次の街ベラミックシティーへ
僕とギンとシンジの3人は誘拐されたマルコの救出に代官館まで行った。そこで、代官と盗賊達100人を捕まえて身ぐるみをはいだ後、ハイオークの巣の前に置き去りにした。その後、代官達がどうなったかは知らない。再び代官館に転移で戻ると、ギンジが立ったままの状態でいた。
「ギンジさん!ギンジさん!」
「ああ、シン殿。俺はどうしたんだ?気を失っていたのか?」
そして、目の前を見てまた驚いた。
「代官と盗賊達は一体どうしたんだ?」
「さっき、地獄に連れて行きましたから。」
「まっさか!——— 本当なのか?」
「冗談ですよ。でも、もうこの街に戻ってくることはありませんから。」
「そ、そうか。シン殿が言うのであれば間違いなさそうだな。」
それから僕達3人は宿屋『ファミリーハウス』に戻った。お腹がペコペコだったので、遅い夕飯を食べて自分達の部屋に戻った。
「良かったんですか?」
「あの程度ならね。だって、2人のことはなにもばれなかったでしょ。」
「そうですが。」
「なんか疲れちゃったよ。寝ようよ。」
「はい。」
その日は『クリーン』もかけずにそのまま寝てしまった。
翌朝、僕達が食堂に行くとマルコが走ってやってきた。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん。ありがとう。お兄ちゃん達って、すごく強いんだね!」
「マルコ君。このことは秘密にしてくれよ!」
「うん。わかった!」
すると女将さんとギンジさんもやってきた。
「シン殿。ギン殿。本当にありがとう。感謝する。」
「別にいいですけど、なるべく昨日見たことは内緒にしてくださいね。」
「どうしてだ?」
するとギンが言った。
「私もシン様も目立つのが好きではありませんので。」
「そうか。わかった。なら、秘密にしておこう。」
朝食を食べ終わった僕達は冒険者ギルドに向かった。パリスに報告するためだ。
「マスター!シン君とギンさんが来てますが。」
「入ってくれ。」
僕とギンが部屋に入ると机の上に大きな袋が置かれていた。
「これは?」
「お前達なんだろ?」
「なにがですか?」
「惚けるなよ。この街の大掃除をしてくれたのはシンとギンの仕業だろ!」
僕は素直に頷いた。
「そうですよ。彼らはギンジさんのところのマルコ君を誘拐しましたからね。」
「それで、あいつらはどうなったんだ?」
「森のハイオークの餌になってもらいました。」
「それは本当か?」
「ええ。」
すると、パリスがしみじみと言ってきた。
「やっぱり、アルベル王国の英雄だけのことはあるな。」
「やめてください。パリスさん。その件は・・・」
「ああ、わかっているさ。秘密なんだろ!それより、これは街からの報酬だ。受け取ってくれ。」
「ありがとうございます。では、遠慮なくいただきます。」
僕は袋の中身も確認せず、そのまま魔法袋に入れるふりをして空間収納に仕舞った。
「おいおい、シン。俺の前で隠す必要はないぞ。空間収納が使えるんだろ?」
「バレてましたか。」
「当然だ。これでもSランク冒険者だからな。ハッハッハッ」
パリスはSランクだったんだと初めて知った。もしかしたら、最初にあった時から僕達のことをある程度気付いていたのかもしれない。
「それで、これから2人はどうするんだい?」
「ええ。このナルシア王国の王都に行ってみようと思います。」
「王都カサンドルにか。だが、気を付けた方がいいぞ。この国は貴族達が何やら不穏な動きをしているようだからな。」
「そうなんですか?」
「ああ、あの代官の父親ザクロス侯爵の一派が勢力を伸ばしているようだからな。」
「もしかして、この国にエルフ族やドワーフ族、獣人族がいないのと関係してます?」
「そうだな。俺もよく知らんが、その可能性はあるかもな。」
僕とギンは冒険者ギルドを出た後、次の街に向かうことにした。次の街に向かって歩いている途中で、僕はふと気になることがあったのでギンに聞いた。
「ギンに聞きたいんだけど。」
「なんですか?」
「もしかして、僕って成長してる?なんか、魔力も以前よりも大きくなってる気がするんだ~。それに、最近はなんかふわふわする感じがあるんだよね~。」
「私はフェンリルですからよくわかりませんが、人族特有の成長期ではないですか?」
「そうなのかな~。」
なんか自分の身体が自分であって、自分でないように感じることがあるのだ。気のせいかもしれない。
そんな漠然としたことを考えていると後ろから馬車がやってきた。どうやら荷台に野菜を運んでいるようだ。
「おい、兄さん。馬車に乗っていくかい?安くしとくよ!」
どうやら野菜を売りに行くついでに、人を乗せて小銭を稼いでいるようだ。
「お前さん達はどこまで行くのかね?」
「王都カサンドルまでですけど。」
「そりゃ大分長旅だな~。」
「この先にも街があるんですよね?」
「あるよ。ベラミックシティーだ。わしもそこに野菜を売りに行くのさ。」
「そうなんですか~。」
僕とギンは荷台に乗せてもらった。ゴトゴトと揺られているうちに睡魔が襲ってきた。そして、いつの間にか寝てしまったようで、気が付いたらギンに膝枕してもらっていた。
「あっ、ごめん。」
「いいですよ。シン様はお疲れのようですから。」
すると、農家の主人が声をかけてきた。
「そろそろ到着するぞ!」




