3大公爵家からの誘い
メアリーとミーアの剣と魔法の訓練を始めた。最初は魔力を循環させることからスタートだ。それができるようになったら、身体強化や魔法の訓練が始められる。学園に戻りご飯を食べた後、僕は3人と別れて自分の部屋に行こうとした。その時、見知らぬ男子生徒にいきなり声をかけられた。
「君がシンか?俺は2年のジャックだ。君を待っていたんだ。どうだ、俺のグループに入らないか?」
なんか突然話しかけられて、何の話か全く分からない。
「一体何のことですか?グループって言われても何もわからないですよ。」
「知らないのか?学園には4つのグループがあるのさ。平民の集まり、ウエスト公爵家の集まり、ノース公爵家の集まり、イースト公爵家の集まりだ。俺はジャック=イーストさ。つまり、イースト公爵家の人間だ。」
「へ~。そうなんですか~。公爵家って偉いんでしょ?」
「まあな。元々王族と同じ血筋だからな。それで、どうだ?入るのか入らないのか?」
「いきなり言われれても困るんですけど。それに、どうして僕を誘ったんですか?」
「君とギンという少女がずば抜けた魔力を持っていたからさ。入学試験での出来事については、すでに情報が入っているんだよ。君達は俺達のグループにふさわしいと思ったからな。こうして、リーダーの僕が直接勧誘に来たのさ。」
なんか勢力争いに巻き込まれるのは御免だ。
「その件でしたら誤解ですよ。入試の後で、学園長室に呼ばれて測りなおしたら、どうやら入試の時に使用した銅板が壊れてたって、学園長先生が言ってましたよ。」
「そうなのか?」
「学園長先生に聞けばわかりますよ。僕も迷惑しているんですよ。」
「わかった。そういうことなら出直そう。」
ジャックは去っていった。僕は部屋に戻ってギンの部屋に転移すると、ギンがお風呂に入る直前だった。
「あっ!ごめん!」
「別にいいですよ。シン様なら。それより何か用ですよね?」
「話をする前に、何か服を着てくれないか?」
「わかりました。」
ギンが服を着たので先ほどのジャックの件について話始めた。
「そうですか~。なら、学園長にも言っておいた方がよさそうですね。」
「そうだね。明日にでも学園長に話に行くよ。」
「シン様。もしかしたら、学園長も念話ができるんじゃないですか?」
「あっ!そうか!試してみるよ!」
僕は学園長に念話で話しかけた。すると、学園長はびっくりしたようで1オクターブ高い声で返事をしてきた。
“なんだ!シン君か!どうしたんだ?いきなり念話など送って来よって!驚いただろうが!”
“すみません。さっき、ジャックとかいう先輩が来て、自分のグループに入るように言ってきたんです。面倒だったんで、入試の時の銅板は壊れていたということにしたので、もしジャック先輩が聞きに行ったら話を合わせてください。”
“わかった。だが、困ったもんだの~。3大公爵家には!恐らく他の公爵家からも誘いに行くだろうな。断って良いぞ!シン君君もギン君も私が全力で守るから安心するがいいさ。”
“ありがとうございます。”
僕は学園長との念話のやり取りをギンに伝えた。そして、自分の部屋に転移した。
“あ~。なんか今日は疲れたな~。お風呂はもういいや!”
僕は風呂にも入らず体に『クリーン』をかけて寝た。朝方、何か暖かくて柔らかい感触で目が覚めた。ふと隣を見ると、ギンがくっついて寝ていた。
「ギン!」
「あっ!シン様、おはようございます。」
「どうしてギンがここにいるのさ?」
ギンは眠たそうに眼をこすりながら言った。
「実は転移魔法が使えるようになったんです。それで、昔みたいにシン様と一緒に寝たくて。ダメでしたか?」
「いいけどさ~。でも、ギンは女の子なんだよ。もし僕と寝るなら、フェンリルの姿になってよ!」
僕に女の子扱いされたのがよほど嬉しかったのか、僕に抱き着いてきた。
「わかりました。なら、今夜から本来の姿になって寝るようにします。」
そしてギンは自分の部屋にいったん戻っていった。僕は身支度を整えて食堂に向かった。4人で朝食を食べた後、教室に行くと4年生の集団が教室の前にいた。
「何かしらね?」
「わからないにゃー!」
なんか嫌な予感がした。すると、集団の中からグラマーな女性が一人僕に近寄ってきた。
「君がシンか?」
「はい。」
「そっちがギンだな。」
「ええ。そうですけど。」
「私はノース公爵家のステラ=ノースだ。ちょっと話がある。ついてきてくれ。」
「はい。」
僕とギンだけが呼ばれたということは、昨日のジャックと同じ要件なんだろう。校舎の裏に来たところでステラが話しかけてきた。
「率直にいう。私達のグループに入れ!」
「どうしてですか?入学試験の際のことは誤解なんです。昨日もジャック先輩に話しましたけど、魔力測定の銅板が壊れていたんです。学園長先生に聞いてもらえばわかりますよ。」
「そうなのか?」
「はい。職員室に呼ばれて学園長先生の部屋で再度測定したら、僕もギンも100でしたから間違いないですよ。」
「そうか。なら、いい。行くぞ!」
ステラ達は自分達の教室に戻って行った。僕もギンと一緒に教室に戻った。すると、メアリーとミーアが話しかけてきた。
「4年生が何の用事だったの?」
「なんか面倒だけどさ。この学園には4つのグループがあるんだって。平民グループ、ノース公爵家のグループ、ウエスト公爵家のグループ、イースト公爵家のグループらしいよ。」
「もしかして、シン君とギンさんが勧誘されたの?」
「そうだよ。入学試験の際の壊れていた銅板のせいで迷惑なことだよ。」
「壊れてた?」
僕は周りに聞こえるようにわざと大きい声で言った。そして、小さな声でメアリーとミーアにそっと言った。
「そういうことにしておいてくれるかい?」
「了解にゃ!」
そして担任のコトミ先生がやってきた。
「はいはい!席について!始めるわよ!」
午前中の座学は退屈極まりない。そう思っているのは僕だけじゃなさそうだ。メアリーもミーアもウトウトしている。でも、座学が午後でなくてよかった。もし午後だったら、間違いなくこのクラスの全員が寝てしまったことだろう。午前の座学が終了して、4人でお昼ご飯を食べに食堂に行くと、今度は3年生のグループが僕達を待っていた。
「君がシン君かい。」
「はい。」
「ギンさんは誰かな?」
「私です。」
「そうか君がギンさんか。噂通り美男美女だな。君達なら僕のグループにふさわしいよ。僕はランボ=ウエストさ。3つの公爵家の中で最も可憐だと言われてるウエスト公爵家だよ。」
「あの~。勧誘の話なら、ジャック先輩、ステラ先輩にも話しましたが、入試の際の銅板が壊れていただけなんです。学園長先生に聞いてください。」
「それ本当かい?」
すると、珍しくギンが大きな声で言った。
「本当です。だから、迷惑しているんです。」
「そうかい。それは申し訳なかったね。まあ、容姿の点だけで考えれば君達は十分なんだけどね。まっ、いいか。」
ランボは仲間を引き連れて離れて行った。
「ハー 面倒だな~!」
「シン君、大変そうね。」
「こうなるのが嫌だから目立たないようにしているんだけどね。」
「なんかシンの気持ちがわかったにゃ。」
“シン様。あまりに面倒であれば、この地を去りますか?”
“ダメだよ。僕はメアリーとミーアに約束しちゃったからさ。彼女達がそれなりに強くなるまでは我慢するよ。”
“わかりました。”