学園祭
学園代表を決める模擬戦が行われ、僕、ギン、メアリー、ミーア、ケントが1年生の代表になった。それから、学園祭の準備が本格的に始まり、女子生徒の衣装や提供する料理についても準備が着々と進められた。さらに数日が過ぎて、いよいよ学園祭の日がやって来た。僕達のレストラン『フレンズ』が開店だ。
「ミーア!すごく良く似合ってるわよ!」
「嬉しいにゃ。」
「ギンさんも色が白いからおとぎ話の中のお姫様みたいだわ。」
「ありがとうございます。メアリー様も可愛いですよ。」
なんかクラスの女子達が一段と華やかに見える。
「シン!女子達を見てみろよ。なんか馬子にも衣裳って感じだよな。」
「すると、シュンの言葉が聞こえたのか、女子生徒達が一斉に反論してきた。」
「何言ってるのよ!もともと私達が可愛いから似合うんでしょ!それより、シュン達の衣装なんて普通のレストランの料理人と同じじゃない!」
「俺達はいいんだよ。どうせ、料理を作るだけで他の生徒達から見えないんだからさ。」
女子生徒達に対して男子生徒は普通の料理人の姿なのだ。なのに、僕だけは何故かタキシードを着せられた。
「キャー シン君!最高!」
「シン様~!」
女子生徒がキャーキャー言っている。だが、男子生徒は不服のようだ。
「なんで、シンばっかりタキシードなんだよ!」
「シン君はボーイだからいいの!文句ばっかり言ってないで、早く料理の用意でもしなさい!」
「わかったよ!」
すると、マイクが言った。
「いいんじゃない。僕達だって似合ってるもん。ねっ、リョウ君!」
「まあな。」
店は交代制にして、全員が学園祭を楽しめるようにしたはずなのに、何故か僕達のクラスにお客が押し寄せた。そのため、休憩時間を取りたくても誰も休めない。
“シン様。さすがにみんな疲れてきたようです。どうしますか?”
“なら、みんなが休憩を取れるようにギンとメアリーとミーアが3人で歌ってくれればいいよね。”
“歌うんですか?”
“そうさ。レストランは2時間休憩ですって告知して、その間、歌を楽しんでください!ってすれば、お客も喜ぶと思うよ。”
“なら、シン様も歌ってくださいね。”
“しょうがないな~。”
僕達はクラスのみんなを休ませるために、レストラン内で歌を披露することを提案した。
「みんなに提案があるんだ。このままだとみんなが学園祭を楽しめないから、レストランを少し休んで歌を楽しんでもらうようにしたいんだけど。」
するとミーアが反応した。
「誰が歌うにゃ!」
「女の子達に歌ってもらえたらいいかな?」
すると、女子生徒が言ってきた。
「当然、シン君も歌うんですよね?」
「そうだね。みんなにだけ迷惑をかけられないもんね。」
「なら、歌いましょうよ。」
「うん。いいよ。」
「私も賛成!」
そこで、教室の前に『中庭でコンサート開催のため休憩時間』と張り紙をして、急遽中庭に簡単なステージを作って、そこで女子生徒達が歌い始めた。学校内にいた生徒達は、何が起こったのかと、廊下からも教室からものぞいている。女子生徒の中でもメアリー、ミーア、ギンの歌声と容姿にみんなが見とれていた。そして、僕が登場すると、会場はクライマックスのようだ。女の子達からの黄色い声援が物凄い。
「では、歌います。聴いてください。」
僕は自然と頭に浮かんだ歌を口ずさんだ。物凄く優しいメロディーだ。歌っている自分でさえも感動してしまった。歌い終わると学校中の生徒達が集まっていた。会場の全員が感動の涙を流している。驚くことに男子生徒までもが感動していた。会場は割れんばかりの黄色い声と拍手と声援ですごいことになっていた。
「キャー」
「シン様—————!!!」
「こっち見て————!!!」
僕がステージから降りると、クラスのみんなが集まってきた。
「シン君、最高だったよ。」
「私、すごい感動しちゃった!」
そんな中、ギンはなにか一人で納得しているようだった。
「シン様。あなたはやっぱり・・・・」
メアリーとミーアも声をかけてきた。
「シン君。すごく良かったよ!感動して泣いちゃったよ!」
「そんなに?」
「でも、その歌聞いたことないにゃ!どこの歌にゃ?」
「この歌は頭の中に自然に流れてきたのを歌っただけだから。」
「えっ—————!即興で作ったの?信じられない!」
「どうなのかな~。もしかしたら、聞いたことがあるのかもしれないけど。」
そんなこんなでクラスの仲間達は休憩時間を取るはずだったのだが、結局誰も休憩時間をとることができなかった。そして、学園祭の2日目と3日目は、1日目の反省を生かして、レストランの営業は11時から13時の時間限定で行い、それ以外の時間は自由行動をすることにした。
「ねぇ、どこを回るの?」
「全部見るにゃー!」
「そうですね。来年以降の参考になるかもしれませんので、賛成です。」
「なら、はじから全部回ろうか?」
僕達は校舎内を回り始めた。なぜか、生徒達が僕のことをじっと見てくる。
「昨日の歌よ。シン君はもう、この学園の有名人になっちゃったと思うわよ。」
「そうなの~?なんか困るんだけど。」
1年生のクラスは人形劇や紙芝居などをやっている。そして、2年生のクラスでは演劇やお化け館、占いコーナーがあった。そして、3年生では、手作りと思われる魔道具を展示しているクラスが沢山あった。どうやら3年生になると付与魔法を習うようだ。最後は4年生。4年生のクラスはほとんどが魔法技術の発表になっている。
4年生のクラスを歩いているとステラ先輩が仲間を引き連れて声をかけてきた。
「おい!シン君!」
「あ、はい。」
ギンもメアリーもミーアも警戒している。
「そんなに警戒しないでくれ。ただ、シン君と話がしたかっただけなんだ。君が昨日歌っていた曲だけど、なんという曲なの?ものすごく感動したよ。」
「あの~。あの曲はふと頭に浮かんだものを歌っただけなので、曲名とか聞かれてもわからないんです。」
「そうなのか~。あの歌は君が即興で歌ったのか?」
「はい。」
ステラ先輩は僕をまじまじと見た。
「この学園に、君のような生徒が入学してくれて本当に良かったよ。私もノース公爵家としてグループなんかを作っているが、本当はこんなことはしたくないのさ。本当は、学園の生徒全員が仲良くなることが理想なんだ。恐らく、ジャックもランボも私と同じ気持ちだろうな。」
すると、隣にいたギンが聞いた。
「なら、どうして?」
「大人達だよ。私達は父親に反論できないのさ。これも公爵家に生まれた宿命なのさ。」
ステラ先輩の顔が曇っていた。




