学年代表を決める模擬戦
いよいよ、学年の代表を決める模擬戦の時が来た。最初はミーアだ。ミーアが試合の場所に向かって行った。続々と各クラスの代表もあつまる。そして、試合開始の合図だ。どのクラスも男子が代表になっている。当然、女子一人のミーアが最初に狙われた。
「ウォーリャー」
ミーアはヒョイと避ける。そして、後ろから男子生徒のお尻を蹴飛ばした。
「あっちに行くにゃ!」
お尻を蹴られた生徒はたまらず場外に出る。その後もミーアを狙う男子生徒達が後を絶たない。だが、ミーアは持ち前の俊敏な動きで他の生徒を翻弄している。次第に、生徒が一人減り、二人減りと人数が少なくなってきた。残ったのはミーアともう一人Gクラスの男子だけだ。
「お前、すごい身体能力だな~!」
「当然にゃ~!今日のために訓練したにゃ!」
「俺だって同じさ!絶対、学年代表になるんだからな!」
「行くにゃ!」
ミーアが木剣で斬りつける。さすがに代表だけあって、ミーアの剣を受け止めた。だが、ミーアが剣の力を抜くと、対戦相手の生徒は大きく前のめりになった。そこを背中に一撃だ。
「勝者、ミーア!」
パチパチパチ・・・・
まず一人目の代表はミーアに決まりだ。そして、次はBグループの試合だ。Bグループは一転して女子生徒が中心だった。
『ファイアボール』
他のクラスの女子生徒が放った魔法が、メアリーに向かって飛んできた。メアリーがそれを避けると、後ろにいた女子学生に直撃した。女子生徒は担架で運ばれていく。
「やったわね。お返しよ!」
『ファイアアロー』
メアリーの頭上に炎の矢が何本も現れた。ファイアボールを放った生徒は恐怖で顔面蒼白状態だ。メアリーは構わず魔法を放った。すると、試合会場全体が土埃に包まれ、それが収まると残っていた生徒達は全員場外に脱出していた。
「勝者、メアリー!」
パチパチパチ・・・・・
そして、Cグループの試合だ。ここにはシュンとケントがいる。僕はシュンの戦いは以前に見たことがあるが、ケントの実力は全く知らない。Aランク冒険者のサムの息子だ。弱いはずがない。そして、いよいよ試合開始だ。
「始め!」
全員が入り乱れて混戦模様だ。意外にもシュンが頑張っている。何度か木剣で叩かれそうになっているが、よろけながらも間一髪のところでかわしている。
「あっぶなー!お返しだ!」
「グハッ」
それに対して、ケントは余裕だ。
「それがお前達の全力か?!古戸もじゃねえんだから、本気でかかってこいや!」
そして、最後にシュンとケントとものすごく体の大きな男子生徒が残った。
「お前、確かCクラスだよな?」
「ああ、そうだ。」
「あの巨体は少し厄介だ。俺と共闘しないか?」
「俺もそう思っていたさ。」
シュンとケントで残った男子生徒に攻撃を仕掛けた。
「行くぜ!」
「おお!」
シュンが右下から攻撃を仕掛ける。ケントは左上からだ。身体の大きな男子生徒はシュンの攻撃は何とか防いだが、ケントの攻撃は避けられなかった。
「2人がかりとは卑怯じゃないか!」
「それを言うなら、お前の身体のでかさだって卑怯だろ!」
いかに体が大きくても、2人が相手では分が悪い。身体の大きな男子生徒は、場外へと追い出された。そして、シュンとケントが向き合っている。
「ハーハー 俺は絶対に代表になるんだ!シンのように女の子達からモテるためにはな!」
「そうか。シンのようにか。なるほどな。不純な動機だが、嫌いじゃないぜ。その考え。」
先に動いたのはシュンだ。シュンが木剣でカイトの足元を狙って攻撃した。だが、ケントはジャンプしてそれを避けて、疲れからよろけているシュンを場外に突き落とした。
「勝者、ケント!」
これで、ニーア、メアリー、ケントと順調に勝ち上がっている。残るはギンと僕だけだ。
“シン様どうしますか?わざと負けますか?”
“そうしたいのは山々だけど、そんな雰囲気じゃないよね。”
“なら、勝ってしまってもいいんですね?”
“いいよ。でも、なるべくギリギリを演出してくれよ。”
“畏まりました。”
そして、Dグループの試合が始まった。ギンが地面に手を置いて魔法を発動した。
『アイスグランド』
すると、ギンのいる場所を中心に地面がどんどん凍り始めていく。試合会場にいた男子生徒達は凍らないように逃げ回る。気付けば全員が場外にいた。勝敗が付くまでわずか1分だ。わずか1分で勝敗が決まってしまった。
「勝者、ギン!」
ギンが申し訳なさそうな顔をして僕のところに来た。
「すみません。あれほど弱いとは思いませんでした。」
「まあ、仕方ないよ。」
そして、いよいよ僕の試合だ。試合会場を見ると、男子と女子が半々だった。なんか女子に剣を突き付けるのは気が引ける。そこで、僕は体の大きな男子生徒の陰に隠れた。
「始め!」
試合が始まると、何故か男子生徒が全員僕を狙ってくる。だが、女子生徒は僕を攻撃している男子生徒に襲い掛かった。不意を突かれた男子生徒達にはなすすべがない。
「グワッ」
「ガハッ」
気が付けば、試合会場には僕と女子生徒しか残っていなかった。そして、女子生徒は何故かそのまま場外に出た。僕は戦わずして勝ってしまったのだ。
「勝者、シン!」
僕がみんなのところに戻ると、みんなが何故か厳しい目で睨んでいる。
「どうしたの?ミーア!メアリー!そんな怖い顔しないでよ!ギンまで顔が怖いよ!」
「なんかずるい!シン君、戦ってなかったでしょ?」
「だって、仕方ないじゃん。」
「そうですね。シン様の魅力の勝利ですね。」
なんか2人も納得していた。1年の代表を決める模擬戦も終了して、本格的に学園祭の準備が始まった。料理は男子生徒の役目だ。僕はみんなに調理方法を徹底的に教えた。意外だが、男子生徒はみんな料理が好きなようだった。女子は、全員で衣装づくりだ。傍から見ていると、全員で協力している光景が嬉しくなった。