メアリーとミーアも一緒に旅へ
久しぶりにアルベル王国に戻った僕達は、ナダル伯爵に屋敷に行った。そこには学園長先生とエドモンド国王がいた。僕達の冒険の話に耳を傾けていたが、僕達の規格外の強さに驚いていた。そして、ナダル伯爵が聞いてきた。
「シン君。これからどうするつもりだね?」
「はい。今度は北大陸に行ってみようと思います。エルフ族やドワーフ族、獣人族がいると聞いていますので。それに、北大陸には世界樹があるそうですから。ちょっとお礼に行きたいんです。」
「お礼?」
「ええ、大精霊の皆さんにお世話になりましたから。」
ギンとマギー以外は大きな口を開けたまま固まってしまった。
「学園長先生!学園長先生!」
「ああ、すまなかったな。ところで、お礼ということは大精霊様にお会いになったのか?どの大精霊様だ?」
すると、マギーがまた自慢げに言った。
「確か7大精霊とか言ったよね?シンが戦って勝ったのは誰だっけ?確か~、そうだ!サラマンダーとか言ったよね?」
全員が魂が抜けたように気絶していた。
「困りましたね。シン様。」
「マギーが余計なこと言うからだよ。」
「だって本当のことじゃない!」
僕達はしばらく待っているとみんな気が付いたようだ。
「シ、シン殿。今の話は誠なのか?」
「ええ、まあ、そうですかね?」
「いいや。本当だろうな。大精霊様達のことでうそを言うとは考えづらいからな。」
するとエドモンド国王が真顔で聞いてきた。
「シン殿は一体何者なんだい?」
「みんなに言ってますけど、本当に分からないんです。これは本当ですから。」
すると、ナダル伯爵が言った。
「学園長。どうだろう?メアリーとミーアを早期卒業させて、シン君達と一緒に旅をさせてもらっては?優秀な生徒2人には、この国だけでなく世界を見せたいのだが。」
学園長が考え始めた。だが、即座にギンが否定した。
「ナダル伯様にはご恩がありますのでお断りしづらいのですが、難しいと思います。私達の旅は旅行ではありません。世界を平和にするための旅です。今までもそうでしたが、いろんな争いに巻き込まれます。下手をすれば命を落とすかもしれません。」
「そうよね。それに、魔族からも狙われているしね。まだ、100人隊長は2人いるわ。魔族四天王のアルタイ、ベガ、リゲル、シリウスもいるし、最大の敵の魔王ディアブもいるわよ。命の保証はないわね。」
学園長もナダル伯爵もエドモンド国王も黙ってしまった。
「お父様。私、シン君と行きたいです。死んでも構いません。もし、私が弱いのであれば今まで以上に鍛錬に励みます。行かせてください。お父様!」
すると、ミーアが泣きながら言ってきた。
「私も行きたいにゃ!行かなきゃいけないにゃ!北大陸にはお父さんとお母さんがいるかもしれないにゃ!会いたいにゃ!シン!連れて行って欲しいにゃ!」
「どういうことだい?」
「私は小さいころに人族にさらわれてきたにゃ。この国に入った港で攫った人達から逃げたにゃ。必死で逃げたにゃ。でも、王都までたどり着いたときに意識を失って、そこを孤児院のシスターに助けられたにゃ!」
「そうだったのか~。なんで今まで黙ってたんだ?」
「だって、帰りたくても帰れなかったにゃ。お金もないにゃ。それに、また攫われるかもしれなかったにゃ。だから、学園に入って強くなったら帰るつもりだったにゃ。」
なんか普段から明るいミーアからは想像もできない過去の話だった。何とかしてあげたい。恐らくギンも同じことを思っただろう。
「シン様。どうにかならないでしょうか?」
「僕達の旅に同行できるぐらいに強くなるしかないだろうね。」
「私、頑張るから!どんな試練でも耐えて見せる!お願い!シン君!昔みたいに訓練してくれる?」
「私も訓練受けたいにゃ!絶対に弱音は吐かないにゃ!」
「わかったよ。二人の気持ちは。なら、明日から訓練を始めようか。」
人の顔が笑顔に変わった。
「シン。どこで訓練するのさ?」
「マギーも以前行っただろ!」
「もしかして、あの家の周りでやるつもり?あそこは魔物だらけよ。」
「そうさ。丁度いいだろ。」
「なんか、シンって綺麗な顔して鬼みたいね。」
「ありがと。」
「褒めてないわよ!」
翌日、2人は荷物を持ってナダル伯爵の屋敷の前にいた。僕は彼女達の荷物を空間収納に仕舞って、魔物の森の中の家の前に転移した。久しぶりの転移に2人は頭がぐらぐらしているようだ。
「大丈夫かい?」
「平気よ。」
すると、マギーが強めに言った。
「転移ぐらいでおかしくなってたらどこにも行けないわよ。」
「そういうマギーは転移できるようになったの?」
ギンの問いかけにマギーは小さな胸を前に出して偉そうに言った。
「当然じゃない。シンやギンと何年一緒にいると思ってるのよ!そのぐらいできるようになって当然でしょ!」
ミーアとメアリーの目つきが変わった。どうやらマギーに対抗心を持ったようだ。
そして、僕が手をかざすと森の中から家が現れた。ミーアとメアリーは驚いていたが何も言わない。
「この家で合宿するから、まず家の中に入ろうか?」
「うん。」
家の中には部屋が3つしかない。でも、ここには5人いる。どうしようか考えていると頭に自然と魔法が浮かんできた。
「みんなちょっとこっちに来てくれる?」
みんなが居間の方にやってきたので、頭に浮かんだ魔法を唱えた。
『エクスパンション』
すると、不思議なことに家が『ゴー』という音を立てながらどんどん広くなる。そして、新たに部屋が2つ増えた。
「すご~い!すごいわ~!」
メアリーだけでなく全員が感動していた。
「部屋はできたけど、中まではわからないよ。」
「確認するにゃ!」
部屋を一つずつ確認する。最初に僕の部屋からだ。
「ここがシン君の部屋ね?」
するとマギーが偉そうに言った。
「そうよ。シンと私とギンで寝てるんだから。」
「えっ?!本当なの?シン君。」
「まあね。」
「なら私達も一緒に寝るにゃ!」
「ダメだよ。そのために家を拡張したんだから。今日からギンもマギーも別々に寝るからね。」
ギンとマギーが寂しそうな顔をした。でも、仕方ない。5人で寝るには狭すぎるから。女性陣の部屋を確認すると、黄色やピンクのベッドが置かれ、まるでお姫様のような部屋になっていた。
「素敵~!私の屋敷の部屋より綺麗よ!可愛いわ~!」
「シン!私、ピンクじゃなくて青がよかったんだけど!」
「わかったよ。なら青にするよ。」
僕が魔法を唱えると、部屋の雰囲気が一気に変化した。布団も壁紙もすべてが青だ。
「シーン!ありがと!」
早速マギーはベッドでジャンプしている。
一通り見て回った後、今度は台所とトイレ、浴室を案内した。当然使い方もだ。そして、ひと休憩した後、いよいよ訓練を始めることにした。




