シン、ギン。騒動に巻き込まれる!
僕とギンは運ばれてきた料理を食べながら聞いていた。どうやら、昼間に僕達が捕まえた連中のことのようだ。それにしても、この街には問題がありそうだった。僕達は食事を終えて部屋に戻った。
「シン様。どうしますか?」
「このままにしてはおけないね。しばらくこの街に滞在しようか。」
「はい。シン様らしいですね。」
「なにが?」
「困っている人を放っておけないんですね。」
「まあね。」
翌朝、僕とギンは朝食をとった後、街の散策をしようと宿屋を出た。すると、いきなり人相の悪い連中に囲まれた。
「お前達、どこから来た?」
「アルベル王国ですけど。」
「ふ~ん。なるほどな。昨日、仲間が大分世話になったそうじゃないか?ちょっと面を貸しな!」
すると、通りかかった人達が、少し離れた場所から気の毒そうな目で僕達の様子を見ていた。すると、異変に気が付いたのか女将さんが宿屋から出てきた。
「ちょっと、あんた達何やってるんだい!お役人を呼ぶよ!」
すると、人相の悪い男たちがニヤニヤ笑いながら言った。
「ああ、呼んでみろ!クソババアが!」
「誰がクソババアだ!人の女房捕まえて!お前ら、許さねぇ!」
店からギンジが出てきた。
「Aランクのギンジさんだ!あんな奴らやっちまえ!」
どうやらギンジは冒険者のようだ。ギンジが出てきたことで見物人達に勇気が出たようだ。
「てめぇ!俺達に逆らうってぇのか?つぶそうと思えば、こんな店簡単につぶせるんだぜ!」
ギンジの顔が真っ赤になっていく。このままではまずい。近くに衛兵がいるが見て見ぬふりをしている。
「どうしますか?シン様。」
「ちょっと懲らしめようかな。」
「ギンジさんは手を出さないでください。この人達は僕とギンに用事があるようですから。」
僕とギンが男達に向かってゆっくり歩いていく。男達は腰の剣を抜いた。
「剣を抜いたね。なら、殺されても文句なしってことでいいんだよね?」
「なにを~!やっちまえ!」
男が僕に斬りかかってきた。だが、隣にいたギンが男の顔に拳をお見舞いする。男はあごの骨が折れたのか、地面でのたうち回っている。
「痛ぇ~!」
その場にいた男達が一斉に斬りかかってきた。僕は動かない。ギンが男達の間を風のように通り抜けていく。
ドタッ バタン
男達が地面に倒れこんだ。そこで、僕は背中の剣を抜いた。そして、剣をリーダーらしき男の目の前に見せた。
「安心して。この剣は痛みを感じないから。すぐにその首をはねてあげるね。」
「ヒィー!」
男達は立ち上がって一目散に逃げて行った。その場にいた人達から歓声が上がった。
「オオ————!」
「よくやったー!」
「なんか胸がスカッとしたわ!」
すると、ギンジが僕達のところに来た。
「ちょっと話がある。中に来てくれるか?」
「はい。」
僕とギンは店の中に入って行った。椅子に座ったところでギンジが聞いてきた。
「もしかして、昨日サボとゴンとデリーを捕まえたのはお前さん達か?」
「そうですよ。」
「そうか?お前さん達は何者だ?」
「アルベル王国から来た冒険者ですけど。」
「ランクは?」
「Dランクですけど。」
「それはあり得ないな!俺もAランクの冒険者だ。お前さん達の強さがどれほどのものかはわかるつもりだ。しかも、まったく本気は出してなかったよな。」
「そうですね。本気出したらこの大陸がなくなっちゃいますから!」
「えっ?!」
「冗談ですよ!ハッハッハッ」
その後、僕とギンは予定通り街の散策を始めた。どうやら僕達は目をつけられたらしく、尾行されているようだった。
「シン様。後ろの連中はどうしますか?」
「別に無視していいよ。それより、冒険者ギルドに行って見ようか?」
「そうですね。ギルドマスターのパリスとかいう男が、善か悪か知っておかなければなりませんものね。」
「そういうこと。」
僕達は冒険者ギルドに向かった。すると、受付のアンナさんが声をかけてきた。
「ああ、シン君にギンさん。やっと来たわね。待っていたのよ。」
「何かあるんですか?」
「あなた達、今朝、街の悪党を懲らしめたんだって~?!冒険者達が噂してたわよ。」
「ああ、その件ですか。降りかかる火の粉を払っただけですよ。」
「Dランクなのに凄いわね~。ギルマスが呼んでるから、2階のギルマスの部屋に行ってちょうだい。」
「わかりました。」




