いざ!王城へ!
大領主であるシズヒサ、モリナリ、オダナガ、タケノブの魔法を解除した僕達3人は、王都に向かって歩き始めた。3日後に王都で待ち合わせをしている。本来、2日あれば十分間に合う距離だ。そこで、ゆっくりと旅をすることにした。
「ねぇ、シン?」
「なんだい?」
「多分、フジナガは待ち伏せしているわよ。」
「そうだろうね。」
「知ってたの?」
「まあね。僕達がサルとヤマカンを倒したことは知られてるだろうからね。」
「どうするつもりなの?」
「どうもしないさ。平和を乱す敵は倒すだけだよ。」
「なんか余裕なのね。」
するとギンが言った。
「マギーだってシン様の力を知ってるでしょ?」
「まあね。でも、相手は100人隊長なのよ。」
「まあ、何とかなるさ。」
僕達は王都に行くまでは目立たないように野宿することにした。
「シン。お腹すいちゃった!何かない?」
「残り物でよければあるよ。」
「それでいい。この国にきてからまともに美味しいご飯を食べてないんだもん。」
「やっぱり、マギーは食いしん坊ね。」
「別にいいもん。」
僕は亜空間から食料を出した。僕の亜空間は時間の経過がない。そのため、あの学園で作った懐かしい料理の余りを出すことにした。
「美味しい!シン!これ最高じゃない!どうして今まで出してくれなかったのよー!」
「忘れてたんだよ!」
「シン様。この料理って学園で作ったものですよね?」
「そうさ。学園祭で作った残りだよ。」
「やっぱりシン様の料理は美味しいです!」
「喜んでくれて嬉しいよ。」
そして翌日、いよいよ王都に到着した。王都は不気味に静まり返っていた。人々が誰も家から出てきていない。すると、遠くの方から男達の声が聞こえてきた。
「シズヒサ様を守れー!」
「シン様!」
「ああ、多分魔族だ!」
僕達は声のするほうに急いだ。すると、シズヒサ一行が3体の魔族達に襲われていた。タカモリが全身から血を流しながらシズヒサを守っている。
チェストー
タカモリの一刀は魔族の鋭い爪に弾かれた。そして、後ろからもう一体の魔族がタカモリに襲い掛かろうとしている。僕は瞬間移動で魔族の前に出た。
カキーン
「おお、シン殿。来てくれたのか?」
「タカモリさん。怪我人を端に寄せてください。後は僕達が何とかします。」
「感謝する。」
「ギン!マギー!行くよ。」
「はい。」
魔族達は僕達に攻撃を仕掛けてきた。僕が背中のマサムネを抜くと、マサムネから眩しい光が溢れ出た。僕の魔力と反応したようだ。
「貴様がシンか?貴様の命をもらうぜ!」
目の前の魔族の身体から黒い靄が出てきた。そして、魔族の姿が消えたと思った瞬間、僕の頭上から鋭い爪で攻撃してきた。だが、僕はマサムネでその攻撃を防ぐ。
「よく見破ったな!」
「あれだけ魔力をたれ流したら見え見えだよ。手本を見せてあげるよ。」
僕は瞬間移動で魔族の頭上に転移して、マサムネを一振りした。すると、空間が切断され魔族の身体は左右2つに分かれた。
「この刀、凄いな~。」
右を見るとマギーが魔法で魔族を討伐していた。ギンはすでに討伐を終えて僕に向かってに歩いている。
「余裕だったよ!シン!やっぱり私、強くなったみたい!」
「確かにな。でも、油断するなよ。この前みたいなことはもうごめんだからね。」
「わかってるわよ!」
「シン様。怪我人はどうしますか?」
「魔法で治すさ。」
僕はタカモリとシズヒサのいるところまで行き、倒れている兵士達に魔法をかけた。
『パーフェクトヒール』
すると、僕の手から出た光が兵士達を包み込み傷を癒していく。
「オオ————!さすがはシン殿ですな。」
「ありがたい。シン殿。感謝する。」
「大丈夫ですよ。それより、待ち合わせの場所まで急ぎましょうか。」
「はい。」
僕達は待ち合わせ場所に急いだ。その途中、街に散在していた魔族の魔力が城の方に集まるのを感じた。どうやら、待ち伏せ作戦を諦めて総力戦に切り替えたようだ。
「シン様。すでに皆さんが揃っています。」
僕達が到着すると、モリナリ一行、タケノブ一行、オダナガ一行がすでに集まっていた。
「遅くなりました。」
「遅れてすまん。途中で魔族どもに襲われていたところをシン殿達に助けられてな。」
「そうであったか。それでけが人は出なかったのか?」
「出たよ。だが、シン殿が皆の傷を癒してくれてな。」
「さすがはシン殿ですな。ですが、シン殿は一体何者なんですかな?」
「僕は普通の人族だと思いますが。」
「思いますが、とは?」
「記憶がなくて分からないんです。」
「そうでしたか。」
「シン殿、これから予定通り王城に向かいますかな。」
「はい。ただ、王城に10体ほどの魔族の魔力が感じられます。くれぐれも注意してください。」
すると、オダナガが前に出て行った。
「シン殿。魔族どもには散々な思いをさせられましたからな。死んでいった者達の仇を取りますぞ!そうだな!みんな!」
「オオ——————」
僕達は総勢200名ほどだ。全員で王城へと向かった。
「シン様。魔族は10体いるんですよね?そうなると、このまま王城に乗り込んだ場合、相当な犠牲者が出ると思われるのですが。」
「わかってるさ。彼らには魔法攻撃も物理攻撃も効かないように結界を施したから大丈夫だよ。」
「いつの間にそんなことを。全く気が付きませんでした。」
「さすがシンだよね。抜け目ないもんね。」
そして、王城までくると兵士達の死体が転がっていた。恐らく王城を守護していた者達だろう。城の中に入っても死体が所々に散乱している。
「僕達3人は女王様のところに行くから、後は頼んだよ。」
「了解しました。シズヒサ!モリナリ!タケノブ!気を引きしめていくぞ!」
「オオ————!!!」




