最終決戦(1)
僕達がアラクネ族達と話をしていると、そこに四天王のリゲルが現れた。無慈悲にアラクネ族を殺そうとした行為にマギーの怒りが爆発した。マギーがリゲルを討伐して僕達のところに戻ってきた。
「あ、あ、あなた様は何者なんですか?神獣のフェンリルや天使を従える人族などありえません。」
赤髪のアラクネが聞いてきた。僕は魔力を解放する。銀髪が逆立ち目は黄金色に輝いている。全身はこの世のものとは思えない神々しい光に包まれていた。
「もしや、神なのですか?」
「いいや。まだ神じゃないよ。修行中だからね。でも、母上からこの地上の平和を託されたんだよ。」
「母とは?」
すると人間の姿に戻っているギンが言った。
「管理神ディーテ様ですよ。シン様はディーテ様とデウス様の子なのです。」
「デウス様とは、もしかして、創造神様ですか?」
「そうさ。この世で父上だけなんだよ。過ちを犯さないのは。それ以外の存在はすべて不完全なのさ。だから、過ちも犯すし罪を犯すこともあると思う。だけど、完全な存在に近づこうと努力することは大切なんじゃないかな。」
するとアラクネ族達が僕に平伏した。
「私どもが間違えておりました。お許しください。」
「大丈夫さ。僕もみんなも修行中なんだから。でも、この間違いをしっかり反省して次につなげる努力は必要だよ。」
「はい。」
「四天王のシリウスが最後に言ったんだ。『魔族が平和に暮らせる世界を作って欲しい』ってね。彼はあなた方と同じように、魔王ディアブが大切な人を殺されたことを知っていたんだ。だから、人族に対して憎しみを持っていたんだと思う。でも、最後に彼は真の平和を求めて死んでいったよ。」
「そうだったんですか。シリウス様が・・・」
「僕は彼の言葉を聞いたんだ。この世界を種族に関係なく、すべての存在が迫害されることがないようにしたいんだ。そのために世界中を回ったんだからさ。」
「そうだったんですか。ならば、我々もシン様のお役に立てるように頑張ります。」
「わかってくれてありがとう。」
その日はマギーが疲れているようだったので、再び魔物の森の家に戻った。
「マギーちゃん。今日は頑張ったよね。」
「そうね。以前は四天王のベガに散々やられたもんね。」
「ギン!忘れていたんだから思い出させないでよ!」
「ギンもマギーもメアリーも見違えるほど強くなったと思うよ。」
「それはそうよ。武神様と魔法神様に修行させてもらったんだもん。」
「確かにあの修行はきつかったもんね。」
そしてその翌日、再び魔王城を目指した。もう、魔王城は目と鼻の先だ。魔王城を取り囲むように強力な魔物達がいた。魔王に操られているのだろう。さらに、その後ろにはトロール族達が控えている。2重の壁があるような状態だ。
「どうするの?」
「1枚ずつ壁を取り除いていこうか。」
「そうですね。」
僕達が戦いに臨もうとしたところにドラクが姿を見せた。
「シン様。私も参戦してよろしいでしょうか?」
「どうしたの?」
「はい。魔物の数も多くいますが、トロール族は厄介です。彼らには再生能力があります。しかも、他の種族と違って魔王に強い忠誠心を持っていますので、恐らく命がけで戦ってくると思います。」
「なら説得は無理そうだね?」
「はい。」
「じゃあ、お願いできるかな。なんかすごい数だからさ。」
「ありがとうございます。」
ドラクとマギーには上空のワイバーンの討伐をお願いした。僕とギンとメアリーは地上の魔物達とトロール族を相手することにした。
「シン様。トロール族はどうしますか?」
「今ドラクさんが言っていた通りさ。説得が難しいなら仕方ないよね。」
「わかりました。では遠慮なく戦わせていただきます。」
全員が魔力を解放する。ドラクとマギーは翼を広げて上空に舞い上がっていく。フェンリルの姿になったギンは魔法で攻撃する。魔物が氷漬けになったところを僕とメアリーが剣で斬り倒していった。大分魔物の数も減ってきた。すると、後ろからトロール族がぞろぞろとやってくる。トロール族には氷魔法は効かないようだ。メアリーが剣で斬ってもすぐに再生してしまう。逆に手に持つ大剣で斬りかかってきた。だが、僕達にとってはあまりにも動きが遅い。
「シン様。トロール族には物理攻撃は効かないようです。」
「2人の剣を貸してくれる?」
「どうするんですか?」
「トロール族が再生できないようにするのさ。」
僕がギンとメアリーの剣に手を触れると2人の剣が虹色に光始めた。
「今度は大丈夫だよ。」
「わかりました。」
ギンとメアリーがトロール族に斬りかかった。僕もマサムネを空間収納にしまい、剣を取り出してトロール族に斬りかかった。
ギャー グワー バタン
トロール族は切られたまま再生せずに絶命していく。再生できないことが分かって逃げ出そうとする者もあらわれた。
「逃がさないわよ!」
『疾風斬』
メアリーの剣がトロールを切り裂いた。ドラクとマギーを見ると順調にワイバーンを討伐している。
「終わったわね。」
目の前には魔物とトロール族の死体があちこちに散らばっていた。そこにドラクとマギーもやってきた。
「シン。終わったわよ。」
「お疲れ様。」
僕達の目の前には魔王城の入り口があった。僕達は全員で魔王城に入って行った。意外にも魔王城は静かだ。魔族の姿もない。そのまま階段を上がって魔王ディアブのいる部屋まで行った。ドアを開けるとそこには玉座に座る魔王ディアブとその脇に控えるアルタイがいた。どちらもすごい魔力だ。
「よくここまでたどり着いたな。シン!」
「招待されたからね。」
「ハッハッハッ 私の話は聞いたようだが、私が本当に憎いのは人族ではないぞ!」
すると、マギーが言った。
「だって人族に大切な人を殺されたんでしょ?」
「ああ、そうさ。大切な女の命を奪った教皇はこの手で殺したさ。だが、私の恨みは消えなかったんだよ。何故だと思う?」
「ディアブ!お前はこの世界を管理する神々を恨んでいるんだろ?」
「その通りだよ!いくら私達がまじめに生きても、魔族というだけで迫害されるんだよ。そんな世界を好きになれるか?私はこの世界を滅ぼして新たな世界を作るのさ。魔族だけが存在する世界をな。」
今度はメアリーが言った。
「そんなこと許されるわけがないでしょ!」
「誰に許しを請う必要があるのだ!私はこの世界のすべてのエネルギーを手にして、今の神々を滅ぼし私自身が神になるのだ。邪魔なものはすべて殺す!たとえ神の子であってもな!わかるよな!シン!」
「話しても無駄なようだね。」
魔王ディアブが玉座を降りてマントを取った。