メアリーとミーアの修行
僕とギンとマギーは、アルベル王国のナダル伯爵の屋敷でみんなと今後の相談をした。その結果、メアリーとミーアが僕達の旅についてくることになった。だが、あまりにも僕達と戦力が違いすぎる。そこで、2人を特別訓練することにした。そのために、魔物の森の僕とギンの家で合宿することになった。
訓練は簡単だ。魔物の森の中を歩きながら魔物の盗伐をしていくのだ。中にはかなり強力なものもいる。でも、その程度の魔物で苦戦しているようなら、魔族には到底勝てない。
「いましたよ。キングベアですよ!メアリー様とミーアさんで討伐してみてください!」
「ギンさん。私にはもう『様』はいらないわよ。」
「わかりました。メアリーさん。」
「それならいいわ。」
メアリーとミーアが剣を抜いてキングベアに斬りかかった。昔よりも大分動きが速い。それに力も強くなっているようだ。それでもメアリーの剣はキングベアに防がれた。今度はミーアがキングベアに斬りかかった。ミーアの剣はキングベアを斬ったが、剣が途中で止まってしまった。そこにキングベアの強烈なパンチが襲い掛かる。ミーアは剣を手放して避けた。
「メアリーさん。ミーアさん。あなた方は魔力の使い方がなっていません。見ててください。」
ギンがお手本を見せようと剣を抜いた。その瞬間あたりに寒気が走る。ギンの殺気が周りの空気を冷やしたのだ。分が悪いと思ったのか、キングベアは逃げようとしている。そこをギンが剣を一振りした。
スパン
ドサッ
キングベアの身体は上下2つに分かれて地面に倒れた。
「どうですか?あなた方との違いが判りましたか?あなた方は最初から最後まで同じように魔力や闘気を使っているんですよ。それじゃダメなんです。魔力も闘気も垂れ流すんじゃなくて、一気に吐き出すんですよ!」
「はい。」
「わかったにゃ!」
ミーアもメアリーも実力の差を見せつけられて下を向いてしまった。ギンは言い過ぎたと思ったのか、声をかけた。
「さあ、次の獲物に行きますよ。」
それから、少し歩いていくと今度はホーンウルフの群れに出くわした。その数は10頭ほどいる。僕とギンとマギーは高い木の上から2人に言った。
「ここは森の中だから火魔法はダメだよ。頑張って!」
「えっ?!この数を私達だけで討伐するの?」
するとマギーが怒った。
「当たり前でしょ!弱音は吐かないって約束したわよね!」
「わかったわよ!」
メアリーとミーアがお互いの背中合わせに陣取った。多数を相手する作戦としては正しい方法だ。ホーンウルフが頭の角を使って突進してきた。先ほどのことを教訓にしたのか、メアリーもミーアも剣の振りが速い。
スパン
ホーンウルフの硬い角がきれいに切り取られた。そして、ミーアが魔法を放った。
『ウインドトルネード』
竜巻のような風が起こり、ホーンウルフを巻き上げていく。ホーンウルフの陣形が崩れた。その瞬間、二人が剣を片手に突進した。
スパン スパン
ドサッ ドサッ
途中までは順調だったのだが、半分を討伐した段階で2人の動きが鈍くなった。ホーンウルフが後ろからメアリーに襲い掛かる。
「危ないにゃ!メアリー!」
メアリーは咄嗟にホーンウルフの攻撃を避けた。そして剣で応戦するが、最初の鋭さはない。ミーアも同じだ。それでも2人はホーンウルフに傷つけられながらもなんとか残りの5匹も討伐した。
「良かったよ。2人とも。」
「ありがと。」
「やったにゃ。」
僕に褒められたことが嬉しかったのか、2人がニコニコしている。だが、ここでマギーが言った。
「私だったら10秒で終了ね。まだまだだわ。」
せっかく2人が喜んでいるのにと思ったが、ギンもマギーも真実を言っているのだ。ダメなものを良しとしてしまえば、後々大変なのは本人達なのだから。正直に言ってしまえば嫌われるかもしれない。それでも彼女達は真実を言っている。僕はギンとマギーを見直した。
「今日はこの辺にして帰ろうか。」
「はい。シン様。」
暗く気落ちしている2人のために、僕はキッチンで料理を始めた。それをマギーがじっと見ている。
「へ~。あの調味料はこうして作ってたんだ~!いろんな材料が必要なのね。」
「マギー。そこにいてもつまみ食いはできないよ。」
「なんでわかったのよ!」
「以前、そこにいるミーアが同じことをしたからね。」
「私はもうそんなことしないにゃ!もう食いしん坊は卒業したにゃ!」
僕はできたての料理をテーブルに運んだ。マギーも手伝ってくれている。
「シン君の手料理なんて久しぶりだわ~。」
「久しぶりにゃ!」
女性陣が我慢できないらしく食べ始めた。
「そんなに急いで食べなくても十分あるからね。」
「美味しいわ~!」
「最高にゃ~!」
そして、女子全員満腹の様子だ。お腹を見るとまるで妊娠しているかのようになっている。
「もう無理にゃ~。」
「私も無理!シンの料理美味しすぎよ!」
それから月日が経ち、数か月が過ぎた。
「今日は2人の最終試験を行うよ。」
「シン君。もし不合格ならどうなるの?」
僕は心を鬼にして言った。実力のないのに連れて行けば2人の命が危ないのだ。
「悪いけど、連れて行くわけにはいかないよ。」
「なら、絶対に合格するにゃ!何があっても北大陸に行くにゃ!」
「私もよ!絶対にシン君と旅するんだから!」
意外にも2人は目を輝かせてやる気満々になった。
 




