宿屋の主人チャーリー
僕達は古代遺跡の街カルロに到着したのだが、その街並みがあまりにも他の街と違っていたため、思わず『地球』という言葉を口にしてしまった。ギン、マギー、メアリーの3人に説明するために魔物の森の家に行ったのだが、そこに管理神ディーテと7大神達が姿を見せた。そして、僕の母が管理神ディーテで父が創造神であるという衝撃的な事実が伝えられた。
僕達はその日は魔物の森の家でゆっくりっ過ごして、その翌日に再びカルロの街にやってきた。
「シン。この街は他の街よりも文明が進んでいるんでしょ?なら、あのレストランに行ってみようよ。もしかしたら、食べ物もシンが知っているものかもしれないし。」
確かにそうだ。街が地球の文明の影響を受けているとしたら、食べ物も同じかもしれない。そうなると、地球からの転生者がいた可能性もある。
「行ってみようか。」
「やったー!」
「もしかして、マギーちゃんは美味しいものがあるかもしれないって思っただけじゃないの?」
「メアリーは鋭いよね。」
「もう付き合いが長いからね。」
僕の隣でギンがニコニコしている。なんとなく、みんな吹っ切れたようだ。レストランの中に入ってみると清潔感があって明るかった。大きめの魔石を利用しているのかもしれない。だが、メニューを眺めても他の街と同じだった。地球にいた時とは全然違っている。
「シン様。どうですか?」
「この世界の他の国と変わらないね。」
「そうですか~。」
注文した料理が運ばれてきたので一口食べてみたが美味しくない。僕の調味料に慣れてしまっているせいか、女性陣の表情が曇っている。
「味も普通ね。」
「期待はずれだったわね。マギーちゃん。」
「シン。何か味付けで使えるものだしてくれる?」
「いいけど、料理を作った人に怒られるよ。」
「大丈夫よ。隠れてやるから。」
僕はマギーにペップを渡した。どうやらギンもメアリーも使いたいようだ。みんなでペップをまわして肉にかけて食べた。
「古代遺跡ってどの辺りかな~?」
マギーの何気ない言葉に他の客達が反応した。どうやら、古代遺跡のことを人前で話すのはタブーのようだ。店員の動きがおかしい。しばらくして、僕達が店を出ると兵士達がやってきた。
「お前達はどこから来たんだ?」
「アルベル王国ですけど。」
「何の用事があるんだ?」
「観光ですよ。」
「観光?」
すると、上官らしき男が僕達にいきなり銃を突き付けてきた。
「お前達ちょっと来い!話がある!」
僕達は兵士達に銃を突きつけられて、兵士達が大勢いる場所に連行された。すると、奥から隊長らしき人物が出てきた。髭面の強面の男性だ。
「お前達、観光に来たというのは本当か?」
「はい。」
「帝国に観光するような場所はないと思うがな。」
「いいえ。この道路や建物なんかは他の街では見られませんよ。多分、この国の皇帝陛下は素晴らしい人物なんでしょうね。それに、街の人々の幸せそうな顔をみれば、いかにこの国の治安がいいかわかりますよ。兵士の皆さんが頑張ってるからでしょうね。」
「そうか。この国はそんなにすごいのか?まあ、俺達がいれば犯罪を犯そうなんて輩は出てこないがな。ハッハッハッハッ」
「そうですよね。ハッハッハッハッ」
「それにしても、お前は目の付け所がいいな。褒めてやるぞ!」
「いいえ。いろんな国を回ってきましたから、この国の良さがわかるんですよ。他の国では、道路はまだ土ですし、窓も木を使っています。あのような透き通ったものはありませんよ。」
僕が帝国を褒めちぎったせいか、隊長はどうやら気分を良くしたようだ。
「そうかそうか。おい!こいつらは本当に観光のようだ。開放してやれ!」
「ハッ」
僕達はすぐに解放された。そして、宿屋を探すために冒険者ギルドに向かった。
「シン様!」
「わかってるよ。2人いるかな?」
「そうね。バレバレなんだけどね。どうせ見張るなら、わからないようにしないとだめじゃないの?」
「マギーちゃん。彼らはあれでバレてないつもりなんだから。」
「ばっかみたい!」
冒険者ギルドに入ると他の国のギルドと少し様子が違う。本来ギルドはどの国にも属さない中立の存在だ。だが、この国のギルドは違うようだった。ギルド内に兵士達の姿があったのだ。
「みんな、言動に気を付けて。後、冒険者カードを僕に貸してくれるかい?」
「うん。」
僕はみんなの冒険者カードを預かって、ランクをSからBへと変えた。
「何の用かしら?」
「観光で来てるんですけど、宿屋を紹介してくれませんか?」
「あなた!何考えてるの?ここは冒険者ギルドよ!観光案内所じゃないんだから!用事がなければ帰ってちょうだい!」
なんか、カードを偽造するまでもなかった。僕達がギルドから出ようとすると、冒険者風の男性が声をかけてきた。
「お前ら、宿を探しているのか?なら、いい宿知ってるぜ!ついてこいや!」
僕は魔眼で男を見た。見た目やしゃべり方とは裏腹に真面目な男のようだった。
「お前達はどこから来たんだ?」
「アルベル王国ですけど。そりゃまたどえらい遠くから来たもんだな~。この国に観光できるようなところはあるのか?」
「ええ、さっきも兵士の方に答えたんですけど、この国の文明は進んでいますからね。参考になることが沢山あるんですよ。」
「そうかね~。表向きはそう見えるのかもしれねぇな。」
「違うんですか?」
「まあな。ついたぞ!ここだ!」
僕達が宿屋に入って行くと、奥から女将さんが出てきた。そして、男に向かって言った。
「チャーリー!あんた、どこに行ってたのよ!仕事もしないで!」
「怒るなよ。マーサ。お客を連れてきたんだからよ~。」
「あら、いらっしゃい。4人かい?」
「ええ、そうですけど。」
「なら、4部屋だね?」
「はい。」
「うちの宿は朝晩2食付きで1人銀貨6枚だよ。」
僕達はお金を支払った。どうやら、チャーリーさんはこの宿屋の主人のようだ。もしかしたら、ギルドにいたのは宿を探している冒険者を連れてくることが目的だったのかもしれない。
「シン様。チャーリーという人物は、宿屋の主人にしては動きに無駄がないように見えるのですが。」
「多分、AランクかSランクの冒険者だろうね。」
「やはりそうですか。」
僕達は部屋に案内された後、僕の部屋に集まって話をした。