ハーピー族の村
僕達は魔王城に向かう途中でリザードマンの村に立ち寄った。そこに偶然グリフォンが現れた。メアリーがグリフォンを討伐した後、僕達は再び魔王城に向かったのだが、突然屋で襲われた。犯人はハーピー族達の様だった。傷ついたハーピー族達を治療すると、ハーピー族達は言いがかりをつけてきた。
「嘘をつくな!どうせお前達は俺達の羽や女が目的なんだろう?そうはさせないぞ!」
「誤解だから!どこからそんな情報が出たんだ?」
「うるさい!」
どうやら彼らは聞く耳を持たないようだ。仕方がないので魔法で静かにさせた。
『グラビティー』
するとハーピー族は地面に倒れて起き上がれない。するとマギーが前に出た。
「あんた達を殺すつもりなら初めから助けないわよ!」
「そうよ。それに、あなた達ハーピー族は私の親戚のようなもんだからね。」
「親戚?」
「そうよ。あなた達だって元々は天使族でしょ?」
「そ、そ、それはそうだが。」
ハーピー族達は何を言われているのか理解できていない。
「マギー。メアリー。君達の姿を見せてあげて。そうすれば納得するかもしれないよ。」
「わかったわ。」
2人の身体が光始め、背中から純白の翼が出た。ただ、ハーピー族の翼とは形が違う。ハーピー族は魔素の影響から魔族へとなってしまったのだ。
「お、お前達は?」
「だからメアリーが言ったでしょ!あなた達は私達の親戚だって!」
ここで初めてハーピー族は理解したようだ。僕は彼らの魔法を解除した。
「すまなかった。魔王城からの手配書に、お前達のことは『凶悪な人族』と書いてあったからな。」
「いいんですよ。僕も魔法であなた達を傷つけてしまいましたから、お互い様です。」
すると、ハーピー族達は自分達の村に来るように言ってきた。僕達は言われるまま後をついていくことにした。途中でお互いに自己紹介をした。ハーピー族のリーダーはバルドと名乗った。
「皆さんは何しにこの魔大陸まで来られたんですか?」
ここで僕はイグアが言っていたことを思い出した。確かハーピー族は魔王軍に協力的だったはずだ。正直に伝えてもいいものだろうか。
「すみません。その質問に答える前に聞いてもいいですか?」
「いいですよ。」
「バルドさん達はどうして魔王軍に協力するんですか?」
「簡単なことです。人族が憎いからですよ。太古の時代、我々の祖先は人族に奴隷にされました。女性は性的な暴行を受け、男性は翼をもぎ取られたんです。そんな人族を許せますか?」
バルドの言葉は重かった。長年の恨みや憎しみがそう簡単に取れるものではない。
「バルドさん。あなた方の怒りはわかります。ですから、その時代の人族達のことを許せとは言いません。ですが、今の人族は違いますよ。」
「シン殿。お言葉ですがそんなに簡単に変われるものでしょうか?長年積み重ねてきた伝統や生活習慣、価値観がそんなに簡単に変わるとは思いませんが。」
「そうですね。でも、どの種族もみんな成長段階じゃないんですか?つまり、修行中なんだと思いますよ。時に過ちを犯すことがあるかもしれませんが、それを悔い改めて初めて成長できるんじゃないですか?」
「確かにシン殿の言っていることも一理ありますが、どうしても許せないんです。」
するとマギーが話し始めた。
「バルドさん!私、元々堕天使族なのよ!」
「えつ?!」
「シン達と出会って人々の役に立ちたいと思って世界中を旅したの。人族の国だけじゃないわ。北大陸の獣人族、エルフ族、ドワーフ族、それに竜人族の国や街にも行ったのよ。そしたら、知らないうちに天使族に戻ったの。それってどうしてかな~?」
「ありえない!堕天使族が天使族に戻ったなんて聞いたことがない!」
「なら、この姿はどう?」
マギーが黒い翼を出した。どこからどう見ても堕天使族だ。そして次の瞬間、マギーの身体が光始めて翼が純白になった。明らかに天使族だ。
「し、し、信じられない!」
バルド以外のハーピー族もみんな驚いた。マギーが元の姿に戻った。
「バルドさん。神様達は種族に関係なく、平等に愛を注いでるんだと思いますよ。自分の子ども達が殺しあったり憎しみあったりしてたら悲しくないですか?」
「シン殿。あなたは一体何者なんですか?天使族の二人を従えているなんて!」
そこに、他のハーピー族達がやってきた。
「おい!バルド!そいつらは手配書の人族ではないか?捕まえて来たのか?」
「違うさ。彼らは人族じゃなかったんだ!」
「まあ、いい。早く来い!長老がお待ちかねだ!」
「わかった。すぐに行くよ。」
しばらく歩くと村に着いた。そこには数百人のハーピー族達がいた。その中央に白髪の男性がいた。
「バルド!でかしたぞ!これで、魔王ディアブ様もお喜びになるだろうさ。」
「待ってください。長老。」
「どうしたのじゃ。」
「彼らは人族ではありません。」
「なんじゃと?」
すると、目の前に巨大な光がいくつも現れた。その光がどんどん人型になっていく。
「久しぶりですね。イグール。」
「あなたは精霊女王のソフィア様ではないですか?どうしてここに。」
ソフィア以下7大精霊が僕に片膝をつて挨拶してきた。
「お久しぶりです。シン様。」
「ソフィアさん。その堅苦しい挨拶はやめましょうよ。」
「わかりました。では、立って話をさせていただきます。」
7大精霊達も立ち上がった。サラマンダーは僕にグーパンチをしてきた。彼の挨拶だ。ウンディーネ達女性の大精霊達は僕にまとわりついてくる。
「ちょっと!あなた達!シンが困ってるでしょ!」
「そうよ!マギーちゃんの言う通りだわ!」
するとギンが僕の手を掴んで後ろに引っ張った。その様子をハーピー族達は不思議そうに見ていた。
「ソフィア様。そちらの人族は何者なんですか?」
「イグール!あなたモウロクしたの?あなたも元々天使族の末裔なんだから、その目を開いてよく見なさい。この方がどなたか分かるでしょ?」
イグールが神経を研ぎ澄まして僕に集中させた。すると、僕の身体から溢れ出る黄金色に輝く神のオーラが見えたようだ。
「ま、ま、まさかそのようなことが!」