僕の剣は神剣?!
メアリーとミーアの訓練を終えた後、僕達は王都の散策をすることにした。すでに、僕も王都にきていろんな場所を歩いている。そういえば、メアリーの武器をまだ購入していないことを思い出した。
「なア、メアリーの武器を買いに行かないか?」
「本当!本当にいいの?」
「いいさ。僕が選んであげるよ。」
僕達は大通りの武器屋に行った。以前行ったことのあるドワーフ族の店主の店だ。
「ここだよ。メアリー。」
「すごいわー!欲しいものがいっぱいあるわ!どれにしようかなー?」
「私もこの店でこの剣を買ったにゃ!すごくよく切れるにゃ!」
すると店の奥から店主が出てきた。
「おお。以前来た新人冒険者か。どうだ?少しはランクが上がったか?」
「ええ。まあ。」
「そっちは猫獣人のお嬢ちゃんじゃないか。どうだ?剣の調子は?」
「バッチりにゃ!」
「そうだろうさ。俺の作ったものは一流だからな!」
メアリーが必死になって探している。その棚の上には、以前僕が欲しいと思った剣がまだ飾られていた。
「おじさん。その剣をもう一度見せてくれますか?」
「お前、失礼だな。俺はおじさんじゃねぇぞ!ゴンドだ。ゴンドさんと呼ばんか。」
「すみません。ゴンドさん。」
ゴンドが僕に渡しながら説明してきた。
「この剣はな~、ミスリル製の超一級品なんだ。だが、あまりに高額だからいまだに売れ残ってるんだ!早く金を稼いで、買ってくれんか。アッハッハッ」
「ならこれください。」
「えっ?!お前、今何と言った?」
「だから、これを売ってください。」
「お前、金はあるのか?」
「ありますよ。」
僕はポケットからお金を出すふりをして、空間収納から白金貨1枚を取り出した。
「お、お前、何者だ?どっかの貴族なのか?」
「違いますよ。僕は平民の冒険者です。今は学園に通ってますけどね。」
「本当にか?」
「はい。」
すると、ゴンドが僕の顔をまじまじと見た。そして、3人を見渡した。
「お前さん。もしかして、一気にSランクになったというあの少年なのか?」
すでに僕の情報が洩れているようだ。あの場にいた冒険者達に口止めしなかったことを後悔した。
「まあ、いいじゃないですか?」
「よかねぇ。お前さん、名前は何て言うんだ?」
「シンですよ。」
「やっぱりな!わかった。お前さんにこの剣を売ろう。」
「すみません。使うのは僕じゃないんですよ。こっちの子なんです。」
「なんだと~!」
僕がミスリル製の剣を使うと思っていたゴンドは、真っ赤な顔をして怒った。そこで、僕は説明を始めた。
「この子は今からすごく強くなります。恐らく、近い将来、Aランクにはなるでしょう。だから、この剣を持たせてあげたいんです。」
すると、Sランクになった僕の言葉を信じたのか、ゴンドが納得してくれたようだ。逆に僕の剣の心配をし始めた。
「別にわしは売れればいいんじゃが。だが、お前さんの剣はどうするんじゃ?Sランク冒険者なら、討伐する魔物もSランクのものになるだろうが。普通の剣じゃもたないぞ!」
「僕は自分の剣があるから大丈夫だよ。」
「なら、お前さんの剣を見せてみな。わしが鑑定してやろうじゃないか。」
僕は背中の剣をゴンドに見せた。ゴンドの顔が見る見るうちに青白くなっていく。
「お、お、お前さん。シンとか言ったな。この剣をどこで手に入れたんじゃ?」
「先祖のものですよ。なくなった両親から受け継いだんです。」
ゴンドが僕の顔をまじまじと見た。そして、何も言わなくなった。と思ったら急に僕の手を取って言ってきた。
「わしはドワーフ族じゃ。お前さん達人族と違って長いこと生きてきた。まさか、今日、この日を迎えることができるとは、わしは幸せ者じゃ。」
僕達には何のことかさっぱりわからない。
「一体どうしたんですか?」
「なんでもない。それより、早くこの剣をしまうがいいさ。」
僕は剣をしまって、お金を払って店を出た。僕達がいなくなった後で、ゴンドは独り言を言っていた。
“まさにあの剣は神剣じゃ。神剣を持つあの子はもしかしたら・・・・”
店を出て街の中を歩いているとメアリーが声をかけてきた。
「シン君。この剣、本当にもらってもいいの?」
「いいさ。メアリーのために買ったんだから。」
「でも、これ、すごく高かったじゃない。」
「別にいいよ。以前も言ったと思うけど、僕はあまりお金を使わないから持っていても仕方がないんだ。」
「なら、遠慮なく使わせてもらうわね。」
その様子をギンとミーアが羨ましそうに見ていた。
「わかったよ。なら、ギンとミーアにも買ってあげるよ。でも、今はお金がないから明日冒険者ギルドに行って素材を売ってからだよ。」
「やったにゃー!」
「シン様、私は別に。」
「欲しいんだろ?ギン。正直に言えよ!」
「は、はい!」
それから数か月が経った。学園では何もなく時間が過ぎて行った。メアリーとミーアの訓練も順調に進み、身体強化の魔法だけでなく本人達の適正も判明した。メアリーは光と火に適性があった。ミーアは風と土に適性があった。どうやら僕とギンには特定の適正は存在しないようだ。すべての魔法が使える。彼女達も適正以外の魔法が使えないわけではないが、威力が出ないのだ。
「なんか大分強くなった気がするにゃ!」
「私もよ!」
「なら、今度は魔獣の盗伐を始めようか?実践的な訓練も必要だからね。」
「シン様。彼女達にはまだ早いのでは?」
「大丈夫さ。僕とギンが付いているんだから。」
「そうですね。」
なんかギンは頼りにされていることが嬉しかったようだ。そして翌日、僕達は冒険者ギルドに久しぶりに顔を出して、依頼を受けることにした。
「久しぶりね。みんな。」
「久しぶりです。ミオラさん。」
「今日は何か依頼を受けるのかな?」
「討伐の依頼で何かいいものありませんか?」
「そうね~。シン君とギンさんは大丈夫だと思うけど。他の二人はGランクでしょ?そうなると、『リバティハウス』のパーティーランクはCなのよ。そうね~。レッドボアの盗伐がいいんじゃないかしらね。」
「どの辺りですか?」
「ここから北に10㎞行ったところに森があるのよ。その中にいるらしいわよ。」
「わかりました。紙は持ってこなくていいですか?」
「大丈夫よ。私がはがしておくから。」
「ありがとうございます。」