7大精霊
僕達はアラス王国に来て強力な魔物であるマンティコアを討伐した。どうやら、この国の魔物は魔素を多く取り込んで強力になっているようだ。その原因が何なのか考えながら僕達は先を急いでいた。すると、魔物とは違う魔力が感じられた。
「もしかしたら人がいるかもしれない。急ごうか。」
「はい。」
3人は魔力の反応があった方向に急いだ。すると、目の前には広大な畑が広がっている。ただ、水がないのか土壌が悪いのか、作物はほとんど実っていなかった。
「シン様。やはり誰かが住んでるようですね。」
「そうだね。とにかく情報が欲しいよ。誰かいないかな~。」
僕達は、街の中を歩いてみた。店はあるがどの店もやってない。というより人が住んでる気配がない。
「おかしいよね。畑があるんだから人はいるはずよね。」
街の外れに教会のような建物とその周りに家が立ち並んでいた。そして、そこには子ども達の姿も大人達の姿もあった。僕達に気が付くとみんな驚いた。男の子が一人慌てて教会に入って行った。
「あの~。ちょっといいですか?」
すると、教会の中から男の子に連れられて一人の老人が出てきた。
「お主達はどこから来なさった?」
「はい。ジパンからです。」
「ほ~。ジパンからね~。だが、よくここまでたどり着けたもんだ。途中に魔物達がたくさんおっただろう。」
するとマギーが自慢げに答えた。
「全部討伐したもん。」
「えっ?!全部討伐した?それは本当かね?」
今度はギンが答える。
「本当ですよ。かなり強い魔物もいましたけど、何とか討伐してきました。」
「そうかね。お主達は強いんじゃの~。」
「あったり前じゃん!」
大人達も子ども達も疑心暗鬼の目で見ている。
「聞いてもいいですか?」
「何だね?」
「どうしてこの国は滅んだんですか?」
すると、老人は烈火のごとく怒り始めた。
「滅んでなどおらん!現にこうして我らが住んでるじゃろう!この国はまだ存続してるのじゃ!」
「すみません。そうですね。でも、かなり荒れ果てているように見えるんですけど。」
すると老人が話し始めた。
「そうじゃのう。昔はこの国も豊かだったんじゃ。だが、あの日にすべてが変わったんじゃ。」
「何があったんですか?」
「スタンピードじゃよ。突然、空が真っ黒な雲に覆われてな。物凄い轟音とともに魔物達が押し寄せてきたんじゃ。どの街も全部飲み込んでいきよった。スタンピードが治まった後も畑には作物は育たなくなり、野生動物達もおらんようになったんじゃ。」
するとギンが聞いた。
「スタンピードは自然に治まったんですか?」
「そうなんじゃ。この国全体を蹂躙した後は、不思議と魔物達は各地に散っていきよったんじゃ。」
「そんなことがあったんですね。それで、あなた方以外にこの国に残っている人は他にはいないんですか?」
「わからん。他の街に行きたくとも魔物達がたくさんおって行けないのじゃ。」
「なるほど、それで僕達がジパンから来たと聞いて驚いたんですね。」
「ああ、そうじゃ。魔物がたくさんおる中で、ここまで来れる者達がおるとは考えられないからの~。」
その後、僕達は教会の中に案内された。そして、自己紹介をした。老人の名前はガリレというらしい。この街の責任者をしているようだ。この街には現在300人ほどが住んでいた。
しばらく話をした後、僕達は街を見て回ることにした。
「これからどうしますか?シン様。」
「恐らく魔素が多いことが原因だよね。何とか浄化できないかな~?」
「シンには無理できないの?」
「浄化はできるけど、この国全体となると範囲が広すぎるよ。」
「そうよね~。お城だけってわけじゃないもんね。」
「シン様。精霊にお願いしてみてはいかがでしょうか?」
「精霊?」
「そうです。この世界には火・土・水・風・森・光・闇の大精霊がいます。その精霊達に協力をお願いしたらどうでしょうか?」
「だって僕は精霊達にあったこともないし、どこにいるかも知らないよ。」
「本来、大精霊達は世界樹の森にいます。ですが、こちらが強い思念を送れば彼らに伝わるかもしれません。」
「やってみてもいいけど、あまり自信がないよ。精霊達がいたとしても、僕の願いにこたえてくれるかどうか。」
「なんかシンらしくないわね!やってみなさいよ!ダメなら違う方法を考えればいいだけでしょ!」
「そうだよね。マギーの言う通りだ。やってみるよ。」
僕達は最初に見た畑のところまで行った。そして、魔力を全開放した。銀髪が逆立ち青い瞳は黄金色に変化し、全身から神々しい光が溢れ出た。そして、僕は大精霊達に呼びかけた。
「火の大精霊サラマンダー、水の大精霊ウンディーネ、土の大精霊ノーム、風の大精霊シルフ、森の大精霊ドリアード、光の大精霊ウイスプ、闇の大精霊シェイドよ。我が願いを叶えたまえ。」
すると、上空から光が差し込み、目の前に眩しい光の玉が現れた。その光の玉がどんどん人型に変わっていく。そして、目の前にチョーマッチョで髪の毛が燃えている男性、豊満な胸をして髪の毛が水色の美女、厳つい体で茶色の髪をした男性、スレンダーで髪が緑の美女、同じくスレンダーで髪が銀色の美女、子ども体型で髪が金色の少女、同じく子ども体型で髪が黒色の少女が現れた。
そして、髪の毛が真っ赤に燃えている男性が声をかけてきた。恐らくサラマンダーなのだろう。
「俺は火の大精霊であるサラマンダーだ!俺達を呼んだのはお前か?」
「はい。そうです。」
すると、豊満な美女が僕を見てなんか感動している。
「あら、可愛い顔してるわね。君。お姉さん達に何か用?」
今度はスレンダーで銀髪の美女が怒り気味に言った。
「ウンディーネ!この子が可愛い顔してるからって駄目じゃない!」
「あら、いいじゃない。シルフ。あなただってかわいい子は好きでしょ?」
「嫌いじゃないわね。」
すると、僕の隣にいたギンがフェンリルの姿になって彼らに言った。
「お前達、わが主に失礼であろう!」
すると、髪が緑の美女が驚いて言った。
「あなた、もしかしてフェンリルなの?」
「そうよ!」
すると、髪が金色の少女が言った。
「このフェンリルはまだ子どもね。」
隣にいた髪の黒い少女がバカにしたように言った。
「ウイスプ!あなただって人のこと言えないでしょ!どう見たってあなただって子どもよ!」
「違うわよ。私はもう大人なんだから!そういうシェイドの方が子どもじゃない。」
すると、ウンディーネが2人を諫めた。
「まあまあ、あなた達よしなさい。それよりも神獣のフェンリルが主って言ったのよ。その方が問題でしょ!」
「あの~。誤解しないで欲しいんですけど、僕は別にギンの主ってわけじゃないですから。友人ていうか、幼馴染って言うか、そういう関係ですから。」
なんかギンが僕を睨んだ。何か間違ったことを言ったのかな~。




