ナダル伯爵屋敷で懐かしい人々との再会
アラス王国からアルベル王国に来た僕とギンは、久しぶりの王都に懐かしさを感じながら歩いていた。すると、以前僕が学園祭の時に考案した料理を出している店があった。そこで、僕達は店に入って料理を注文した。ハンバルグやオムライ以外にも僕が考案した調味料を使った新たな料理ができていた。
「美味しいわ~!これってシンが考えた料理なのよね?」
「そうだよ。」
「なら、シンも作れるってことでしょ?」
「そうだね。」
「なら、今度ダンジョンに行ったときのためにたくさん作っておいてよ。」
「もう当分ダンジョンにはいかないよ。」
「な~んだ。」
美味しく食事をした後、僕達は学園に行った。すると、学生以外が学園内に入ったことで少し騒ぎのようになった。生徒達が窓から見ている。そして、校舎の中から先生と生徒数人がやってきた。その中にはミーアとメアリーもいた。
「もしかしてシン君とギンさん?」
「久しぶりだね。メアリー!ミーア!」
すると、ミーアがいきなり僕に抱き着いてきた。大きく柔らかいものが当たっている。
「シ————ン!!!寂しかったにゃ!」
「僕もだよ。ミーア。」
一方、メアリーは控えめに僕の胸に顔をうずめて泣き出した。
「シン君。どうして連絡をくれなかったの?あれから2年以上経つのよ!心配したんだから!」
「ごめんよ。メアリー。僕達もいろいろ忙しくてさ。」
「でも、シン君とギンさんが無事で良かったわ。魔族に狙われてるんじゃないかって、お父様も心配していたんだからね。」
「ありがとう。メアリー。」
ゴッホン ウッホン
マギーが怒った顔で咳払いを始めた。メアリーもミーアも一旦僕から離れた。
「ちょっと、あなた達シンに馴れ馴れすぎるんじゃないの?!」
「それより、あなたは誰なの?」
「私はマギーよ。シンの妻よ!」
「えっ?!え—————!!!」
ボコッ
「違うだろ!」
驚いているミーアとメアリーに説明した。
「マギーはギンと同じで友人だよ。一緒に旅してるんだよ。」
「ずるいよ!シン君。私やミーアは一緒に連れて行ってくれなかったじゃないの!」
「そうにゃ!ずるいにゃ!シンはペチャンコが好きにゃのか?」
「違うから。ミーア!」
「ペチャンコッて何よ!私は今は成長中なのよ!それよりあなたは大きすぎなのよ。そんなだったらシンが窒息しちゃうでしょ!」
「やめてくれよ!もう!」
先生達は安心したのか、スタスタと立ち去ってしまった。
「また旅に出るからあまり時間がないんだ。喧嘩せずに話しようよ。」
「えっ?!また、どこか行っちゃうの?」
「まあね。北の大陸に行くんだ。」
「そんなに遠くまで~。」
するとミーアが目を輝かせた。
「北の大陸に行くにゃか?なら、私も一緒に行くにゃ!あそこには私の故郷があるにゃ!」
そういえばミーアは猫獣人族だ。最初に会った時にはすでに孤児院にいたから聞かなかったが、ミーアはどうして孤児院にいたんだろう?すると、メアリーが言ってきた。
「私の家に行きましょうよ。お父様もシン君やギンさんに会いたがってたから。」
「そうだね。せっかく来たんだからナザル伯爵にも挨拶ないとね。」
僕達はメアリーの家に向かった。いつもならギンとマギーが僕と手をつなぐのだが、今日はメアリーとミーアが手をつないできた。ギンもマギーも文句を言わなかった。
「大きいお屋敷ね。さすが大国の大貴族の家ね。」
「そうさ。僕もギンも何日かお世話になったんだよ。」
「そうなのね。」
「シン様。懐かしいですね。」
「ああ、なんか昨日のことのようだよ。」
僕達が屋敷に入ると執事が出迎えてくれた。
「シン様。ギン様。お久しぶりでございます。」
「久しぶりです。ナザル伯爵はいらっしゃいますか?」
「ええ、いますが来客中でして。」
すると、奥から学園長とナザル伯爵が走ってきた。
「おお、シン殿!帰ってきたか!」
「シン。よくぞ帰ってきたの~。」
僕達は全員で応接室に向かった。するとそこにはエドモント国王がいた。僕とマギー以外は全員が片膝をついて挨拶をした。
「久しぶりですね。シン殿。」
「お久しぶりです。国王陛下。」
「まあ、みんな座ってくれたまえ。」
それから、僕はアルベル王国を出てからの話を始めた。僕が話をする間、全員が真剣に聞いていた。特に魔族の話になると国王陛下も身を乗り出して聞いていた。
「そうなのか~。なら、シン殿はナルシア王国でもジパン王国でも魔族と戦ったのか?」
「はい。そうですね。僕とギンはすでに魔族から狙われる存在になっているようですから。」
「そうなのか~。」
するとマギーが小さな胸を前に出して自慢げに言った。
「大丈夫よ。シンはナルシア王国で魔族の100人隊長ラガンを討伐したし、ジパン王国では100人隊長ギガンを討伐したからね。」
すると学園長先生が驚きの声を上げた。
「なんと!それは本当か?!」
「本当ですよ。学園長先生。私もマギーも魔族を討伐しましたから。」
「お主達がそれほど強かったとはな!」
するとエドモント国王が学園長に聞いた。
「学園長。100人隊長とはそれほど強いのか?」
「はい。以前、我が国に表れた魔族は魔族の中でも最下層の存在ですが、100人隊長は魔王の補佐をする魔族四天王の次に続く存在です。恐らく、王国軍が5000人で戦っても勝てるかどうかわかりません。」
「それほどの存在か?それをシン殿は倒したと?」
「そうよ。しかも、私もギンも見てただけだからね。」
ミーアもメアリーも尊敬の目で見ていたが、話が続くにつれて遠くを見る目に変わっていった。僕があまりにも現実離れした存在になったと思ったのだろう。
「ミーアだってメアリーだって強くなれるよ。考えてみてよ。メアリーはほとんど何もできない状態だったのに、たった1年であれだけ強くなったんだよ。ミーアだって同じさ。僕達は努力すれば、もっともっと強くなれるんだよ。」
「そうね。シン君の言うとおりね。私もミーアもあれから2人で頑張ったんだよ。冒険者のランクだってAまで上がったんだから。それに、この前だって2人でオークキングを討伐したんだから。」
「そうにゃ。メアリーの言う通りにゃ。」
すると学園長が2人を見て言った。
「メアリー。ミーア。お前達は物凄く成長したよ。その努力は称賛に値する。じゃがな。彼らの強さは次元が違うんじゃ。そうじゃろ?シン君や。」
すると僕の代わりにギンが答える。
「そうですね。先日のダンジョンでもオークキングがいましたが、マギーでも秒殺でしたね。」
「やはりな。お主達は魔力をかなり抑えているつもりだろうが、抑えきれない魔力がわしには見える。そっちのマギーとかいうお嬢さんですら、恐らく10000以上の魔力がるだろうな。」
「10000?!ありえないわ。過去に表れた英雄ですら500なんですよ。」
「だからじゃよ。この3人が規格外なのは。」
ここまで静かに聞いていたナダル伯爵が声をかけてきた。
「シン君。これからどうするつもりだね?」