港町ヤオズの悪党退治
僕達は港町ヤオズに到着したが、いきなりミーアが人攫いの連中を発見した。だが、そこでは様子を見るだけにして、冒険者ギルドで話を聞いた。やはり、この港町ヤオズには
人攫いの連中がいるようだが、なかなか尻尾をつかませないようだ。僕達は街の食堂でご飯を食べて店を出ると、人攫いの仲間達が向こうからやってきた。
「みんな!殺しちゃだめだよ。聞きたいことがあるんだから!」
「わかりました。シン様。」
「我慢するにゃ!」
すると、僕に剣を向けてきた男は慌てて逃げ出そうとした。僕は瞬間移動で男の前に行った。
「な、何~?!」
いきなり僕が目の前に現れたので驚いたようだ。
「お、お前は何者だ?」
「別に何者でもないよ。それより、聞きたいことがあるんだよね。」
「誰が言うもんか!」
「なら、痛い思いをしてもらうよ。」
僕がマサムネに火魔法を付与して一振りすると、男の右手が地面に落ちた。火で焼ききっているので血は出ない。だが、痛みは別だ。
「ギャー!う、う、腕が———!」
男は地面を転げまわっている。僕は男のところまで行き、髪を掴んで再度言った。
「聞きたいことがあるんだよね。いいかな~?」
男は股間を濡らしながら泣きそうな声で答えた。
「しゃ、しゃ、しゃべるから!何でもしゃべるから!許してくれ!」
マギー達に取り押さえられた男達も、僕と男のやり取りを見て顔面蒼白状態だ。するとギンが言った。
「シン様。これだけ人攫いの仲間がいるんです。嘘を言った者は首をはねましょう。」
「頼むよ。ミーア!」
「了解にゃ!」
ミーアは剣を抜いていつでも首を斬り落とせるように構えた。男達はぶるぶる震えている。
「さて、じゃあ、聞くよ。お前達のアジトはどこにあるんだ?」
「こ、ここと北大陸の間の小島です。」
ギンが他のメンバーに確認していく。嘘を言った時点で男の命はない。
「メンバーは全部で何人いるんだ?」
「俺達を含めて50人です。」
「幹部はどんな人物だ?」
「首領はイアール様です。それ以外に幹部が4人います。フェブル様、マーチ様、ジュリ様、セプト様です。」
「攫った子ども達はどこにいるんだ?」
「島にいます。買い手が見つかった時にこの港街に連れて来るんです。」
「今、そこに子ども達は何人いるんだ?種族も答えろ!」
「4人です。全員獣人族です。」
「わかった。もう、聞くことはないな。」
「じゃあ、許してくれるんですか?」
「そんなわけないでしょ。」
「全部答えたじゃないえすか!」
「お前達が攫った子ども達がどうなったか知っているのか?中にはおもちゃにされて殺されたものもいるだろう。お前達にはきっちり償ってもらうさ。」
僕は男達の武器をすべて取り上げ、全員をロープで縛りあげた。
「どうするの?シン。」
「ミーアはどうしたい?」
「奴隷にするにゃ!こいつらも国の奴隷にするにゃ!」
「わかったよ。なら、王都のナダル伯爵のところに連れていこうか。」
男達は僕が王都に連れて行くといったものだからキョトンとしている。ここから王都までは大分距離があるのだ。
「メアリーもミーアもそいつらを連れて来てくれるかい。」
「うん。」
全員を僕の周りに集めた。そして、僕は全員を連れてナダル伯爵の屋敷まで転移した。突然景色が変わったせいか、男達は目を白黒させている。
「こ、これは一体、どうしたんだ?」
「転移しただけさ。」
「て、転移?!そんなことができるはずが・・・」
「も、もしやあなた方は神の使いなのか?」
「違うさ。ただ、神に代わってあなた達には罰を与えるけどね。メアリー!ナダル伯爵を呼んできてくれるかい?」
「うん。」
しばらくしてナダル伯爵が騎士達と一緒にやってきた。
「どうしたのかね?シン殿。」
「ナダル伯爵。こいつら全員人攫いなんです。港町ヤオズで捕まえたんですよ。国の奴隷として罪の償いをさせてください。」
「わかったよ。シン殿。」
もしかしたら、この人攫いの中には逃げ出そうとする者がいるかもしれない。そこで、魔法をかけることにした。
「彼らに魔法をかけておきますね。」
僕は両手を広げて魔法を発動した。
『ギルティーリング』
すると男達の首に黒い首輪が現れた。男達は慌てて首輪を外そうとするが外れない。
「無駄だよ。その首輪はあなた方の罪が償われたときに外れるようになっているからね。一つ言っておくけど、逃げようとしたり、さらに罪を重ねたりするとその首輪が閉まって最後は首が斬れるから、注意したほうがいいよ。」
「男達は全員がうながれてしまった。」
するとマギーがまじまじと言ってきた。
「シン!あなた、魔族より怖いわよ!」
「そんなことないさ。善良な人には優しく、悪人には厳しいだけだよ。」
そして、僕達は再び港町まで戻った。その日はヤオズで宿をとって、翌日アジトの小島に行くことにした。宿では僕が一人部屋、メアリーとミーアで1部屋、ギンとマギーで1部屋と部屋割りを決めた。
翌朝、食堂に降りていくとすでにみんながいた。
「シン!あなた、寂しかったんじゃないの?」
「どうして?」
「だって、この前まで私とギンとに挟まれて寝てたじゃない。」
「別に寂しくないさ。お腹に足を乗せられることもないしね。ゆっくり寝られるよ。」
「あっ、そう!可愛くないわね~!素直に寂しいって言えばまた一緒に寝てあげたのに!」
するとミーアが提案してきた。
「いい考えがあるにゃ!交代でシンと寝る日を決めるにゃ!最初はメアリーと私にゃ!その次はギンとマギーにゃん!」
「それいい!ミーア!あなた賢いわね~!」
メアリーは顔を赤くしてもじもじしている。
「わ、わ、私は・・・」
「メアリーはシンと一緒に寝ないにゃ?なら私だけにゃ!」
「いいえ!私も一緒に寝るから!いいよね?シン君。」
なんか僕の意見を聞かずに女性陣が勝手に決めている。まあ、別にいいけどね。ただ、一人の方が気楽なんだよな~。
「ミーア!マギー!それくらいにして、小島に急ぎましょ!シン様が困ってますよ!」
さすがはギンだ。僕のことを一番よく知ってる。僕達はどうやって小島まで行くのか考えた。船で行くと時間もかかるし、目立って見つかってしまう可能性がある。
「シン様。私がメアリーさんとミーアを乗せますから、飛翔していきましょう。」
「そうだね。なら、僕が全員に魔法をかけるよ。」
「お願いします。」