魔族襲来!
学年別対抗戦の1回戦が終了した。僕の対戦相手のジャックが魔道具を使っていたが、何の問題もなく勝った。そして、僕が4人のところに戻るとケントがやってきた。
「シン。お前、さすがSランクだな!気持ちよかったぜ!なんかすっきりした気分だ!」
だが、メアリーもミーアもギンも心配そうな顔で言った。
「シン君。目立ってもよかったの?」
「今の魔法は凄く目立ったにゃ!」
「シン君。この国を出るつもりじゃないよね?」
僕達の会話をケントが不思議そうに聞いていた。
「今はまだ出ないよ。」
「そう?ならいいけど。」
ケントが我慢できずに聞いてきた。
「どうしたんだ?シンは目立ったらいけないのか?」
「まあね。目立つのは好きじゃないからね。」
「目立ったらこの国を出るって、それおかしいだろ!」
するとギンが一言言った。
「人にはいろんな事情がありますから。」
勝ったにもかかわらず、少し暗い雰囲気になったまま控室に行った。そこに、コトミ先生とクラスのみんながやってきた。
「5人とも凄かったわね!」
「2年生に勝つなんて信じられないわ!」
「この大会が終わったら、みんなで学園祭の打ち上げやろうぜ!」
「なら、料理は僕達が作るんだね。」
「当たり前じゃないか。マイク!そうしなかったら、女子があのウエイトレスの服を着てくれないだろ!」
「シュン君はああいう服が好きなんだ~!なら、今度あの服を私達の制服にしてもいいわよ!」
「そんなことされたら、授業にならなくなるだろ!」
ハッハッハッ
なんか暗くなった僕達の雰囲気が一気に明るくなった。すると、ケントが言った。
「シン。お前達のクラスが羨ましいよ。なんか、みんなが一つって感じだよな~。」
「ケントのクラスだって同じさ。みんなが心の垣根を取り払えることができればね。」
「なら、俺も頑張るよ。このクラスのようにしてみせるさ。」
なんか最初会った時のケントとはまるで別人だ。物凄く嬉しかった。そして、僕らが休憩している間に3年生と4年生の試合が行われ、予想通り4年生が勝利したようだ。コトミ先生が声をかけてきた。
「次は4年生が相手よ。全力で頑張りなさい。」
「はい。」
遠くから物凄く嫌な魔力が近づいてくるのを感じた。
“シン様。何か来ます!”
“ああ、わかってる。相当な魔力だよ!しかも、かなり邪悪なものを感じるよ。”
“みんなを避難させた方がよろしいのでは?”
“多分、学園長も気が付いているはずさ。”
すると、学校内に避難警報が響き渡った。
「生徒の皆さん。緊急事態です。これから学園長先生が闘技場に結界を張ります。急いで闘技場に集合してください!」
「キャー」
「何?何が起こったの?」
生徒達は半ばパニックになっている。僕とギン、それにメアリーとミーア、ケントは試合会場に行った。既に各学年の代表者が集まっていた。学園長は国王陛下と皇后を守っている。空が急に暗くなりはじめ、晴れ渡っていた空が真っ黒な雲で覆われていく。さらに、黒い雲に稲光が見え、風も強くなってきた。まるで嵐が来たかのようだ。
「キャー あれ何?!」
「ワイバーンだ!ワイバーンの群れだ!」
上空にはワイバーンが10匹飛んでいた。だが、ワイバーンが来ただけでこれだけの異変が起こることはない。すると、王都中に声が響き渡った。
「アルベル王国の諸君に告げる!降伏したまへ!我々魔族の支配下にはいるのだ!もし断るのであれば、このワイバーン達が王都オリントの人々を皆殺しにする!1分待ってやる!降伏するなら、王城に白旗を掲げるがよい!」
“どうしますか?シン様!”
“このままだと、王都の人々が殺されるじゃないか!悩んでる暇なんてないさ!”
“ですが、そうなるとこの国にはいられなくなりますよ!”
“それでも、僕はみんなを見殺しにはできないよ!”
“わかりました。”
僕は抑えていた魔力を解放した。すると、僕の身体から眩しい光が四方八方に広がっていく。僕も魔力を全開にするのは初めてだ。何が起こるか想像もつかない。僕の銀色の髪が逆立った。僕の変わっていく姿に、闘技場にいる人々がただただ唖然としている。
「あれって!シン君よね?ミーア!」
「間違いないにゃ!シンにゃ!」
ギンも魔力を全開にしていく。すると、かわいい少女の姿から巨大なフェンリルへと姿が変化した。
「えっ?!ギンさんがフェンリル様?」
「まさか?フェンリル様に姿が変わったにゃ!」
闘技場内の人々のパニックは収まり、ただただ僕とギンを見つめていた。
「ギン!最初にワイバーンを殲滅するよ!」
「はい!」
僕は上空に舞い上がった。ギンは魔法で足場を作りながら上空へと駆け上がっていく。学園長の張った結界を通り抜け、上空を飛んでいるワイバーンに攻撃した。僕は背中の剣を抜いてワイバーンを切り裂いていく。ギンは逃げ惑うワイバーンに鋭い牙で攻撃していた。
「ギャー ギャー」
僕達がワイバーンの討伐に夢中になっていると、闘技場の結界が破壊され、頭から2本の巨大な角を生やした魔族が、背中から出た漆黒の翼をはためかせて闘技場の中央に舞い降りた。
「あいつらの存在は魔力で知っていたさ。かなり厄介な相手だ!だから、お前達には人質になってもらう!」




