シン様は神の使い?
マギーはすでに人族に変身している。僕は敢えて姿も魔力もそのままにして、王城へと転移した。東門で残っている魔物はギンとマギーに任せることにしたのだ。僕が王城に行くと、すでに敵も味方も大勢の兵士が倒れている。その中にはサデルン伯爵の姿もあった。そして、城の中からは魔族の魔力がビシビシと感じられた。僕が城の中へ急ぐと、謁見の間の前で頭から2本の角を出した魔族とウイリアムが戦っていた。ウイリアムは体中に怪我をしているようだ。
「おい!お前!僕が相手だ!」
「き、貴様は?ラガン様はどうしたのだ?」
「あの出来損ないの悪魔か?あいつなら今頃、無限地獄で苦しんでるだろうな。」
「な、なんだと~。」
僕は瞬間移動でザクロスのところに行き、お腹に拳をお見舞いした。
グハッ
そして、ザクロスを掴んで王城の外に転移した。
「貴様は本当に人族なのか?」
「どうかな?」
「まあ、いい。」
「あっ、そうだ。先に言っておくが転移で逃げようとしても無駄だよ!僕が結界を張ってあるからね。魔王でも破れないよ。」
ザクロスの額から汗が流れる。ザクロスは魔法で攻撃してくる。だが、僕にはまったく通用しない。すべて弾かれる。長い爪で攻撃してくるが、それも無駄だ。
「お、お前は一体?もしや、お前は・・・」
「終わりだ。」
僕は背中の剣を抜いた。
「この剣は、精神体のお前達悪魔も殺すから。」
ザクロスは後ろに逃げようと必死だ。だが、僕は目にも留まらぬ速さでザクロスを斬った。ザクロスの身体が上下2つに分かれる。
「ベガ様~!」
ザクロスは光の粒子となって消えてしまった。
「終わった~。」
僕は地上に降り立ち、元の姿に戻った。そこに、ギンとマギーがやってきた。
「シン様。すべて討伐しました。」
「私も頑張ったよ。」
いつもの2人に戻っている。もしかしたら、あの露店の老婆はこうなることを知っていたのかもしれない。一体何者だったんだろう。
「ギン。マギー。よく頑張ったね。でも、これからは絶対に無理しないで。」
「はい。」
「うん。」
なんかマギーがやけに素直になっている。そして、僕達は王城に向かった。王城に行くと謁見の間の中には、貴族達と王族達がいた。そして、傷ついたウイリアムの姿もあった。
「ウイリアム。すべて終わったよ。」
「そうかい。やっぱり、シン君とギンさんに頼んでよかったよ。」
すると、マギーがプンプンしながら言った。
「私もでしょ!忘れないでよ!」
「ああ、そうだったね。ごめん、ごめ——— 痛ぇてて。」
「ウイリアムさん。そこに座ってくれるかな。」
ウイリアムが玉座の隣の椅子に腰かけた。僕は魔力を解放する。銀髪が逆立ち、体中から光が溢れ出た。そして、魔法を発動した。
『ホーリーレイン』
すると、僕の手から光が溢れ、天井から光が雨のように降り注ぐ。その光が傷ついたウイリアムの傷をいやしていく。ウイリアムの怪我が見る見るうちに治った。周りで見ていた王族も貴族も驚いて見ている。
「奇跡だ!」
「神なのか?」
すると、スチュワート国王、ウイリアム王子、その場の全員が僕に片膝をついた。
「感謝します。神の使いよ!」
「僕はそんなんじゃないから。ただの人族のシンだから。立ってください。皆さん。ウイリアムさんまで何してるんですか。勘弁してくださいよ。」
すると、スチュワート国王が立ち上がって言った。
「シン殿がそうおっしゃるなら、そうしましょう。みんな、シン殿は目立つのが嫌いなようだ。このことは絶対に誰にも話すな。良いな。」
「ハッ」
その後、僕はスチュワート国王とウイリアム王子と応接室で話をすることになった。
「兵士達から聞きましたよ。シン君。東門での出来事も。安心していいよ。全員に口止めしておいたから。」
「ありがとう。ウイリアムさん。」
「お礼を言うのはこちらだよ。それに、ギンさんとマギーさんには大変な思いをさせてしまったようで、申し訳なかったね。」
「大丈夫ですよ。」
「うん。大丈夫だ!」
すると、スチュワート国王が言ってきた。
「シン殿はこれからどうするんだ?良かったらこの国の公爵として留まってもらえないか?領地は反乱に参加した貴族どもの領地を差し上げよう。どうだろうか?」
「申し訳ありません。エドモント国王にも言ったのですが、この世界には僕を必要としている人達がいるようですから。」
「そうか~。残念だが、この国だけに留めることはしないほうがよいかもしれませんな。」
「シン君。何かあったらここに来てくれよ。父上も僕もシン君の力になることを約束するよ。」
「ありがとう。ウイリアムさん。」
僕達は報酬を頂いて王城を後にした。
「シン。いくらもらったのよ?」
中を確認すると白金貨がぎっしり入っていた。
「白金貨がたくさんありすぎていくらあるか分からないよ。」
「なら、今日は美味しいもの食べれるわね。」
「ああ、そうしようか。」
「ところで、これからどうしますか?」
「東の大陸に行ってみようと思うんだ。」
「それなら、東に港町があるからそこから船に乗るのよ。」
「シン様。ジパンに行くつもりですか?」
「そうだよ。なんか、コトミ先生が言っていたことが気になってさ。」
「コトミ先生って誰よ?」
「学園の先生よ。」
「そう。」
そして、僕達は翌朝、東大陸に向けて出発した。
「そういえば、マギーに黒い翼が出てたけどあれがマギーの本来の姿なの?」
「見られちゃったのね。そうよ。私は堕天使族だから黒い翼があるのよ。」
「ジニートやラガン達にもあったけど?」
「魔族の中には翼を持ってるものが結構いるのよ。悪魔族以外にもバンパイア族なんかも翼があるわね。」
「ふ~ん。」
「ふ~んって何よ。」
「別に何でもないけど、ただ、空を飛べたり、瞬間移動できたり、魔族って人族と違って結構能力が高いんだなって思っただけだよ。」
「そう言われてみればそうね。でも、人族よりも数が圧倒的に少ないのよ。」




