に立ち寄ったところ、そこに1匹のワイバーンが現れた。みんなで討伐した後、宿屋に行くと、そこで出された料理が野菜だけの料理だった。物足りない僕達は魔物の森の家で食事をした後、全員が風呂に入った。そして、再び宿屋に転移した。翌日サラダのような朝食を食べて、再び僕達はワイバーンの山に向けて出発した。
「シン君。この樹海の先にワイバーンがいるんだよね?」
「そうだよ。どうして?」
「これだけ広い樹海があったら魔物もいるはずなのに、どうしてワイバーンが街まで来たのかなって不思議に思ったの。」
確かにメアリーの言うとおりだ。本来、ワイバーンは魔物や野生動物を餌にしている。人里まで来ることはない。ここで、マギーが説明を始めた。
「もしかしたら魔族がいるかもしれないわね!魔族には魔物を操ることができる者もいるからね。」
「マギーにゃん。何のためにそんなことするにゃ?」
「ワイバーンを増やしてこのアニム王国を蹂躙しようとしてるとか。」
「シン様。マギーの言う通りかもしれません。本来、ワイバーンは集団でコロニーを作ることはないですから。」
「だとしたら見過ごせないね。急ごうか。みんな。」
「はい。」
僕達は森の中に入って行った。意外と魔物は少ない。やはりワイバーンが狩っているのかもしれない。かなり登ってきたところでやっと頂上が見えてきた。ワイバーン達の巣も見える。
「結構いるね。」
「はい。20体はいると思います。」
すると、思った通り魔族の姿があった。しかも3人いる。まだ、こちらには気づいていないようだ。
「どうしますか?シン様。」
「シン君。私、魔族と戦ってみたいわ。」
「私もにゃ。」
「どうしますか?」
マギーはともかくメアリーとミーアが心配だ。
「わかったよ。ワイバーンは僕一人で何とかするから、魔族の3人をメアリーとミーアとマギーで何とかしてくれるかい?ギンは3人の援護を頼むよ。」
「承知しました。」
僕達が森から飛び出すとワイバーンが一斉に舞い上がった。そして、魔族達が慌てて戦闘態勢に入る。
「誰かいるのか?!何者だ!姿を見せろ!」
「行くわよ。メアリー。ミーア。私が真ん中、メアリーは右、ミーアは左ね。」
「了解にゃ。」
「わかったわ。」
3人が魔族に攻撃を仕掛ける。魔族も本気モードになったようだ。身体から漆黒のオーラが溢れ出ている。ワイバーン達は魔族から逃げるように離れて行く。僕も魔力を開放した。銀髪が逆立ち瞳が黄金色に変化し、全身からは眩しい光が放たれた。そして、ワイバーンに向かって魔法を放った。
『シャイニングアロー』
上空に数えきれない程の光の矢が現れる。そして、それが一斉にワイバーンに向かって落下した。ワイバーンは逃げ惑うが逃げられない。次々と光の矢に射抜かれていく。その中で1体のワイバーンが僕に向かって突っ込んできた。僕は背中のマサムネを抜いて身構えた。すると、それを見てワイバーンが炎のブレスを吐いてきた。僕がマサムネを上下に振ると、炎のブレスが2つに分かれてワイバーンは左右2つに切断された。
「終わった~。みんなはどうかな?」
僕がみんなの様子を見るとまだ戦っていた。
「人族なのにやるではないか。このエメル様とここまで戦えるとはな。」
「絶対に負けないんだから!」
エメルがメアリーに向かって魔法を放った。近接戦では決着がつかないと思ったのだろう。メアリーの周りに黒い霧が現れる。その霧がメアリーの体に触れると爆発した。
バッーン バッバッ———ン
メアリーの服がところどころ破れているが、怪我はしていないようだ。恐らく光の結界を張って直撃するのを防いだのだろう。メアリーは剣に魔法を付与した。すると、剣から光が放たれた。
『光線斬』
光の刃が魔族に襲い掛かる。魔族は避けようとしたが避けきれない。
「お、お、おのれ~!」
魔族は体が2つに分かれて絶命した。
一方、ミーアの方を見るとすでにミーアは剣に魔法を付与していた。剣の周りの空気が乱れているのが分かった。恐らく風魔法を付与しているのだろう。魔族は翼のところどころが破れて息が上がっている。
「ハーハー ゼーゼー やるではないか。お前は本当に獣人族なのか?」
「そうにゃ!もう、終わりにするにゃ!」
『ストーントルネード』
目の前に竜巻が起こり、周りの石を飲み込んでいく。竜巻の中ではバチバチと火花が飛んでいた。その竜巻に魔族が飲み込まれた。
ギャー
竜巻が治まるとボロボロになって息絶えた魔族の死体があった。
「フー 何とか勝てたにゃ!」
マギーを見ると、とっくに魔族を討伐してギンの隣にいた。
「完了ですね。」
「それにしても、メアリーもミーアも大分強くなったね。」
「シン達のお陰にゃ!」
僕はメアリーの光魔法に何か神聖なものを感じた。
「シン様。メアリーさんのあの魔法って?」
「やっぱりギンも感じたみたいだね。」
「はい。マギーに似ていると感じました。」
「そうだね。マギーも天使化してるみたいだし、何なんだろうね。」
すると、マギーが声をかけてきた。
「シン!このワイバーンは持ち帰るのよね?」
「ああ、持ってくよ。素材を売りたいからね。」
「違うでしょ!食べるんでしょ!」
「マギーちゃんは本当に食いしん坊なのね。」
「メアリーにまで言われた!シン!私は食いしん坊じゃないからね!」
「ああ、わかってるよ。」
ワイバーンを空間収納に仕舞い、魔族の亡骸を炎で処分してから僕達は山の反対側へと下りた。来る時は広大な樹海が広がっていて大変だったが、目の前の樹海はだいぶ小さかった。樹海から出ると川が流れていたので、その日は河原で野宿することにした。
「ギン!ちょっと付き合って!」
メアリーがギンを誘ってどこかに行った。いつものことだ。僕は男だから勝手に見えないところに行って用を足すが、女性はそういうわけにはいかないのだろう。大体2人一組で行くようにしているようだ。
「シン!今日はワイバーンの料理でしょ?私手伝おうか?」
「えっ?!マギーが手伝うの?」
「そうよ。どうしてよ!」
「だって、マギーと会ってから料理を手伝ったことなんかないだろ?」
「私だって料理ぐらいできるわよ!女なんだから!」
「わかったよ。なら、そっちのワイバーンの肉に塩とペップをかけて焼いてくれるかい?」
「わかったわ。」
珍しくマギーが料理を手伝ってくれた。すると、ギンが僕の耳元で教えてくれた。
「マギーは寂しいんですよ。以前と違ってシン様に甘えられなくなりましたから。」
「なるほどね。やっぱり、マギーは子どもだな。」
「マギー。」
「何よ?」
「今日はよく頑張ったね。僕の隣で寝るかい?」
マギーは頬を赤く染めた。
「なによ!シン!寂しいの?仕方ないから私が隣で寝てあげるわよ!いつまでも子どもなんだから!」
その日は食事をした後、マギーは僕の隣で寝た。よほど寂しかったのか、手をつないできた。僕はそのままマギーと手をつないだまま寝た。翌朝起きてみると、僕の周りにはマギーだけでなく、ギンとメアリー、それにミーアもいた。
「シン。私の街はこの先にゃ。」




