学園祭って何するの?
メアリーとミーアに初の実践訓練をさせるために、王都の北の森まで行った。数種類の魔物を討伐した後、僕達は王都に戻ることにしたが、ミーアもメアリーも歩くのは限界のようだった。そこで、僕はみんなを連れて転移魔法で王都のすぐ近くまで帰ってきたのだが、2人が感動してしまった。
“転移はちょっとやりすぎではないですか?”
“怒らないでよ。だって、メアリーもミーアも大変そうだったんだもん。”
“シン様はあの2人を甘やかしすぎです。”
“確かにね。でも、今回は勘弁してあげて。”
“わかりました。シン様がいいのであれば、結構です。”
ギンに言われて思った。少しやりすぎたかもしれない。反省するばかりだ。王都に戻った僕達は冒険者ギルドに向かった。
「どうだった?レッドボアがいたでしょ?」
「ええ、いましたよ。」
「また、空間収納に仕舞ってきたのね。」
「はい。」
「なら、裏に来てくれる?」
裏の解体場に行って、ホーンラビットやグランドスネイク、ガラガラスネイクにレッドボアの死骸を出した。
「他にもあるんですけど。」
「なら、出してくれる?」
僕はギンと一緒に魔物の森で狩った魔物を出し始めた。
「今日もすごい数ね?一体どこで討伐してるの?」
「僕の故郷ですよ。」
「シン君の故郷?」
「そうですよ。クチマシティーって知ってます?」
「ええ、知ってるわよ。ナザル伯爵の領地でしょ?」
「その先にある森ですよ。」
「もしかして、魔物の巣窟って言われているあの森のこと?」
「そうですよ。」
「シン君とギンさんが強いのも納得だわ。」
僕達は今日討伐した魔物の報酬だけもらって、残りは後日ということになった。そして、学園に戻った後、それぞれの部屋に帰って休んだ。翌日学校に行くと、担任のコトミ先生から重大発表があった。来月に学園祭があるらしい。全学年の全クラスで何かしらの催しを企画しなければならない。さらに、最終日は学年対抗の模擬戦があるようだ。
「うちのクラスは何にするの?」
すると、クラスメイトの女子達がキャーキャー言いながら先生に言った。
「先生!演劇がいいと思います。主役の王子はシン君で、お姫様は私がやりま~す。」
「ちょっと、ベリル!あんた何言ってるよ!」
「そうよ!一人だけずるいわよ!」
すると男子生徒が黙っていない。
「女の子が多いクラスなんだから、もっと華やかな催しがあるだろ?」
「華やかな催しって何よ?」
「例えばダンスとかさー!」
「何言ってるのよ!私達はいいけど、あなた達の出番がないじゃない!」
女の子が多くて、男子生徒も活躍できる催しって何があるのだろうかと真剣に考えた。すると、ミーアが提案してきた。
「飲み物や食べ物を売るのがいいにゃー!料理は男子生徒に任せて、私達はウエイトレスになるにゃ!」
「ミーア!それいいかも!」
すると、クラスの女子達も男子達も納得したようだ。せっかくだからといって、ウエイトレスの服は可愛いものを作ることになった。男子の服は適当にそろえるようだ。そして、次に模擬戦に誰が出るのか、クラスの代表者を決めることになった。当然だが、クラスメイト達は入学試験の結果を信じ切っている。なので全員が僕を推薦してきた。
“いいんですか?シン様。”
“だって、しょうがないじゃん。”
“でも、どうするんですか?絶対に目立ちますよ!”
“適当にやって負けるさ!”
“そうですね。”
学園の授業の内容は非常に濃い。だから、1年が2年に勝ったり、3年が4年に勝つことは考えられないのだ。ただ、1年の中でどうやって代表を決めるのだろうか。そんなことを考えていると、コトミ先生が説明を始めた。
「皆さん。誤解しているようですけど、各クラスから5人が出るんですよ。最初に各学年で代表者の5人を決めるんです。ですから、このクラスからも5人に出てもらいます。」
「えっ————!そうなんだ————!」
そこで、まずはクラスの中で代表を5人決めることになった。僕とギンは別格ということで最初から選ばれた。残り3人だ。立候補したのはメアリーとミーア、それに男子生徒のリョウ、シュン、マイク、クルテの4人だ。
「では、残りの3人を決めるのに模擬戦を行います。午後から闘技場にクラス全員で集合してください。」
午前中の座学が終わって、僕達はいつものように食堂に向かった。そこに、ケントがやってきた。
「シン。君も代表になったんだろ?」
「まあね。」
「ならギンもか?」
「そうですけど。」
「やっぱりな。俺も代表になったぜ。今回に関しては仲間だ。一緒に貴族、いや、他の学年をやっつけようぜ!」
なんかケントが少し変わった気がする。もしかしたら、何かあったのかもしれないと思って聞いてみた。
「ケント!なんか以前と違う気がするんだけど。」
「そうか?俺は変わってないけどな。」
「いいや。やっぱり変わったよ。何かあったの?」
ケントはかなり考えていた。そして、意を決したように言ってきた。
「実は、親父なんだけどな。親父は昔近衛兵だったらしいんだ。その時の同僚が剣術担当のマッシュ先生なんだ。俺が貴族達に反発してることをマッシュ先生から聞いたようで、親父に叱られたんだよ。だから、俺は平民グループから抜けたんだ。」
「そうだったのか~。でも、今のケントの方がなんか生き生きとした顔をしてるよ。」
「そうか~?」
ケントも交えて一緒に昼食をとることになった。
「ありがとう。ケント。」
「なにが?」
「僕のことを皆に黙ってくれていただろ。」
「別に黙っていたというより、忘れていただけかな。」
なんか苦しい言い訳だが、そこがケントらしいと思った。そして、昼食後に僕達は闘技場に向かった。
「ミーア!絶対に代表になるわよ!」
「当然にゃ!」




