マギー!魔族について語る!
その日も疲れたのでぐっすりと寝た。朝方寝苦しさに耐えかねて目を覚ますと、いつの間にか僕に左にギンがいて、右側にマギーがいた。そのマギーの足が僕のお腹に乗っていたのだ。
「2人とも朝だよ!」
ギンとマギーが目をこすりながら起きた。するとマギーが僕の右側にいるのを見たギンが言った。
「マギー!あなたいつの間に?!」
「いいじゃない!シンは別にギンのものってわけじゃないんだから。」
マギーが僕の右手に抱き着いた。なんか固い感触だ。それを見てギンが僕の左手に抱き着いてきた。今度は柔らかい感触だ。まあ、どっちも好きだけどね。
その日、僕達は宿屋の女将さんの手伝いで街の中心に来た。そこで、ご主人が作ったハンバルグとオムライの試食を通行人にしてもらうことにした。最初は一人二人だったのに、今では列ができている。
「なんかもうなくなりそうよ。」
「そうですね。シン様そろそろ頃合いかと思います。」
そこで、僕は集まっている人達に聞こえるように大きな声で言った。
「皆さん!大変申し訳ありませんが、ご用意した試食がなくなりました。興味のある方は是非、『旅人の宿』に来てください。同じ料理を食べられますので!」
「キャー あの子誰?すごくかっこいいんだけど!」
「本当だわ!チョーイケメンよ!」
なんか、料理よりも僕に興味のある人がいた。困ったもんだ。
僕達が片付けて店に戻ると、店の前には大行列ができていた。僕達はすぐに店に戻って準備した。
「おお、戻ってきたか!ありがたい。手伝ってくれるか?」
「もちろんよ!ねっ、シン、ギン。」
「ええ、いいですよ。」
ギンとマギーは女将さんと一緒に接客をした。僕はご主人と料理作りだ。そして、何とか終了した。時間はすでに夜の8時になっていた。
「シン君。ギンさん。マギーさん。すまなかったな。」
「いいんですよ。でも、僕達は明日には出発する予定なんですけど、大丈夫ですか?」
「ああ、人を雇うさ。だが、料理が間に合わないな~。」
そこで、僕は自分の持っている魔法袋を渡した。
「これを使ってください。事前に料理を大量に作って中に入れておくようにすればいいですよ。この魔法袋は時間の経過がありませんから。」
「いいのか?でも、この袋は物凄く高いんだろ?」
すると、横からマギーが言った。
「この国だと、普通の魔法袋で白金貨20枚はするわね。時間が経過しないとなると白金貨50枚はくだらないわね。本来は国宝物よ。」
「えっ———!そんな高価なものは受け取れないな。第一、うちのそんな大金はないからな~。」
「いいですよ。差し上げますよ。」
「ほ、ほ、本当にいいのかい?」
「はい。」
結局、僕達がこの宿を利用するときは、いつでも無料になるということで受け取ってもらった。そして、翌朝、僕達は再び王都カサンドラに向けて出発した。
「楽しかったわね。シン。ギン。」
「そうだね。旅してるといろんな出会いがあって楽しいよ。」
「そうですね。」
僕達は次の街に向けて出発した。
「マギー。次の街はどんなところか知ってる?」
「あったり前じゃないの!次はボルトンシティーね。王都の手前の街よ。確か鉱山があったかしら。私は興味ないけどね。」
僕達が歩いていると前から奇妙な人達が歩いてきた。全員がふらふらしている。
「ギン。マギー。あいつらはゾンビだ!」
「そのようですね。」
そして、僕は近くに大きな魔力の反応を感じた。
「シン様。近くに魔族がいるかもしれません。」
「ああ、わかってるよ。僕達の力を見物しようとしてるんだろうね。」
ゾンビが僕達に襲い掛かってきた。やはりゾンビだ、動きが遅い。だが、厄介なのは剣で斬られても立ち上がってくることだ。
「汚いわね~!あっちに行きなさいよ!」
『シャドウウインド』
マギーが魔法を発動した。マギーを中心に黒い空気の流れができ、ゾンビ達は前に進むことができない。すると、ギンが魔法を発動する。
『ホーリーアロー』
上空に表れた光の矢がゾンビ達の頭を打ちぬいた。ゾンビ達はその場に崩れ落ちて灰になって消えた。
パチパチパチ
音のする方を見ると黒い翼の男が上空にいた。
「さすがジニートを倒しただけのことはあるな。だが、所詮あいつは魔族の最弱者だ。いい気になるなよ。これから、お前達には地獄を見せてやるからな。俺達に逆らったことを後悔するさ。そこにいる裏切り者もな。」
魔族の男はその場から姿を消した。どこかに転移したのだろう。
「今のは魔族の100人隊長ラガンよ。あいつが来たということは、本気で私達を殺すつもりよ。あいつもそれなりに強いから要注意ね。」
「魔族の序列ってどうなってるんだ?」
「私もよく知らないけど。魔王がいて、その下に四天王と呼ばれる者達がいるわ。その下に各種族の代表者がいるのよ。」
「なら、100人隊長って何?」
「それぞれの四天王に100人ずつ選抜された配下がいるのよ。その100人のトップね。」
ギンが真剣な表情だ。
「それって四天王に次ぐ強さってことよね?」
「そうね。」
「ギンの母親が戦った相手はどんな奴だったんだ?」
「かなりの巨体でした。恐らく10mくらいはあると思います。背中に黒い翼があって、身体は緑色をしてました。頭に大きな角が2本あって、そいつの足元にはケルペロスがいて、身体の周りには黒くて小さなドラゴンのようなものが飛んでいました。」
「そ、それって本当なの?」
「どうして?」
「多分、それは魔王ディアブよ。」
「魔王?」
「そうよ。最悪の存在よ。この世界を自分のものにしようとしているやつよ。でも、魔王と直接戦うなんて、あなたの母親は何者だったのよ。ギン。」
「まあ、いいじゃないか。」
ギンが拳を握りしめている。やはり、悔しいのだろう。