サワイシティーの温泉宿
僕達は温泉の街サワイシティーにやってきた。温泉にも浸からず街を散策していると、不思議な魔道具の露店があった。そこに老婆がいたのだが、老婆に言われるまま指輪を3つ購入した。ふと振り返ってみると、信じられないことに老婆も露店もなくなっていた。そして、再び街を歩いた後、僕達は宿屋に戻った。宿屋ではすでに夕食の準備が整っていた。
「美味しそうですね。シン様。」
「なんか品数が多いよね。ギンもマギーも食べきれるの?」
「食べきれないかも。」
3人が席について食事を始めた。以前、学園祭で作った料理と比べるとどれも薄味だ。今一つパンチがない。そこで、僕は空間収納から調味料を取り出して、料理にかけて食べた。すると、ギンが声をかけてきた。
「シン様。私も使っていいですか?」
「いいよ。」
マギーは不思議そうに見ていたが、興味を持ったようで聞いてきた。
「シン。それって何?」
「魔法の調味料さ。マギーも使ってごらん。」
マギーが僕の取り出した調味料を料理にかけて一口食べた。
「な、何なの?!めちゃくちゃ美味しいじゃん!」
マギーの声を聞いて何かあったのかと思ったらしく女将と店の主人がやってきた。
「お客さん。何かありましたか?」
するとマギーが口の中がいっぱいにもかかわらず答えた。
「な、なんで、も、クチャクチャ、ないから。」
すると主人が聞いてきた。
「お客さん。これ何なんですか?すごくいい香りがするんだが。」
「ああ、すみません。これ、僕が作った調味料なんです。」
「えっ、君が?」
「はい。」
「ちょっと味見していいかい?」
「はい。」
店の主人と女将さんが手に垂らして舐めてみた。
「美味しい!すごく美味しいわ~!」
「ああ、物凄くうまい!お客さん、この調味料の作り方を教えてくれないか?謝礼はいくらでもするから。」
「別に構いませんけど。」
翌日、僕達は街の市場に行った。調味料を作るのに必要な材料をそろえるためだ。
「シン様。こうして食材を買い出しに来ると学園のみんなを思い出します。」
「そうだね。メアリーもミーアも元気にしてるかな~?」
「まだ、数か月しか経ってないのにすごく懐かしく感じます。」
僕とギンが話しているのを、マギーはそれとなく聞いているようだった。
「こんなに材料が必要なんだ~。」
「そうさ。何種類も作るからね。」
「でも、私にすればあの宿の料理もおいしかったわよ。ただ、シンが出した調味料が異常なのよ。」
「そうかもね。」
その後、宿に戻って厨房で買ってきた食材を広げて出した。すると宿の主人が感心したように言った。
「すごい種類だな。」
「作ってみたい料理もありましたから。」
「そうかい。なら、調味料の作り方を教えてくれるかい。」
僕は主人と女将さんに調味料の作り方を教えながら、調味料を揃えていった。
「なるほどな~。卵のこんな利用方法があるとは思わなかったぞ!それに、まさかトマトを煮込むなんてそんな発想はどこにもないな。どうして、シン君は知っているんだい?」
「学園の先生が言うには、東の大陸のジパンの調理方法だと聞いてます。」
「そうか、君はどこかの学園に通っていたのか?」
「はい。僕とギンは隣国のアルベル王国のオリント学園にいました。」
「なるほどな~。」
数種類の調味料が完成した。今度はそれを使った料理を始める。僕が作ったのはホーンラビットの肉を使ったハンバルグと肉鶏を使った揚げ鶏、それに卵を使ってオムライを作った。
「食べてみてもいいかい?」
「はい。」
女将さんと主人が口に運んだ。
「う、うまい!何なんだこれは?!」
「僕の創作料理ですよ。お口に合ってよかったです。」
「シン君。この料理をうちの宿でも出していいかい?」
「もちろんですよ。」
後ろから忍び足でマギーが料理に近づいていく。ギンが気が付いたようで後ろからマギーの襟首をつかんだ。
「いいよ。ギン。マギー。君も食べてごらん。」
「やったー!」
マギーがハンバルグを一口食べた。
「美味しい!これめちゃくちゃ美味しいわ!」
一口のはずが全部食べてしまった。
「あっ、ごめん。全部食べちゃった!」
ハッハッハッ
なんか申し訳なさそうにするマギーが子どもっぽくてすごく可愛かった。その後、僕達は宿の温泉に入った。当然、僕は一人だ。隣の女湯から声が聞こえてくる。
「ギンってシンのことが好きなんでしょ?」
「なにをいきなり!」
「まっ、確かにシンは美少年だし、優しいし、いいんじゃない。でも、彼からは神聖なものを感じるのよね~。不思議だわ~。なんか懐かしいのよ。」
マギーは話しながら気になったようでギンの胸をチラチラ見ている。
「何見てるの?」
「べ、別に羨ましいなんて思ってないんだからね!」
「なんのこと?もしかして、胸のことを言ってるの?大丈夫よ。シン様は女性を胸で判断なんかしないから。」
「なんで私がシンのことをに気にしないといけないのよ!」
「だって、マギーもシン様のこと好きなんでしょ?」
「好きか嫌いかって言われれば、そりゃ、好きよ。」
「やっぱりね。もっと自分の正直になった方がいいんじゃない。」
「うるさいわね~!ギンだって一緒でしょ!」
なんかのぼせてきた。僕は風呂から上がって部屋でくつろいでいた。すると、2人がにぎやかに話しながら戻ってきた。
「さっぱりして気持ちよかったです。シン様。」
声のする方を見るとそこには濡れた髪のギンとマギーがいた。なんか、胸がドキドキする。
“なんなんだ!この感覚は!”