平民グループのケント
お昼ご飯を食べて少し休憩したら、午後は剣術の授業だ。僕達が闘技場に行くと、思った通りそこにはマッシュがいた。
「今日から剣術の授業を受け持つマッシュだ!よろしくな!じゃあ、早速だがそこの木剣をとって素振りからだ。」
僕とギンもみんなに混ざって素振りを始めた。すると、マッシュが僕のところに来た。そして小声で言ってきた。
「伯爵様から事情は聴いてるぞ。なるべくシンとギンが目立たないようにするつもりだから、安心してくれ。」
「ありがとう。」
なんか物凄く安心した。剣術の授業も何の問題なく終了し、僕達は4人で西の草原に訓練に出かけようとした。その時、校舎の影からナイフが1本飛んできた。僕は咄嗟にそれを2品の指で受け止めてしまった。
パチパチパチ
「お見事!」
校舎の影から一人の男子生徒が姿を見せた。
「危ないじゃないか!」
「君なら余裕で受け止められるだろ!シン君。」
「君は誰だ?」
「僕かい?僕はサムの息子だよ。この学園の1年さ。親父に聞いてるぜ!」
「サムさんの?」
「そうさ。ケントっていうんだ。よろしくな。」
「それで僕に何の用だい?」
「俺達平民のグループに誘おうって思ってさ。」
「悪いけど、僕はグループには入らないよ。」
「そんなこと言っていいのかい?君とギン君が、この国でも数人しかいないSランクの冒険者だってことをばらしても。」
“どうしますか?シン様。始末しますか?”
“ダメだよ。でも、このままじゃまずいな~。”
僕はケントを説得してみることにした。
「ケント。君はどうしてグループに入るんだ?」
「この国は貴族連中がでかい顔して歩いてやがるだろ!実際に金を稼いだり、国を魔物から守っているのは平民なのによ。俺にはそれが我慢ならねぇんだよ!」
「なら、貴族の人達より強くなって、力をつければいいんじゃないか?それに、貴族の中にもナザル伯爵のように国民の幸せのために頑張っている人もいるよ。」
「ああ、それはわかってるさ。すべての貴族が悪いわけじゃないぐらいのことはな。だが、3大公爵家の連中は別だ!あいつらは自分達の権力にだけこだわってやがる。俺には許せねぇんだ!」
僕はこの国の公爵家のことはよく知らない。ただ、昨日と今日あった公爵家の人達はあまり好きになれないのも事実だ。
「ケントはどうしたいんだ?」
「この国を変えるなんていうのは無理だ。だから、せめて学園にいる間だけでも貴族にでかい顔させないようにしたいだけだ。」
すると、メアリーが言った。
「それは違うわ!私も貴族だけど、学園にいる間は平民も貴族も関係ないって学園長先生も言ってたじゃない。クラス分けも学園長先生が貴族達の反対を押しのけて、貴族と平民が混在するようにしたのよ。」
「建前はそうだけどな。でも、実際には3大公爵家の連中が派閥を作っているじゃないか!対抗するには平民が団結するしかないんだ!」
「ケント。君の考えはわかったよ。でも、僕もギンもグループには入らないよ。もし、君が僕のことを言いふらすならそれでもいい。僕は自分のやり方で、この学園を一つにするよ。」
「ふん。勝手にしろ!」
僕達は予定通り西の草原にやってきた。
「メアリーもミーアも魔力の循環はできるようになったかな?」
「うん。でも、少しだけだよ。」
「私もにゃ!」
「なら、意識して指先に魔力を集めてみて。」
本人達は謙遜しているが、結構魔力循環ができるようになっていた。
「いいかい?指先に火をイメージしてごらん。」
ポッ
彼女達の指先に火が付いた。
「そしたら、魔力をたくさん指に集めてみて。」
ボー
結構な火力だ。
「すごい凄い!こんなに強い炎は初めてよ!」
「私もにゃ!」
その後は、水、光と挑戦したところで魔力切れが来た。
「シン君。私もう限界みたい。頭が痛いわ。」
「こっちに来てごらん。」
メアリーが僕のところまでやってきた。僕はメアリーの頭に手を置いて魔法を発動する。
『ヒール』
すると、僕の手から出た光がメアリーを包み込んだ。
「うっそだー!痛いのが治っちゃったよ!」
「私にも魔法をかけて欲しいにゃ!」
ミーアにも魔法をかけた。そして、少し草原で休んだ後、僕達は学園まで帰った。その翌日は、午後が魔法の授業だった。担当は担任のコトミ先生だ。僕達はコトミ先生から魔法の基礎を学んだ。僕と同じように魔力を感じることからのスタートだった。
「なんかシン君に教わっていたから、授業が簡単に感じたわ。」
「良かったよ。でも、今日は放課後魔法の訓練はしないよ。すでに魔力を使ったからね。」
「なら、何するにゃ?」
「街でも散策しようか?」
「やったー!」