カルロの古代遺跡(2)
僕達は宿屋の主人チャーリーに案内してもらって古代遺跡までやってきた。見回りの兵士達に気づかれないように姿を消して中に入ると、古代遺跡の中は階段にも灯りがともされていて歩きやすかった。
「この部屋は何かな~?」
「シン君。あれって窓にあった透明な板でしょ?」
どうやらこの階層はガラスを作る部屋のようだ。見たことのない機械や溶鉱炉のような物があった。
「あそこで作業している人達は冒険者でしょうか?」
「多分ね。」
「なら、銃を持ってる兵士達をどうにかしないといけませんね。」
僕達は姿を消したまま、兵士の意識を刈り取っていく。
グワッ
「おい!どうした?グハッ」
働かせられている冒険者達は何が起こっているのか理解できない。ただただ戸惑っているだけだ。この階層の兵士達は全員意識を刈り取った。そして僕達は姿を見せた。
「えっ?!どこから現れたんだ?」
「魔法で姿を消してただけだよ。それより、みんなを助け出すようにチャーリーさんに依頼されたんだけど。」
「チャーリーに?それはありがたい。」
「やっとここから出られるのか~。」
みんな、どっと疲れが出たようだ。兵士達の武器を取り上げてロープで縛った。そして、冒険者の人達にしばらくここで待っているように言って、さらに奥へと進んでいった。すると、次の部屋は武器の倉庫らしく作られた銃が大量に並べられていた。以前、僕達が見た物もあれば初めて見る物もある。銃の周りには20人ほどの警備兵がいる。再び姿を消して兵士達の意識を刈り取って行った。
「シン。これどうするの?」
「空間収納に仕舞っておくよ。」
僕はそこに積まれている銃をすべて空間収納に仕舞った。そして、兵士達をロープで縛ってさらに先に進んだ。そこでは何やら様々な機械があって、それを冒険者達が動かしている。銃や何かの部品を作っているようだ。冒険者を見張る兵士達もいた。だが、何やら雰囲気がおかしい。
「あいつらも無力化する必要がありそうね。」
「マギー!ちょっと持って!」
「どうしたの?ギン。」
「おかしいわ!」
「何がおかしいの?ギンさん。」
「すでに2つの部屋で兵士を無力化したのに、ここの兵士達が何の準備もしてないなんてことあるかな~?」
「それは、他の部屋のことがまだ知られてないんじゃないの?」
「それはないでしょ!ここは帝国なのよ。通信技術だって進んでるはずよ。」
「なら、罠ってこと?」
「みんなの考えは正しいと思うよ。多分罠だね。」
僕は部屋の中を見渡した。僕達が冒険者だと思っていた人達は、どうやら兵士のようだ。しかも、機械の陰に兵士達が隠れ潜んでいるのが見えた。
「どうしますか?シン様。」
「4人で手分けしようか。念のために自分に結界を張っておいてね。」
「了解よ!」
僕達は姿を見せた。すると、冒険者の振りをしていた兵士達も、陰に隠れていた兵士達も一斉にこちらに銃を向けてきた。そして、隊長の号令で一斉に銃を放ってきた。
バッバッバッバッーン
辺りは銃から出た火薬の煙で白くなって何も見えない。僕達はその隙に兵士達に攻撃を仕掛ける。
ギャー グエー ギャー
辺りには悲鳴が響き渡る。だが、兵士達には何が起こったかわからない。僕達の動きが速すぎて見えていないのだ。仲間が次々に血を流して床に倒れていく。
「どうした?何が起こっているんだ?」
残りが10人ほどになった時、僕達は姿を見せた。
「貴様達は何者だ?」
「平和を求める戦士だよ。」
「ふざけたことを!撃てー!」
バッバッバーン
銃の玉が僕達の結界に弾かれる。兵士達は顔面蒼白状態だ。
「な、なぜだ?」
「無駄だよ。僕達には効かないよ!」
兵士達が腰の剣を抜いて僕達に斬りかかる。それを見て、マギーが剣を一振りした。
『疾風斬』
すると、兵士達の身体が上下2つに分かれた。
「終わったね。奥に行こうか。でも、その前にこれを回収しないとね。」
僕は空間収納に目の前の機械をすべて回収した。さらに奥へと進んでいくと、そこには戦車や飛行船が並んでいた。
「シン!あれはなんなの?」
「ああ、飛行船だよ。」
「あれって空飛ぶの?」
「あんなので攻撃されたら、アルベル王国もまずいんじゃないの?」
「そうだね。多分、あの飛行船には攻撃手段もあるはずだよ。」
「シン様。あれも古代遺跡の発掘品なのでしょうか?」
「間違いないと思うよ。」
すると僕達の前に、先ほどの銃よりも強力そうな武器を持った兵士達が立ちふさがった。
「お前達は只者ではないな。だが、この最新兵器の実験台になってもらうぞ!」
かなり強力そうだ。ギン達の結界だともちこたえられない可能性もある。みんな、ちょっと本気を出した方がよさそうだよ。
「わかったわ。」
ギンの身体が光って神獣のフェンリルになり、マギーもメアリーも背中から純白の翼を出した。そして、僕も魔力を解放する。銀髪が逆立ち瞳が黄金色に変化する。
「お前達は何者なんだ?魔族なのか?」
すると、マギーが大きな声で言った。
「あなた、馬鹿なの?私達は神の使いよ!見ればわかるでしょ!」
すると、兵士達はマギーの言葉で怯んだ。だが、隊長は強気だ。
「お前達!怯むな!我々はホーク帝国の軍人だ!相手が誰であろうと皇帝陛下のために戦うだけだ!撃てー!」
ドッドッドッドーン
『スロー』
僕が手を前に出して魔法を唱えると、目の前に飛んできた砲弾がすべてゆっくりになった。僕達はそれを手で叩き落した。
バッバッバーン
「な、なんだとー!」