久しぶりのアルベル王国
僕達3人は、魔素の発生源であるダンジョンの攻略に成功した。そして、コアを処分した後、旧王都にいるミナツネのもとを訪ねて説明したいたが、王妃シズカに僕達の正体を追及された。
すると、隣にいる銀の身体が光始め、フェンリルへと姿を変えた。
「ま、ま、まさか神獣のフェンリル様?!」
「そう。私はフェンリルです。これで信じてもらえましたか?」
「すると、シン殿は神なのか?」
「違いますから。ギンは僕の友人ですから。僕は普通の人族だと思いますよ。」
「ですが、フェンリル様は神に仕える神獣ですよ。そのフェンリル様を従えているとなると、やはりシン殿は・・・」
「僕は小さいころに記憶をなくして森に倒れていたんです。以前、夢に出てきた景色や料理がジパンに似ていたのでジパンに行ったんですが、夢に出てきた景色とは明らかに違ったんで隣国のこの国に来たんです。」
「そうだったんですか?」
「納得してくれましたか?」
「は、はい。」
未だに2人は少し慌てた様子だ。
「もう一度言いますけど、僕は普通の人族ですからそんなに緊張しないでください。」
「シン殿がそういうのであればそうしよう。」
僕はこれからのことを2人に聞いた。
「これからこの国をどうしますか?」
「この国から離れて行った者達に、元の平和が戻ったことを伝えましょう。彼らにとってはこの国が生まれ故郷ですから。戻ってきたいものもたくさんいるでしょうから。」
「そうですね。でも、まだ弱体化したとはいえ、魔物もいますから冒険者ギルドを復活させるのがよいかと思いますよ。」
「シン様の言う通りです。冒険者達は魔物がいればお金になるので大勢集まりますから。」
「なら、一石二鳥ね。人が集まってしかも魔物が減っていくんでしょ?」
「まあね。マギーの言うとおりだよ。」
ここで、ミナツネとシズカが深々と頭を下げてきた。
「本当に何から何までありがとうございました。今は何もお礼ができませんが、次にこの国に立ち寄られた際には、しっかりとお礼をさせていただきましょう。」
「いいえ。お礼は結構ですよ。それを国民のために使ってください。困ったときはお互い様ですから。では、僕達はもう行きますね。」
ミナツネとシズカに見送られて僕達は再びジパンに向かって歩き始めた。
「シン様。これからどうしますか?」
「どうしようかな~?」
すると、マギーが提案してきた。
「ねえ、シン。北の大陸に行ってみない?そこには獣人族やエルフ族、ドワーフ族が住んでるのよ。」
「マギーは行ったことあるの?」
「ないわ。だから行ってみたいじゃない。」
するとギンが厳しい顔になった。
「マギー!確か魔大陸は南大陸よね?もしかして、魔族の追っ手を恐れてるの?」
「違うわよ。シンもギンもいるし、私だって強くなってるんだから!そうじゃなくて、本当に行ってみたいのよ。だって、あの大陸は美味しいものが沢山あるって聞いてるもん。」
「まったく、マギーは本当に食いしん坊なんだね。」
「ひど~い!食いしん坊じゃなくてグルメって言ってよ!」
北の大陸に行くにはこの東大陸の先端から行くか、中央大陸の先端から行くしかない。
「シン様。久しぶりにアルベル王国に行ってみませんか?」
「アルベル王国か~。みんな元気にしてるかな~?」
「彼らももう4年生ですよ。」
「そうだよな~。ミーアもメアリーも成長したんだろうな~。」
「シン!ミーアって誰よ!それにメアリーって誰なのよ!」
「王立学園のクラスメイトだよ。」
「ふ~ん」
なんかマギーの様子がおかしい。
「なら、王都オリントに転移するよ。」
「はい。」
僕達はアルベル王国の王都オリントの近くの森に転移した。目の前には王都の石の壁が見える。一気に懐かしさが込み上げてきた。そして、街の中に入ると僕達が住んでいた時のままだ。
「相変わらず賑やかですね。」
「そうだね。冒険者ギルドに行ってみようか?」
「はい。」
僕達が冒険者ギルドに行くと受付には見慣れた女性がいた。そう、ミオラだ。
「も、も、もしかして、シン君にギンちゃん?」
「お久しぶりです。ミオラさん。」
「まあ、シン君、男前になったわね~!私が結婚していなかったら申し込んでいたのに残念だわ~!」
「ミオラさん。結婚したんですか?」
「そうよ。相手を聞いて驚くわよ!」
「誰なんですか?」
「サムよ。あなた達も覚えているでしょ?」
「ああ、Aランクのサムさんですね。」
「そうよ。あなたに負けてからサムは我武者羅に訓練したのよ。今じゃ、Sランクになってこのギルドのエースなんだから。ありがとうね。シン君。あなたに会って、あの人は物凄く変わったのよ。」
「そうだったんですね。でも、幸せそうで良かったです。」
「まあね。学園にはもう行ったの?」
「まだですけど。」
「そう。メアリーもミーアも頑張ってるわよ!」
すると、2階からドタドタと大きな音を立ててギルマスのカレンがやってきた。胸が大きく揺れている。やっぱり大きい。
「おお、シン!ギン!久しぶりだな!」
するとカレンはマギーを鋭い目で睨んだ。恐らく、マギーの魔力から魔族だとわかったのだろう。
「大丈夫ですよ。カレンさん。マギーはいい子ですから。僕とギンの仲間なんです。」
「そうか。ならいいがな。どうだ?上に来て話でもしていかないか?」
せっかくなので僕達はギルマスの部屋に行った。そこで、ナルシア王国の件、東大陸の件を話した。
「シン!やっぱりお前は管理神様が遣わした存在なのかもしれんな。」
「どうだろう?僕に特別な力があるのは否定しません。でも、僕自身、神様達に会ったことはありませんから。」
「ハッハッハッ 当たり前ではないか。人が神に会うなどできようはずがあるまい。せめて声を聞くぐらいだな。」
なんかカレンの言葉が気になった。何度か不思議な声を聞いたことがあるからだ。
「その顔は何か思い当たる節がありそうだな。」
「いいえ、そんなことないですよ。ハッハッハッ」
僕達は冒険者ギルドを後にして王立学園に向かった。
「いいわね~。シンもギンも。懐かしく話の出来る人達がいて。」
「マギーはいないの?」
「・・・・」
「どうしたのさ。」
「私の仲間はほとんど殺されたわ。残った者達も散り散りよ。もう、故郷もないだろうしね。」
「そうなのか~。でも、これから僕やギンと一緒に思い出を作っていけばいいよ。」
「そうね。そうよね。」
珍しくギンがマギーを後ろから抱きしめた。
「ギン!それって嫌味?頭と背中に柔らかいものが当たってるんだけど!」
「違うわよ!素直じゃないわね~。」
2人はニコニコしている。お互いのことを理解している証拠だ。
「シン様。あの店を見てください。あの料理はシン様が作ったものと同じですよ。」
ギンが指さした方向には食堂があった。その食堂の前には僕が作ったのと同じハンバルグとオムライが飾られていた。
「あの店によって行こうか?」
「うん。」