悪者退治!
僕達が泊っている宿屋の一人息子マルコが誘拐された。僕が魔力感知で調べると、どうやら代官館の隣の建物にいるようだった。そこで、僕達3人は代官館に向かって走った。代官館の前まで来ると、暗闇を照らすように松明がぼうぼうと焚かれていた。
「来たか!丁度いい。シンとかいうやつも一緒だな!好都合だ。」
目の前には100人近い男達がいた。朝に襲撃してきた者達もいる。先ほど、僕とギンを勧誘してきた者達もいた。恐らく盗賊なのだろう。すると、一番奥から身なりのいい貴族風の男が現れた。
「お前がシンか!私の言うことを聞いていれば良かったものを。」
「子どもを返してもらおうか?」
ギンジが大声で怒鳴った。
「なぜ、私がお前の言うことを聞かねばならん。平民の分際で!私の父はこの国の侯爵だ!お前らを殺してもどうにでもなるんだよ!」
だんだん頭に血が上ってきた。僕の限界も近いようだ。すると、ギンから念話が入った。
“シン様。マルコは無事です。今、保護しました。”
“ありがとう。ギン。”
「ギンジさん。もう大丈夫ですよ。マルコ君はギンが保護しましたから。」
僕の言葉を聞いて代官が怒り始めた。
「何をふざけたことを言ってるんだ!おい、人質を連れてこい!」
数人が隣の倉庫に向かった。
「ギャー」
「グワ—」
倉庫に向かった男達が片手を失って、代官の前を転げまわっている。
「な、な、なんだ~?」
そこにギンが現れた。どうやら転移でマルコ君を母親に預けて来たようだ。
「お、お前らは何者だ~?」
「お前達に関係ないだろ!」
「こいつらを皆殺しにしろ!」
100人近くいる男達が、僕達3人に襲い掛かってきた。僕とギンは余裕だが、さすがにギンジには100人相手は荷が重い。
「ギンジさん。下がっていてくれる?」
「どうするんだ?」
僕は魔力を開放していく。僕の背後に武神のようなものが現れた。それを見て100人いる盗賊達が驚いている。
「ギン!殺さないで!」
「はい。シン様!」
僕とギンは剣を抜いて盗賊達の中に斬りこんでいく。
「ギャー」
「ウギャー」
「ゴフッ」
100人いた盗賊達が次々と地面に倒れていく。あっという間の出来事だ。残りはおよそ半分だ。
「ギン!下がって!面倒だからまとめて片付けるよ!」
「はい!」
僕は両手を天に向けた。そして、魔法を発動する。
『シャイニングアロー』
すると、空に無数の輝く矢が現れた。僕が手を下すと一気に地面に降り注ぐ。50人いる盗賊達の手や足を次々と射抜いていく。怪我を負った男達は地面を転げまわった。地面は血で真っ赤に染まっている。まさに地獄絵図だ。その中で一人だけ立っているものがいた。代官だ。
「お、お、お前達は何者だ~?何者なんだ~?!」
「ただの冒険者さ。残ってるのはあなただけだね。」
「お、俺を殺せば、父上が黙ってないぞ!お前らはこの国を敵に回すことになるんだぞ!」
「別に構わないさ。そうなったら、この国ごと亡ぼすまでだからね。」
「そ、そんなことができるわけ・・・・・」
これ以上代官の話を聞きたくなかったので、お腹に拳をお見舞いして意識を刈り取った。
「シン殿、ギン殿、お主達は何者なんだ?とても普通の冒険者には思えないが。」
「いいじゃないですか。ギンジさん。無事に解決したんだから。」
「シン様。こいつらはどうしますか?」
ギンが指さしたのは盗賊達だ。すでに意識を失っているものもいた。
「昼間ハイオークがいたよね?ってことはあの辺りに巣があるってことだよ。」
「そうですね。」
「なら、ハイオーク達の餌になってもらおうか。」
「はい。」
僕とギンの会話をギンジはすでに無表情で聞いていた。驚きすぎて、立ったまま意識が飛んだのかもしれない。僕は男達の身ぐるみをはがして、全員を連れてハイオークの巣の前まで転移した。
「わし達をどうする気だ?」
「このままにしておくだけだよ。」
すると、異変に気が付いたのか巣穴から続々とハイオークが出てきた。手には錆びた剣や錆びた斧、木の槍を持っている。
「ま、待ってくれ~!た、助けてくれ~!金ならいくらでもやる!お願いだ!置いてかないでくれ~!」