メアリー!グリフォンを討伐する!
僕達がマギーの父親達がいる村を出て魔王城に向かうと、リザードマンの集落があった。そこで、族長の息子であるイグアにペップの作り方を教えていると村人が血相を変えてやってきた。どうやらグリフォンが湿地帯に現れたようだ。
「イグアさん。グリフォンって結構強い魔獣だよね?僕達が討伐しようか?」
「ありがたい。シン殿。お願いできますか?」
「いいですよ。世話になってるんですから。」
ギン達を見るとニコニコしている。やる気満々のようだ。どうやらグリフォンは湿地帯に集まる魔物を餌にしていた様だが、リザードマン達を襲うようになったらしい。
「誰がやるかくじ引きよ!」
マギーとギンとメアリーがクジ引きを始めた。その様子をイグアが不思議そうに眺めている。解説の必要がありそうだ。
「驚きますよね?グリフォンと言えばかなり強い魔獣ですからね。」
「ええ、彼女達を見てると何か余裕のようですが、皆さんで力を合わせて討伐するんじゃないんですか?」
「まあ、見ててください。」
「はあ。」
どうやら今回はメアリーが勝ったようだ。メアリーが前に出た。
「シン君。ちゃんと見ててよ!」
「ああ、しっかり見てるよ!」
メアリーの身体が光始め、背中に純白の翼が出た。リザードマン達は目を真ん丸にしてみている。メアリーは翼をはためかせて空中に舞い上がりグリフォンの前に出た。グリフォンはメアリーに向けて口から毒を吐くが、メアリーはそれを軽々と避けた。すると、グリフォンは翼をパタパタと始めた。鋭い羽がメアリーに向かって飛んでいく。メアリーが落ち着いた様子で手を前かざすと、不思議とまるで時間が止まったかのように鋭い羽がその場で止まった。そして、今度は手を下に向けると羽はすべて地上に落下した。
グエー ギャー
グリフォンは自分の攻撃がことごとく弾かれて怒っている。
「やはり魔物ね。」
メアリーは体の魔力を高めた。そして魔法を唱える。
『シャイニングビーム』
メアリーの指から眩しい光線が発せられ、その光線がグリフォンの身体を左右2つに切断した。
ギャー ギャ
身体が2つに分かれたグリフォンは地上に落下していく。それを見てメアリーが僕のところに戻って来た。
「どうだった?シン君。」
「すごく良かったよ。」
「そうでしょう。なんかまた強くなった気がするの。身体から力が溢れるのがわかるのよね。」
すると、ギンもマギーも同調する。
「メアリーさんの言ってることよくわかるわ。私もです。」
「私もよ!」
「3人とも力が戻ってるんじゃないのかな~。」
「そうなの?」
「そうさ。」
本当は僕の影響だ。彼女達は僕といる時間が長い。だから、その影響で神力が増しているのだ。
「やはり、シン殿達は神の使徒様なんですね。ありがとうございました。」
その後、グリフォンを回収してみんなで少しずついただいた。グリフォンを食べるのは初めてだが、僕はオークキングやコカトリスの方が美味しいかった気がする。
「シン!このお肉美味しくないよ!どうにかならないの?」
そこで僕は残ったグリフォンの肉を使ってハンブルグと唐揚げを作った。すると、これが大盛況だ。箸の進んでいかなかったリザードマン達もお代わりを注文してきた。そして、あっという間にグリフォンは消費されてしまった。
「やはりシン様ですね。料理の腕も抜群です!」
「シン君はいいお婿さん候補よね。これで、私もギンもマギーも毎日美味しいものが食べられるわよ!」
そんなこんなで広場の食事会は終了となった。
「シン殿達は魔王城までどの道を行きますか?」
「そんなにたくさんあるの?」
「この大陸は広いですからね。何通りか行き方がありますが、ただ東回りは危険ですよ。」
「どうして?」
「ハーピー族が住んでいますから。」
「ハーピー族がどうして危険なの?」
「彼らは魔王軍に協力的ですからね。シン殿達のことがすでに手配書で回っている可能性があります。」
「なら、なおさら東回りで行くよ。ハーピー族とも話してみたいしね。」
「はあ、そうですか~。」
その翌日、僕達は魔王城に向けて出発した。広大な湿地帯を抜けると砂漠地帯となり、そこを通り抜けると今度は山岳地帯へと出た。
「何よ!あの巨大なミミズみたいな魔物は?」
「文句言わないの!マギー!あなた美味しそうに食べてたじゃない。」
「確かに美味しかったけど、見た目が気持ち悪すぎるんだもん。」
「でも、マギーちゃん。ギンさんの言う通りその気持ち悪いものを美味しそうに食べてたじゃないの。」
「シンの料理の腕がよかったからよ!」
そんな話をしていると、いきなり矢が飛んできた。明らかに僕達を狙った攻撃だ。
「魔力感知にかからなかったわ!どこにいるの?」
矢の飛んできた方向に向けて魔法を放った。
『ファイアーバースト』
すると巨大な火の玉が矢の飛んできた方向に飛んで行った。それ以降矢が飛んでくることはなかった。
「行ってみようか?」
「はい。」
僕達が矢の飛んでいた方向に駆け付けると、そこには数人のハーピー族が倒れていた。確認するとまだ生きている。
「メアリー!頼んだよ!」
「うん。」
メアリーが倒れているハーピー族達にパーフェクトヒールをかけた。すると、ゆっくりと目を開けた。
「き、き、貴様ら!殺すなら殺せ!」
男の声で仲間のハーピー族も意識を取り戻したようだ。いきなり身構えた。
「なぜ我らを助けた!俺達を捕まえて捕虜にでもする気か!」
「別に捕虜にするつもりなんかないさ。」
ハーピー族達は顔を見合っている。