本の予言
担任のコトミ先生から学園祭のことについて説明があった。学園内のすべてのクラスで行事を企画するのが決まりのようだ。僕達のクラスではどうやらレストランを開くようだ。そして、学園祭の終了直後に学園別の模擬戦が行われる。そのためには、各学園で5人の選抜メンバーを選ばなければならない。さらに、その学年代表になるためには、クラスの代表にならなくてはいけない。なぜか、僕とギンは無条件でクラスの代表になってしまったが、残りの3枠をメアリーとミーア、さらに男子生徒4人で争うことになった。そして、クラス代表を決めるための模擬戦を行うため、闘技場に続々と生徒達がやってきた。立候補した男子生徒達もやる気満々だ。
「絶対に俺が代表になる!」
「いいや。俺だな。」
「もしかして、シュン君は代表になってシン君のように女の子に騒がれたいだけでしょ!」
「お前だってそうだろ!マイク!」
「僕は別にそんなことないけど。ただ、ギンさんと一緒にいたいだけだから。」
そこに先生がやってきた。
「では、これからクラス代表を決める模擬戦を始めます。剣も魔法も使って結構ですが、魔法の直接攻撃は禁止します。いいですね?」
「はい。」
「では、組み合わせを決めましょう。このくじを引いてください。」
立候補した人達全員がくじを引いた。ミーアとクルテ、マイクとシュン、メアリーとリョウで戦うことになった。勝った方がそのまま代表だ。
「では、ミーアさんとクルテ君。中央に来て!」
2人が木剣を持って中央に歩いていく。
「始め!」
ミーアがいきなり動いた。結構早い。恐らく足に身体強化をしているのだろう。クルテは全く反応できていない。ミーアが木剣をクルテの腹に叩きこんだ。
「グハッ」
堪らずクルテは地面にうずくまってしまった。
「勝者、ミーアさん。」
みんなも呆気に取られている。ミーアの一方的な勝利だった。男子生徒のクルテが何もさせてもらえなかったのだから、みんなが驚くのも無理はない。
「ねぇ、今、ミーアの動き全部見えた?」
「少しだけ見えたけど、凄く速かったよね。」
「もしかしたら、今まで実力を隠してたんじゃないの?」
「そうかもね。」
女子生徒達がこそこそと話をしていた。そして、次はマイクとシュンだ。どうやら2人は互角のようだ。なかなか決着がつかない。だが、シュンが足で地面の砂をマイクに向けて蹴り上げた。思わずマイクが顔を背けた瞬間に、シュンの木剣がマイクの肩に当たった。
「そこまで!勝者、シュン君!」
「卑怯だよ!シュン君。」
「勝負に卑怯も何もないさ。戦争だったらマイクは死んでるぜ!」
「そうだけどさー。」
そしていよいよメアリーとリョウだ。どちらもすごく怖い顔をしている。なんか睨み合いだ。
「始め!」
リョウがメアリーに斬りかかった。だが、メアリーはそれを上手に左右に受け流している。そして、リョウの体勢が崩れた瞬間、メアリーの一撃がリョウの左肩に直撃した。
ドサッ
リョウは完全に気を失っている。
「勝者、メアリーさん!」
僕は急いでリョウのところに行った。肩を触って確認したが、骨は折れていないようだった。そこで、リョウを背中から抱きかかえるようにして力を入れた。すると、リョウが目を開けた。
「お、俺、負けたのか?」
「ああ。そうさ。」
「そうか~。」
リョウは残念そうにしていた。周りで見ていた女子生徒がキャーキャー言っている。
「ねぇ、見た?今、シン君がリョウ君を抱きしめてたよね?」
「違うわよ。後ろから支えてただけでしょ?」
「どっちでも同じよ。私もシン君に支えられたいな~!」
「無理に決まってるでしょ!」
「どうしてよ?」
「だってシン君はいつもギンさんといるじゃない?」
「もしかして、あの2人って付き合ってるのかな~。」
すると、我慢できなかったのか、ギンが女子生徒のところに行った。
「私とシン様は子どもの頃からの幼馴染です。そういう関係じゃありませんから。誤解しないでください。シン様に迷惑ですから。」
なんかギンの勢いに負けたらしく、女子生徒達がしょぼくれてしまった。このままではクラスの雰囲気が悪くなってしまう。僕は女子生徒達の前に行った。
「みんな、ありがとう。学園祭を一緒に成功させようね。」
僕の言葉が女子生徒達には効くようだ。全員が元気を取り戻していた。そして、クラスの代表が決まった。僕、ギン、メアリー、ミーア、シュンの5人だ。
「あ~あ。なんか今日は疲れたわ~。訓練休みたいんだけど!」
「私も疲れたにゃ。シン。今日は休みにしたいにゃ。」
「わかったよ。なら、今日は休みにしようか。」
「なら、放課後何するの?」
「今日は部屋でのんびりするさ。」
そして、その日は各自の部屋で休むことにした。僕は部屋に戻って、久しぶりに空間収納から本を取り出した。すると、いつの間にか本の内容が変化していた。内容を確認してみると、以前はこの世界のことや魔法のことが書かれていたが、今は預言的なことが書かれていた。不吉な予言だ。近い将来この世界に争いが起き、大勢の人達が犠牲になるようだ。その争いは、大陸を越え、すべての種族を巻き込んで起こるらしい。
「この本は一体なんなんだ?どうして、僕に知らせるんだ?僕に何をしろってことなんだ?」
ものすごく不安に感じた僕は、ギンを念話で呼んだ。そして、ギンに本を見せた。
「シン様。これは7大神様からの啓示じゃないでしょうか?」
「どういうこと?」
「シン様にこの世界の争いを防ぐように言っているとしか思えません。」
「僕にかい?」
「そうです。シン様が特別な力を与えられているのも、神々の意志ではないでしょうか?」
「何のために?」
「それはわかりません。ですが、争いが起こることを事前にシン様に伝えたってことは、神々に試されているんじゃないでしょうか?」
「なんかギンに言われて、僕もそんな感じがしてきたよ。でも、僕って何者なんだ?」
「わかりません。ですが、最初にあった時から、シン様には懐かしさを感じました。」
「よくわかんないや。」
僕の不安を感じ取ったのか、ギンが後ろから抱き着いてきた。
「大丈夫です。シン様。私はこれからもずっとシン様とともにいますから。」
「ありがとう。ギン。」




