不思議な夢の世界
翌日学校に行くと、学年代表を決める模擬戦の日程表と組み合わせが書かれていた。同じクラスのメンバーは戦わないように配慮されていた。つまり、僕達5人全員が学年代表になるチャンスがあるってことだ。
「良かったわー。シン君やギンさんと戦わないで済みそうで。」
「確かにそうにゃ。シンやギンと1回戦で当たったら、敗退決定にゃ!助かったにゃ!」
他のクラスのメンバーが僕達の会話を聞いていたようだ。なんか睨まれているのが分かった。
「教室に行こうか。」
僕達はスタスタと教室に行った。教室内ではすでに学園祭の準備が始まっていた。学園祭が終わるまでは、午前の座学はない。それに、午後の授業も模擬戦参加者だけが自主訓練をすることになっている。
「みんな、おはよう。遅くなってごめん。」
「いいよ。模擬店の方は任せて!それより、5人は模擬戦の方で頑張ってね。」
なんかいい人達ばかりだ。
そして、数日が経った日の夜、僕は不思議な夢を見た。鉄の鳥が空を飛び、鉄の箱が地面を走っている。建物は天までと届くと思われるほど高いものがある。人々はせわしく道路を行き来している。
“ここはどこだろう?”
“以前、あなたが住んでいた世界よ。”
僕の頭に女性の声が聞こえた。
“どういうこと?”
“あなたは生まれ変わったのよ。”
“あなたは誰?”
“私のことはどうでもいいわ。”
“生まれ変わったって、どうして?”
“修行よ。これがあなたの修行なの。”
なんか意味が分からない。僕は他の世界からこの世界に生まれ変わった?何のために?修行?どういうことだろう?もう、頭の中がぐちゃぐちゃだ。すると、不思議なことに僕は1軒の家の中に入って行った。なんかやけに懐かしい。同時に、ものすごい頭痛だ。
“痛っ!”
頭の中にいろんな情報が流れ込んできた。
“ここどこだろう?”
最初に目に飛び込んできたのは学校のようだ。男子生徒がみんな同じ服を着ている。女子は女子でみんな同じ服装だ。でも、みんな生き生きしているのが伝わってくる。建物の外では、運動している人達がいた。なんか球を蹴ったり、投げたりしている。楽しそうだ。
“痛っ”
目の前の景色が変化した。何かいい匂いがしてくる。周りを見ると、お客らしき人達が椅子に座って、料理をおいしそうに食べている。どうやらレストランのようだ。テーブルの上にある料理はどれも見たことのないものばかりだが、すごく美味しそうだ。
“痛っ”
今度は体にあちこちに布を巻いた人たちがいる。どうやら、けが人が大勢いるようだ。恐らく病院なのだろう。何か管のようなものを通して、体の中に液体を流し込んいる人達もいた。薬かもしれない。
“痛っ”
僕の目の前には真っ赤な炎で燃え上がる街が見えた。空にはさっき見たのとは違う鉄の鳥がたくさん飛んでいる。その鳥が、鉄の卵を地上に落としている。地上は逃げ惑う人々であふれていた。
“や、やめてくれー!!!”
僕は目が覚めた。額も体も汗びっしょりだ。ベッドも汗で濡れていた。
“夢か?!でも、なんだったんだろう?”
翌日は学校が休みだったので、4人で街に出かけた。すると、何故かわからないが、どうしても市場に行きたくなった。
「ねぇ。市場に行かないか?」
「どうしたの?」
「急に行きたくなったんだよ。」
「シン。お腹が空いてるにゃ?」
「違うけど。なんか行ってみたいんだよ。」
「シン様が行きたいならお供します。」
僕達は市場に向かった。市場にはたくさんの店があって、大勢の人達で賑わっていた。人をかき分けて歩いていると、様々な食材があった。僕は頭に浮かんだものをつくるために、要な食材を片端から購入して行った。
「シン君。それライでしょ?家畜の飼料よ。そんなもの何に使うの?」
「まあ、見ててよ。」
すると、ニーアが鼻をつまんだ。
「この臭い。強烈にゃー。このガルも使うにゃか~?」
「そうさ。」
僕の横でギンが不思議そうに見ている。そして、すべての食材の購入を終えた僕達は学園に戻った。休日のため、食堂は締まっている。コトミ先生に許可を取って、キッチンを使わせてもらった。
「何作るのよ~?」
「いいから見ててよ。」
僕は不思議と頭に浮かんだものを、魔法も利用しながら次々と作っていった。そして、何種類かの調味料が完成した。次に料理だ。作ったばかりの調味料を利用して調理を始めた。
「さあ、完成したよ。」
目の前にはいくつも料理が並んでいる。
「順に食べてみて。それから感想を聞かせて欲しいんだけど。」
「わかったわよ。」
「もう我慢できないにゃー!」
「シン様の作られたものは、すべて美味しいに決まってますから。」
3人が料理を口に運んだ。次の瞬間、感動の声が聞こえた。
「美味しい!これ、すっごく美味しいわ!なにこれ?」
「こっちも美味しいにゃ!この香り食欲がそそられるにゃ!最高にゃー!」
「美味しいです!シン様!でも、どこで知ったんですか?」
そこで、僕は夢の話を少しだけした。
「昨日変な夢を見てさ。その夢の中でいろんな料理が出てきたんだよ。そしたら、自然とアイデアが浮かんでくるようになったんだよね。」
「さすがはシン様です。」
「因みにこの調味料だけど、この卵の料理にかかっているのがケップ。この柔らかくて熱い野菜入りのパンのような物にかかっている白いのがマヨ、茶色のものがソスさ。」
「この酸っぱいのは?」
「それはオスだね。」
「変な名前ね。」
「なら、こっちの茶色のものはなんですか?」
「ああ、それはムラサキだね。」
「なんか砂糖と塩、ペップ以外にこんなにたくさんの調味料があるなんて信じられない!シン君!クラスのみんなもびっくりするわよ。」
「そうかな~?」
「なんかシンの株がまた上がりそうにゃ!」
「いいえ。これ以上は困ります。シン様は脇が甘いところがありますから!」