兎耳族の街で野菜料理
僕達は人攫い達を殲滅した後、アニム王国の港町ジャカルの冒険者ギルドに行った。そこで、アニム王国のお金に換金した後、子ども達をギルドに預けてワイバーンのいる山に向かった。近くに見える山も歩いていくと意外と遠い。
「シン!まだなの?もう結構歩いたわよ!」
「マギー!あなただけよ。文句言ってるのは!」
「別に文句なんか言ってないもん。ただ、まだかなって思っただけなんだから。」
「マギーちゃん。あそこ見て!なんか街があるわよ!」
メアリーが指さす方向を見ると何やら塔のようなものが見える。僕達は草原地帯を急いで歩いた。すると、目の前にかなり広い畑が広がっていた。その近くを小川が流れている。
「ここは兎耳族の街にゃ!畑にキャロットがたくさん育てられてるにゃ!」
僕達が街に入ると兎耳族の人達が多い。やはりミーアが言った通りだ。すると、兎耳族の女性が声をかけてきた。
「珍しいわね~。人族ね。この街に何しに来たの?」
「僕達、旅の途中なんですよ。」
「そうなのね。なら、うちの宿に泊まっていきなよ。安くしておくからさ。」
すると、遠くの方から悲鳴が聞こえた。
「キャー」
「ワイバーンだ!おい!隠れろー!」
上空にはワイバーンが1匹飛んでいた。どうやらこの街まで餌を求めてやってきたようだ。
「どうしますか?シン様。」
「犠牲者が出る前に討伐しよう。」
「なら、私が魔法で撃ち落とすわ!」
マギーが魔法を放とうとしている。僕はそれを止めた。
「待って!マギー!ここで撃ち落としたら街に被害が出ちゃうよ。」
「なら、どうするのよ!」
何かギンに考えがあるようだ。
「シン様。ワイバーンは寒さを極度に嫌います。私が魔法でワイバーンを追い立てますので、街の外に出たところで討伐しましょう。」
「わかったよ。みんな、ギンの指示に従って!」
「了解にゃ!」
ギンがワイバーンに向かって冷気を放った。その影響であたり一帯が急激に気温が下がっていく。ワイバーンはたまらず来た方向に引き返そうとしていた。
「マギー!頼んだよ!」
「OK!任されたわ!」
マギーがワイバーンに魔法を放った。
『シャドウスピア』
マギーの放った黒い槍がワイバーンの翼を貫いた。体勢を崩したワイバーンは地面に落下した。
「今よ!メアリー!ミーア!」
「うん!」
メアリーとミーアは剣に魔法を付与してワイバーンに斬りかかる。ワイバーンも口からファイアブレスを吐き出した。2人はそれを避けながらワイバーンに剣を突き刺した。
グギャー グギャグギャ
ワイバーンはその場で絶命した。
「みんな。お疲れ様。」
「良かったです。街の人達に被害が出なくて。」
「そうだね。」
僕達はワイバーンを空間収納に仕舞って街に戻った。すると、街の人達から拍手で迎えられた。
「助かったよ!君達!」
「すごく強いのね!」
「この街の救世主だ!」
すると先ほどの兎耳族の女性が駆け寄ってきた。
「皆さん。凄く強いんですね。お礼にタダで泊まっていってください。」
「いいえ。タダっていうわけにはいきませんよ。お金はしっかり払いますから。」
「そうですか~。なら、料理をサービスしますね。」
「ありがとうございます。」
「私はラピンよ。よろしくね。」
「僕はシン。こっちはギン、マギー、メアリー、ミーアです。」
マギーの目がギラギラと輝いている。僕達はラピンに連れられてラピンの宿屋までやってきた。思っていた以上に大きな建物だ。
「ここです。どうぞ入ってください。」
僕達はお金を払ってそれぞれの部屋に行った。今回は全員が個室だ。しばらく部屋で休んだ後、夕食を食べに食堂に集まった。
「どんな料理かな~!楽しみ!楽しみ!」
マギーがウキウキしている。そこに料理が運ばれてきた。どうやら料理は野菜が中心のようだ。街に屋台が出ていなかったことや、周りの畑の多さから想像はしていたが肉料理はない。前の席に座っているマギーを見ると悲しそうにしていた。
「シ~ン。後で魔物の森の家に行こうよ~。」
「どうしたの?マギー。」
「ギンだってお肉食べたいでしょ?」
「私は別に・・・」
「いいよ。わかったよ。後でみんなで行こうか。」
「やったー!」
僕達は目の前の料理を急いで食べた。そして、部屋に戻ると女子全員が僕の部屋にやってきた。理由は簡単だ。食べたばかりなのにお腹がすいているのだ。
「野菜だけだと食べた気がしないにゃ!」
「ミーアの言う通りよ!早く行くわよ!シン!」
結局、魔物の森の家に戻って僕は料理を作る羽目になってしまった。みんなが仕留めたワイバーンの肉は物凄く美味しかった。オークキングの肉も美味しかったが、どちらかというと噛み応えがある美味しさだ。
「このままここで寝ていきたいな~。」
「ダメだよ。マギー。せっかく宿屋をとったんだから、お風呂に入ったら戻るからね。」
「わかったわよ!」




