学年別対抗戦(2)
いよいよ学年別対抗戦が始まった。1回戦は1年と2年、3年と4年だ。その勝った者同士が決勝で戦うことになっている。まずは1回戦だが、ケント、ミーア、メアリーが勝ったために、すでに1年生の勝利が確定した。
「おいおいおい!2年生は何やってるんだ!1年生に全敗じゃないか!」
「今年の1年生が強すぎるのよ!」
そして、副将戦だ。2年生の方から声が聞こえてきた。どうやらジャックが大声で怒っているようだ。
「どいつもこいつもだらしないな!1年に負けたお前らは、父様に言って今日からしごいてもらうからそのつもりでいろよ!おい!ガンクス!お前は勝てよ!これ以上、俺に恥をかかせるなよ。わかってるな!」
「はい。ジャック様。」
そして、ギンが試合会場に進み出た。みんなギンの美しさに見とれている。対戦相手のガンクスも同じだ。
「私の顔に何かついていますか?」
「いいや。何でもない。可哀そうだが、少し痛い思いをさせてしまうかもしれない。最初に謝っておく。」
「別にいいですよ。本気で来てください。」
どうやら、ガンクスは優しい性格のようだ。
「始め!」
マッシュ先生の掛け声で試合が始まった。だが、ギンは一向に動かない。ガンクスがギンに斬りかかった。だが、ギンはそれを木剣で払いのけるだけだ。何度打ち込んでも同じだ。そして、ガンクスが魔法を唱えた。
『アイスアロー』
すると、ガンクスの周りに氷の矢が出現した。今にもギンめがけて飛んでいこうとしている。だが、ギンが丸く円を描いて氷の矢に向かって息を吹きかけた。
「フ~」
すると、ガンクスの周りにあった氷の矢が消えてしまった。観客は全員が驚いている。一番驚いているのは、魔法を消されたガンクスだ。
「な、何だ?一体何をしたんだ?」
そして、ギンはゆっくりとガンクスに向かって歩き始めた。ガンクスは後ろに下がる。ギンの身体から出ている闘気を感じ取ったのだろう。そして、場外ぎりぎりのところまで来た。もう後ろには下がれない。ギンは右手に持つ剣をゆっくりとガンクスに振り下ろした。ガンクスは全く動けない。まるで金縛りにあったように。
「ドサッ」
「勝者、ギン!」
会場内は何が起こったのかまるで理解できない。
シ―――――ン
そして、いきなり歓声が上がった。
「ワ——————!!!」
「すげぇ!!!」
「あの子、何なの?」
「あんなの初めてよ!」
「ねぇ!あの子、何者?4年生より強いんじゃないの?」
再びギンが下を向いて帰ってきた。
「申し訳ありません。シン様。目立たないようにしようとしたんですが・・・」
「いいよ。仕方ないよ。」
いよいよ僕の出番だ。
「じゃあ、行ってくるね。」
すると、ケントが声をかけてきた。
「シン。勝てよ。相手が公爵の息子であろうと誰であろうと関係ないからな。」
「わかってるよ。」
僕が中央に行くと、ジャックが声をかけてきた。
「どういうことなんだ?シン君。入学試験は銅板が壊れていたんじゃないのか?」
「そうですよ。学園長先生に聞いたでしょ?」
「お前達の強さは異常だ!お前達は何者なんだ?」
「僕らは普通の1年生ですよ。」
「ふざけるな!もういい。俺が本気でお前を叩きのめしてやる。」
ジャックの右手に光るものが見えた。何か魔力を感じる。もしかしたら、ジャックは魔道具を身につけているのかもしれない。
「始め!」
「俺の本気を食らえ!」
ジャックはいきなり魔法を発動した。
『ファイアアロー』
すると、信じられない大きさの炎の矢が数えきれないほど現れた。それが一気に僕に向かって飛んできたのだ。観客席からは悲鳴が聞こえた。
「キャー」
会場内が静まり返っている。誰もが大怪我をした僕を想像していただろう。そして、煙が消えたあと、僕は無傷で立っていた。
「ど、どうして?」
ジャックは相当焦っている。
「もう、終りなの?もっと、攻撃してきてもいいよ。」
「ふざけるな!」
ジャックが魔法を放とうとした瞬間、僕はジャックの手にはめられている魔道具に魔力を送った。すると、魔道具は多すぎる魔力に耐えられなかったのか割れてしまった。
「バリッ」
割れた魔道具が地面に落ちた。それをマッシュ先生が拾い上げた。
「ジャック!これは一体なんだ?説明しろ!」
「そ、そ、それは・・・」
「マッシュ先生。いいですよ。別に。」
「だが、シン。ジャックはこの魔道具を使ってお前に勝とうとしたんだぞ!」
「対戦相手の僕がいいって言ってるんですからいいでしょ。それより早く再開しましょうよ。」
「わかった。」
再び試合が始まった。
「ジャック先輩。さっきの魔法は凄かったですね。僕もお返ししていいですよね。僕は魔道具は使っていませんから。」
僕は右手に炎の玉を出した。赤く小さかった玉がどんどん膨れ上がっていく。観客席にいた人達も相当熱が伝わっているだろう。そして、とうとう巨大な青白い炎の球に変わってしまった。
「これ受け止められますか?」
ジャックの顔色は真っ青だ。地面に座り込んでしまった。
「ま、参った!」
僕は魔法を解除した。観客席には黄色い大歓声が響き渡った。
「オオ——————!!!」
「キャー シンく―――ん!」
「あいつは一体何者なんだ?」
「1年生で有名な子よ。ほら、学園祭で歌ってた子よ。あなたも聴いたでしょ?確かシンて名前だったかな。」
「あの、感動の歌のか?」
「そうよ!キャー!シンく~ん!」
「すげぇやつだな!」