帝国軍、魔大陸に向かう!
僕達が古代遺跡を破壊して帝都に向かっているころ、帝都の帝城では大事な会議が行われていた。
「皇帝陛下!古代遺跡が襲撃されました。」
「犯人はどうした?当然捕らえたのだろうな!」
「いいえ。それが兵士達は全滅しまして、古代遺跡が破壊されてしまいました。」
ダン
「よくそのような報告を我にできたな!内務大臣!」
「お許しください!皇帝陛下!現在、その者達を追跡させておりますので!すぐに陛下の前に連れて参ります!」
「内務大臣よ!その言葉に二言はあるまいな。もし違えた場合はどうなるかわかっているだろうな。」
「はい。」
「軍務大臣!ディカルド!」
「ハッ」
「すぐに魔大陸に攻め込むぞ!」
「よろしいのですか?まだ、準備は完全に整っておりませんが。」
「よいのだ。すでに、四天王のベガとシリウスが死んだと情報が来ている。今なら勝てる!すぐに出陣の用意をしろ!」
「ハッ」
そんな状況になっているとも知らずに、僕達は帝都へと向かっていた。
「シン君。皇帝ってどんな人物なのかな~?」
「頭がいい人物だとは思うよ。古代遺跡の出土品に目を付けるぐらいだからね。それに、この国の文明の高さを見ると、相当行動力もあるんじゃないかな~。ただ、どうして彼が軍事力を増強するのか知りたいけどね。」
「シン様。やはり魔族を攻撃するためではないでしょうか?」
すると、マギーが不思議そうに言った。
「でも、どうしてそんなに魔族を敵視するのかな~?」
「マギー。魔族全体が悪いわけじゃないけど、魔族の一部が人族に好戦的なのが原因かもしれないわよ。」
すると、メアリーが何かを疑問に思ったようだ。
「でも、それなら最初から魔大陸に攻めて行けばいいじゃない。どうして、他の国を攻撃する必要があるのかな~?」
ここでドラクさんが姿を見せた。
「シンさん。皇帝が動きました。どうやら魔大陸に攻め込むようです。」
「いよいよだね。」
「はい。」
「シン様は予測していたんですか?」
「まあね。魔族四天王のベガとシリウスがいなくなったんだから絶好のチャンスだよね。それに、古代遺跡が破壊されたと聞いたんだから急ぐ必要ができたんじゃないかな。」
「どういうことよ?」
「さっき、ギンとマギーとメアリーが話していたことだよ。皇帝の狙いさ。多分、皇帝は何かの理由でこの世界を統一したいんだと思うよ。だから、古代遺跡が破壊されたと聞いて焦ったんだよ。」
「この世界を統一するなんてできるわけないわ!」
「それはどうかな。帝国にはこの世界にはない強力な兵器があるし、魔大陸の魔石があれば戦車も飛行船もたくさん作れるよね。」
「確かにシンさんが言う通りです。魔大陸は魔素が濃いですから、魔石が地下資源として大量に埋まっています。」
「シン君。なんとしても止めなきゃ!この世界が壊れちゃうよ!」
「そうだね。でも、魔族が簡単に帝国に負けるとは思えないんだけどね。」
「確かにそうですね。魔族にはまだ四天王のリゲルとアルタイがいます。それに、魔王ディアブは古代竜様に匹敵する強さですから。」
ここでマギーがボソッと言った。
「お父さん達はどうするんだろう?」
「マギー!心配かい?」
「うん。」
「なら、このまま魔大陸に急ごうか?」
「帝都はどうするの?」
「皇帝がいないんじゃ行ってもしょうがないからね。」
「わかったわ。」
僕達は帝都に向かうのをやめて、帝国軍を追いかけることにした。帝国の軍隊はおよそ5万人だ。そんな大群をどうやって魔大陸まで運ぶのだろうかと不思議に思った。
「そろそろ港町よ。帝国兵って5万人もいるんでしょ?宿屋はないから野宿するにしても、どうやって海を渡るのかな~?」
「そうだよね~。マギーちゃんの言う通りだわ。」
「それに、その数の食料をどうやって運ぶのかも知りたいですね?シン様。」
「もしかしたら、空間収納ができる魔法袋が大量にあるんじゃないかな~。」
「つまり、空間魔法が使える人間が帝国軍にいるってことですか?」
「その可能性はあるよね。」
「それなら納得よ。魔族も転移魔法が使えるんだから、人族の中に空間魔法や転移魔法を使える人間がいてもおかしくないもんね。」
「すると、シン君や私達のように転移魔法が使える人がいて、魔大陸まで転移魔法で兵士を連れて行く可能性があるってこと?」
僕達が港町アルトに行くと帝国兵の姿はなかった。その代わり、海に巨大な戦艦が数十隻あった。さらに、開けた平地には巨大な飛行船が数十隻待機していた。
「あれは戦艦だよ。かなり文明の進んだ兵器さ。」
「そんな物まであったのね。」
「でも、シン様。あの船と飛行船だけでは2万人の移動は無理ではないですか?」
「そうだね。やっぱり、転移魔法の魔方陣を使えるものがいると思うよ。」
「厄介ですね。」
僕達が追いつくとすぐに戦艦と飛行船も動き始めた。魔大陸に向かうようだ。
「どうしますか?シン様。」
ギンが僕に声をかけた次の瞬間、街の北側から大きな爆発音がした。そちらを見てみると煙が上がっている。
「何かあったのかな~?」
「行ってみるよ。」
僕達は翼を出して飛翔した。すると、こともあろうか魔物の大群が街を襲っていたのだ。
「まずいな~!みんな、街の人達を助けるよ。」
「はい。」「うん。」「了解!」
時間がもったいないので強力な魔法を使いたいが、そうすると人々に犠牲者が出てしまう。全員が手に武器をもって魔物達に斬りこんだ。
『疾風残』『氷結斬』『光線斬』『真空斬』
何とか魔物達はすべて討伐した。だが、すでに日も暮れかけていて戦艦も飛行船もどこにも見当たらなかった。
「みんな!急いで追いかけるよ!」