メアリーとミーアの実践訓練
メアリーとミーアの訓練を始めてから大分時間が経った。2人はすでに魔力循環ができるようになっていて、身体の動きも、剣さばきも、魔法もある程度できるようになってきた。そこで、ギルドで冒険者パーティー『リバティハウス』として依頼を受けることにした。そして、僕達は北の森を目指して王都から外に出た。
「シン君。10㎞は遠いわよ。どうするの?」
「私は余裕にゃ!走るのは得意にゃ!」
「そうだな~。訓練の一環で足に身体強化をかけて走っていこうか。」
「了解にゃ!」
僕達は身体強化をかけて走った。僕もギンも余裕だが、意外にもミーアがかなりきつそうだ。
「私、こんなに体力ないとは思わなかったにゃ!」
「もう少しよ。ミーア。」
ミーアはメアリーに励まされて再度走り始めた。そして、目的の森の入口に到着した。
「いいかい?ここからは魔力を薄く広げて魔物を感知ながら進むよ。」
「ちょ、ちょっと待って欲しいにゃ!まずは水を飲むにゃ!」
「そうね。私ものどが渇いたわ。」
僕は空間収納から水筒を取り出した。それをミーアに渡した。ミーアが飲んで、メアリーが飲んで、ギンに回った。そうなると最後は僕の番だ。
「あっ!シン君がギンさんと間接キスした!ずるい!その水筒貸してよ!」
なんか僕が飲んだ後の水筒をミーアとメアリーが取り合っている。
「そろそろ行くよ!」
するとメアリーが感慨深げに言った。
「わかったわ。でも良かったわ。シン君に魔力の使い方を教えておいてもらって。そうでなかったら、こんなに早くここまでこれなかったもの。」
「確かにそうにゃ!シンが言う通りにゃ!魔力の循環ができなかったら何もできないにゃ!」
「当然です。シン様は正しいことしか言いませんから!」
なんか僕のことなのにギンが胸を張って答えている。森の中に入って行くと、意外に魔物が多い。ホーンラビットや大きな蛇の魔物であるグランドスネイク、それにガラガラスネイクがいた。
「ついでだからホーンラビットも狩るよ。」
「うん。」
「そうだ!2人に行っておくけど、森の中では火魔法は使わないでね。」
「わかってるにゃ!」
「わかったわ。」
僕とミーアでホーンラビットを狩ることにして、ギンとメアリーがグランドスネイクとガラガラスネイクを討伐することにした。
「待つにゃー!ちょこまかとにげるにゃー!」
ミーアはホーンラビットを追い回している。だが、ホーンラビットの動きが早くてなかなか近寄れない。見かねた僕はミーアに声をかけた。
「ミーア!僕がホーンラビットの動きを止めるから、後は任せたよ。」
「了解にゃ!」
僕は魔法を発動した。
『アンチリバティー』
すると、いきなりホーンラビットの動きが遅くなった。こうなると討伐するのは簡単だ。ミーアが剣で突き刺して仕留めた。メアリー達を見てみると、ギンが魔法を発動して、地面に囲いを作り、逃げ場のないグランドスネイクをメアリーが高くジャンプして上から剣で頭を切り落としていた。ガラガラスネイクはギンが一瞬で頭を切り落としていた。
「やったわね。ギンさん。」
「楽勝です。」
僕はホーンラビットとグランドスネイク、ガラガラスネイクを空間収納に仕舞った。
「でも、シンがいると便利にゃ!」
「どうして?」
「普通の冒険者達は魔物を討伐した後、台車で魔物を運ぶにゃ。でも、シンは空間収納に仕舞って運べるにゃ。」
確かに僕の魔法はすごく便利な気がする。
「シン様。」
「ああ、わかってるよ。ギン。」
草の影から覗いてみると、そこには3mぐらいの大きさのレッドボアがいた。物凄く鋭い牙が口元に2本あった。
「メアリーとミーアだけで倒してもらうよ。」
「シン様。彼女達だけでは、まだ荷が重いような気がします。」
「大丈夫さ。ねっ!メアリー!ミーア!」
「が、頑張るにゃ!」
「私もよ。」
2人を見ると恐怖からか足が震えていた。
「二人とも体が震えているよ!」
「大丈夫にゃ!武者震いにゃ!」
「最初は体全体に身体強化をかけてごらん。それから、剣を振るときは手に、素早く動くときは足に瞬時に魔力を流すんだ。いいね?」
「わかったわ。」
僕は念のために、2人がケガをしないように2人の周りに結界を張った。恐らく、2人は気づいていないだろう。
「優しいんですね。シン様は。」
「まあね。」
最初にメアリーがレッドボアの目の前に光魔法を発動した。いきなり光の球が現れてレッドボアは動揺したようだ。しかも、眩しさに充てられて目がよく見えていない。そこを、ミーアが剣で斬りこんだ。
ガッキン
レッドボアの鋭い牙で防がれた。今度はレッドボアが鋭い牙でメアリーに襲い掛かった。そこをミーアが魔法で攻撃する。
『真空斬』
すると、レッドボアの足から血が流れ、レッドボアは地面に大きく転んだ。
「いまだ!」
僕の言葉でメアリーとミーアが同時に剣で攻撃した。そして、2人の剣はレッドボアの胴体に深く突き刺さった。
「グギャー ブヒャー」
レッドボアは息絶えていた。
「すごいよ。よく頑張ったね。」
僕は2人の頭を撫でた。僕には見えなかったが、2人は真っ赤な顔をしてにやけていた様だ。
「シン君のおかげよ。」
「もっともっと強くなるにゃ!」
僕はレッドボアを空間収納に仕舞って、冒険者ギルドに帰ることにした。
「もしかして、また走るの?」
「私も疲れたにゃ!」
「しかたないな~。なら、僕の近くにきて。」
2人が僕の近くに来た。そこで僕は全員で北門の近くまで転移した。メアリーとミーアにとっては初めての転移だ。いきなり景色が変わって驚いていた。
「な、何が起こったの?」
「えっ?!どうしてここにいるにゃ?」
「転移魔法だよ。疲れてるんでしょ。」
「もしかして、シン君がやったの?」
「そうさ。」
「転移魔法って古代には使えた人もいるらしいけど、今は誰も使えないのよ。」
「そうなの?」
「そうよ。宮廷魔術師だって使えないわよ!」
「やっぱりシンはただものじゃないにゃ!」