シンの料理教室
ある日、僕は不思議な夢を見た。その夢に出てきた世界はとても現実世界には思えない。だが、学校もレストランも人々の笑顔であふれていた。逆に、病院や差後に出てきた燃え上がる街は僕の心の衝撃を残した。そして、僕はふと市場に行くと、様々な料理のアイデアが浮かんできた。メアリー、ミーア、ギンに試食してもらうと、ものすごく好評だった。
そして翌日、僕達は学校に行って、学園祭で提供する料理の参考になるようにと、クラスのみんなにも試食してもらうことにした。何故か、そこにコトミ先生もいた。
「じゃあ、用意するね。」
僕は袋から取り出すふりをして、空間収納から次々と料理を出していく。教室内にはものすごくいい匂いが漂い始めた。料理をギン、ミーア、メアリーが並べていく。あまりの量に生徒達が騒ぎ始めた。
「ねぇ。あの袋の中にこんなに料理が入るの?」
「それはないわ。あの袋って何かしらね?」
するとコトミ先生が説明した。
「シン君のあの袋は魔法袋よ。でも、あんな高価なものをどうしてシン君が持っているのかしらね?」
「先生。どのくらい高価なんですか?」
「そうね。中に入る量によって違うけど、最低でも白金貨2枚はするわよ。」
「えっ————!」
「確かシンって平民だよな~。」
「うん。両親もいないって言ってたよ。」
みんなんの会話が聞こえていたので、僕は作り話をすることにした。
「ああ、この袋ね。これは父親の形見なんだ。他には何もなかったんだけどね。」
「そうだったんだー。」
コトミ先生は何か怪しんでいる様子だったが、それを見たメアリーが話を逸らすかのようにみんなに言った。
「温かいうちに食べてみて!昨日ミーアとギンさんと食べたけど、気絶するほど美味しいわよ。早くしないとなくなっちゃうよ。」
すると、生徒達もコトミ先生までもが必死で料理を取り始めた。そして一口食べて、感動の声が聞こえてきた。
「美味しい!これ、ものすごく美味しいわー!」
「こっちの鶏肉の料理も最高よ!」
「何言ってるんだよ!これを食べてみろよ!この炒めてあるやつなんか止まらなくなるぜ!」
すると、コトミ先生が言ってきた。
「シン君。この料理をどこで覚えたの?」
「なんか、急に記憶の中から出てきたんです。」
「もしかしたら、シン君の両親は東の大陸のジパン出身だったのかもしれないわね?」
「どうしてですか?」
「私が冒険者をしていた時に、ジパンに行ったことがあるのよ。マッシュ先生も私と同じパーティーだったのよ。そこで、同じような料理を食べたことがあるわ。」
「えっ—————!コトミ先生って冒険者だったんですか~?」
「しかもマッシュ先生と同じパーティーって、もしかして付き合ってるんですか?」
「まあね。そうよ。」
すると、普段は無口なクルテが残念そうに言った。
「それ、本当ですか?俺、悲しいよ~!俺のマドンナのコトミ先生が筋肉バカのマッシュ先生と付き合ってたなんて~!」
「おい、クルテ!まずいぞ!マッシュ先生に聞かれたら特別授業になるぞ!」
「やばい!」
クルテが慌てて口に手を当てた。
ハッハッハッ・・・・
なんか教室内が和んだ雰囲気になった。でも、コトミ先生の言ったことが気になった。僕が夢で見たあの世界はジパンなのかもしれない。
「料理はこれで決定ね。それで、こっちにあるのは何かな~?」
女子生徒が指さした先には僕が作った調味料があった。
「それが料理をおいしくする調味料だよ。」
「これもシン君が作ったの?」
「そうだよ。」
すると女の子達が僕の周りに集まってきた。
「ねぇ、シン君。作り方教えてくれる?良かったら私の部屋でもいいわよ。」
「ダメよ!シン君は私の部屋で教えてもらうんだから!」
僕が困っているとギンが止めに入った。
「女子寮に男子生徒は入れません!そうですよね?コトミ先生!」
「ええ、そ、そうね。」
「なら、学園の調理室で教えてもらいましょうよ。」
「賛成!」
結局、時間のある時に僕は料理教室の先生をすることになった。コトミ先生が乗り気なのはなぜだろうか。
その2日後、学園の代表を決める模擬戦の日が来た。各クラスで選ばれた代表が一人ずつA~Eのグループに入る。そして、グループごとにバトルロワイヤル方式で代表を決めていく。Aグループにミーア、Bにはメアリー、Cにはシュン、Dにギン、僕はEに入った。
「シン!」
後ろから声をかけられた。見ると、そこにはケントがいた。
「お前はどのグループだ。僕はEだよ。」
「よかったー。俺はCだ。お前と同じグループに入ったら代表にはなれないからな。」
「そんなことないと思うけどね。試合は運もあるし。」
「お前の場合は運と何とかいうレベルじゃないんだよ。」
そんな話をしていると集合の合図がかかった。僕達は全員が闘技場に集まった。そして、ルールの説明があり、いよいよ試合が始まる。
「なら行って来るにゃ!」
「頑張って!ミーア。」
「余裕にゃ!」