アラス王国の古代遺跡
僕達は旧アラス王国の国王ミナツネと王妃シズカに、魔素が増えた原因をすぐるように約束した。そして、その原因を突き止めるため、飛翔して上空から調べてみることにした。どれくらい飛んできただろうか、王都からかなり離れた場所に森が開けたところがある。その上空まで行ってみるとどうやら古代遺跡のようだ。崩れているが古い神殿のような建物があり、その前方には大きな石が円形状にいくつも並べてある。その先には小高い丘のような場所もあった。
「シン様。ここは何でしょうか?」
「多分、古代遺跡だね。大昔にここに人が住んでいたんだと思うよ。」
「シン!ギン!降りてみようよ。」
僕達は地上に降りた。目の前には大きな石がある。上空から見た時よりもはるかに大きかった。
「2人とも気付いていると思うけど、あの神殿の入口から魔物の気配がビンビンするから気を付けてね。」
「了解です。」
僕達は崩れた神殿の入口まで来た。どうやら奥に続く通路がありそうだ。僕達はその中に入って行った。入り口は狭かったが奥に進むにつれて中が広がっていく。
『ライト』
僕は頭上に光球を出して足元を照らしながら前に進んだ。少し入ったところに階段がある。僕達が階段を降りようとすると、階段の壁にかけてあるランプに灯がともった。
「なんか明るくなったね。」
「やはり古代遺跡のようですね。」
「探検ってなんかドキドキするわね!」
知らないうちに僕の右手をマギーが、左手をギンが握りしめている。少し歩きづらい。
「オークだよ!」
「はい。」
2人は僕から手を放して身構えた。目の前からオークがやってきた。剣や槍を持っている。
「いくよ。」
僕は背中からマサムネを抜いてオークを斬り殺していく。ギンも腰の剣を抜いてオークを倒していく。マギーは魔法でオークを討伐していく。討伐したオーク達は空間収納に仕舞う前に光の粒子となって消えてしまった。後には魔石だけが落ちていた。すると、マギーが説明し始めた。
「シン。ギン。この遺跡ってもしかしたらダンジョン化したのかもしれないわ!」
「どういうこと?」
「何かの要因でここに魔素が集まったのよ。何百年、何千年もの間、魔素が溜まり続けてこの神殿にコアができたの。そして、そのコアがさらに魔素を吸収してこの神殿をダンジョン化して、その後もさらに魔素が溜まり続けたから、ガリレさんが言ったスタンピードが起こったのよ。蓄えきれなくなった魔素をコアが一気に吐き出したのね。」
「詳しいわね。マギー!」
「行っておくけど、私、これでも堕天使族なのよ。そのぐらい当然知ってるわよ。」
「へ~。」
「『へ~』って何よ!シン!」
「なんかマギーのこと見なおしちゃったよ。」
「こんなことで見直されるほど評価低かったわけ!」
「違うから。別にそういう意味じゃないから。」
「なら、今度抱き枕になってくれたら許してあげる。」
するとギンが横から怒った。
「マギー!調子に乗りすぎよ!」
いずれにしてもここがダンジョンなのは間違いなさそうだ。そうなると、コアをそのまま放置できない。僕達は最深部まで行くことにした。
「何階層まであるのかな~?」
「わからないよ。僕だって初めて来たんだから。」
「食事はどうするの?」
「空間収納にたくさん魔物が入ってるから、それで我慢して!」
「なんか毎日肉だと飽きちゃいそうなんだけど。」
「マギー!贅沢言わないの!シン様が困ってるでしょ!」
「だって~!」
どうやら1階層から9階層まではオークが中心のようだ。たまにドロップ品で魔石以外にオーク肉が手に入った。だが、肉だ。確かにマギーが言う通り、肉は飽きてくる。
「次は10階層ね。」
「シン。もしかしたら、この部屋はボス部屋かもしれないわよ。」
「ボス部屋?」
「そうよ。ダンジョンっていうのは普通の階層とボスのいる階層があるのよ。なんか、10って区切りがいいでしょ。もしかしたらボスがいるかもね。」
僕達が扉を開けると、そこにはオークジェネラルとオークキングがいた。
「ほら、やっぱりボス部屋だった!」
「どうしますか?シン様。」
2人に任せるよ。
「やったー!なら、私がキングね。ギンはジェネラルよ!」
「いいわ。今回は譲ってあげるわ。」
ギンにとってもはやオークジェネラルは遊び相手にもならない。瞬間移動でジェネラルの上に転移し、上段から剣を一振りだ。
ブギャー
ジェネラルは光の粒子になって消えた。そして、それを見ていたマギーも魔法を放った。
『シャドウアロー』
頭の上に矢が現れた。その矢から黒い靄があふれ出ている。そして、矢はオークキングめがけて飛んで行った。オークキングは鼻息でそれを防いだが、次の瞬間、巨大な矢がオークキングの腹に突き刺さった。オークキングも光の粒子になって消え、足元には比較的大きめの魔石が落ちていた。
「最初の矢は囮なのよ!やっぱりオークはオークね!」
「お疲れさん。じゃあ、また階下に進むよ。」
「少し休ませてよ。お腹空いちゃったよ!」
「なら、少し休もうか。」
僕は空間収納から魔物の肉を取り出し、それに塩とペップをかけて焼いた。我慢しているのか、よほどお腹が空いているのか、マギーもギンも美味しそうに食べた。そして、しばらく休んでから11階層へと進んだ。11階層からはコボルトとホブゴブリンが中心だった。
「コボルトもゴブリンも臭いんだけど!」
「仕方ないでしょ!いろいろ言わないの!」
「なんかギンは厳しいよね。」
「マギー!違うよ。この中で一番鼻がいいのはギンなんだよ。ギンが一番きついと思うよ。でも、それが油断に繋がるから我慢してるんだよ。」
「確かにそうよね。ギンはフェンリルなんだもんね。ごめん。ギン。」
「いいのよ。それより、早く先に進みましょ!」
その後19階層まで進み、20階層のボス部屋にいたゴブリンキングとコボルトキングを倒した。そして、21階層だ。