ついにシンの正体が明かされる!
ホーク帝国に到着した僕達は、最初に古代遺跡に向かうことにして1階の食堂に降りて行った。食堂には銃火器を携帯した兵士達も来ていたが、さすがに兵士達はお酒は飲んでいない。すると、酔っぱらった平民が兵士達に声をかけた。
「お前さん達もご苦労なこったな~!ヒック、魔族なんぞいるわけがないのにな~!ヒック、こんな田舎の街まで派遣されて大変だ~!ヒック」
仲間達が慌てて酔っぱらった男を注意した。
「おい!お前ちょっと飲みすぎだぞ!」
「すみませんね~。後で注意しておきますんで!」
兵士達は酔っ払い達を無視していた。恐らく、心の中では酔っ払いの言ったことが思い当たるのだろう。僕達は夕食を食べた後、それぞれの部屋で休んだ。そして翌日早朝、僕達は古代遺跡に向けて出発した。
それから何の問題もなく旅は順調だ。どの街を見ても他の国と大きな違いはない。ただ、銃火器を持った兵士達がどの街にもいた。そして、やっと古代遺跡のある街カルロに到着したのだが、街の様子を見て僕達は驚いた。街並みが今までとは全く違っていたのだ。5階建ての建物もあってしかもガラス窓だ。何よりも驚いたのは道路が土ではなく、石がひき詰められて平らになっていた。
「これって、まるで地球だよな~。」
僕はカルロの街があまりにも他の街と違いすぎたので、思わず口にしてしまった。すると、マギーが反応した。
「えっ?!地球って何?」
こうなったら仕方がない。僕は自分のことを少しだけ彼女達に話すことにした。だが、ここは帝国の街中だ。誰に聞かれるかもしれない。そこで、一旦魔物の森の家に戻ることにした。
「シン!人に聞かれたらまずいことなの?」
「まあね。」
「マギー!帝国内ではどこで聞かれているかわからないでしょ?」
「シン君は意外に用心深いのね。」
僕は3人を前に話し始めた。
「僕は地球で死んでこの世界に生まれ変わったんだ。」
するとギンが聞いてきた。
「シン様は記憶を取り戻していたんですね?いつからですか?」
「世界樹に行った時だよ。あの時、精霊女王のソフィアさんに僕の記憶の封印を一部解除してもらったんだ。」
すると、マギーもメアリーもマジマジと僕を見てきた。
「そうだったんだ~!どうりであの時シンが成長したように見えたわけね。」
「もしかして、シン君はあの戦車とかいう武器も銃火器のことも知ってたの?」
「まあね。あの武器も僕のいた地球で見たことがあったからね。」
「なら、古代遺跡っていうのはシンの住んでた世界の人達が作ったのかな~?」
「それはわからないよ。違う世界でも文明が似ることはあるからね。」
ギンが少し怒ったように聞いてきた。
「なんかシン様は冷たいです!記憶が戻ったのなら、どうして教えてくれなかったんですか?」
「そうよ。そうよ。」
「シン様!シン様が地球からの転生者だということはわかりました。他には何か思い出さなかったんですか?」
やはりギンは鋭い。当たり前かもしれないが、僕がどう考えても人族でないぐらいのことはギンもマギーもメアリーも気づいているはずだ。
「シン様。正直に話していただけませんか?私もマギーもメアリーさんも以前からシン様にはたくさんの疑問がありましたから。」
「そうよね~。精霊女王の言葉といい、古代竜の言葉といい、すべてが不自然よ!普通は人族に『様』なんかつけないもん!」
3人がどうやら本気で聞いてきている。そろそろ潮時かもしれない。そんなことを僕が思っていると、目の前に7大神が現れた。管理神ティーテ以外は僕に片膝をついている。神々が僕に片膝をつくなどどう考えても異様な光景だ。慌てて、ギンもマギーもメアリーも片膝をついた。立っているのは僕と管理神ディーテだけだ。
「困ってるようね。シン。」
「はい。」
「もうこの子達には正直に話してもいいんじゃないかしら?」
「ですが、僕は・・・」
「いいのよ。この子達にはこの子達の修行があるんだから。」
「わかりました。」
するとディーテが説明を始めた。
「シンは私の子なのよ。長い長い修行の旅をしてるの。あなた達も同じよ。修行の必要がないのはこの子の父である創造神様だけだから。」
3人とも驚きすぎてただただ呆然としている。
「ごめん。みんな。黙ってて。でも、僕はいつも普通の人族のつもりでいたんだ。それは本当さ。僕が特別な存在だと知ったら、みんな僕に普通に接してくれないだろ。今回の僕の修行はこの世界を平和にすることだからさ。そのためには、どうしてもみんなの協力が必要なんだよ。」
「シン。自分の気持ちを正直に伝えていいのよ。」
僕は考えた。
「ギンもマギーもメアリーも僕のことを愛してくれているように、僕もみんなのことを愛しているんだ。だから、一緒にいることが僕にとって物凄く幸せなんだよ。でも、僕の修行が終われば、僕はみんなの前からいなくなるかもしれないからね。なかなか言えなかったんだよ。」
するとギンが目に涙を浮かべて話し始めた。
「初めて私がシン様と出会ったとき、私は恐怖心からシン様の手を噛んでしまいました。でも、シン様は手から血が流れているにもかかわらず私の頭を優しくなでてくれました。私は、その時から何があってもシン様についていこうと決めたんです。私はシン様の傍にいられるだけで幸せなんです。」
すると今度はマギーが話し始めた。
「私だってそうよ。私が魔族だって知っても、シンは怖がらなかったし優しくしてくれたもん。他の人達と同じように接してくれたもん。私もシンと一緒にいて幸せなんだよ。」
そして、メアリーも泣きながら言った。
「私も同じよ。私が貴族だってわかっても普通に接してくれたわ。私が魔族に殺されかけた時だって、本気度怒ってくれた。私のことを守ってくれたんだもん。私はシン君のことが大好きなんだから!」
すると管理神ディーテが話し始めた。
「シン。良かったですね。こんなに純粋な子達に愛されるなんて。ギン。マギー。メアリー。シンもあなた達のことを愛してるのよ。だからこそ、悩んだの。修行が終わった後、あなた達と別れることを恐れたのよ。あなた達がちゃんとやっていけるかどうか心配したのよ。わかってあげてね。」
すると、ギンが言った。
「シン様。私達は大丈夫です。それよりも今はこの世界を平和にすることだけを考えましょう。争いのない世界を、苦しむ人達がいない世界を、悲しむ人達がいない世界を目指しましょう。」
「そうよ。ギンの言う通りだわ。シンにとっての修行かもしれないけど、私達にとっての修行でもあるんだから。一緒に頑張るわよ。」
「マギーちゃんの言う通りよ。シン君がいなくなるのは怖いけど、でも、今はこの世界の人達のために頑張らなくっちゃ。」
なんか凄く嬉しかった。みんなに正直に話してよかった。自然と僕の目からも涙が流れた。
「シンもみんなも頑張るのよ!」
ディーテ様も7大神達も全員の姿が消えた。恐らく天界から映像で姿を見せてくれていたのだろう。