新教皇誕生!
シリウスの頭から角が2本生えてきた。背中には真っ黒な翼が出ている。さらに、身体が巨大化した。まるで魔王のような姿だ。全身からは負のエネルギーがあふれ出している。
僕も魔力を開放する。すると、銀髪が逆立ちながら金髪に変化し、瞳が黄金色へと変わった。さらに背中には黄金色の翼が出た。あたり一帯には甘い香りが漂い、目を開けていられないほどの光が溢れ出た。
「やはりそうでしたか。」
「何がだ?」
「あなたが人族ではないとは思っていましたが、今、確信しました。相手にとって不足はありません。行きますよ。」
「どこからでもかかってくるがいいさ。」
シリウスが鋭い爪で僕に攻撃を仕掛けてくる。僕は動かない。だが、シリウスの攻撃が僕にあたることはない。
「やはり無駄ですか。これならどうですか?」
シリウスが魔法を発動する。シリウスの身体から溢れ出ている黒い靄が負のエネルギーと合わさって巨大な竜へと変化した。大きな口を開けて僕に襲い掛かる。だが、僕に傷をつけることはできない。何度も何度も攻撃を仕掛けてくるが結果は同じだ。
「やはり通用しませんか。さすがですね。」
「終わりにしようか。シリウス。」
僕は空間収納から剣を取り出した。剣が僕に共鳴して光り輝いている。僕は剣を持ち、シリウスにゆっくりと近づき剣を振り下ろした。
「どうしたのです?なぜ私を殺さないのですか?」
「一つ聞いておくのを忘れたからね。どうして、教皇や大司教達を殺めたのさ?」
「嘘をついても無駄なようですね。彼らが人族以外を認めなかったからですよ。人族のみが神に愛されている種族だと言って、他の種族を奴隷にしたり殺したり迫害することが許されるわけがないでしょう!だからですよ!」
「迫害された者達の中に魔族もいたということか?」
「ええ、そうですよ。人族の世界に興味を持って、この大陸にやってきた一人の魔族の子どもが、教皇に性的虐待を受けたのちに殺されたんですよ。」
戦いを終わったギン、マギー、メアリーも僕の近くで話を聞いていた。
「そうか。だが、お前がやっていることも同じじゃないのか?お前の部下のサガンも獣人族の国で罪もない獣人族を殺したんだぞ!」
「ええ、知ってますよ。だから、私も生き残ろうとは思っていません。シンさん。最後に一つだけお願いしたいのですが、魔族が全員平和に暮らせるようにしてください。お願いします。」
「大丈夫さ。僕達がこの世界を変えるから。」
「そうですか。ありがとうございます。」
シリウスの身体がだんだん薄くなっていく。
「シン君。どうして?」
「メアリー。シリウスのお腹を見てごらん。」
シリウスのお腹から巨大な蜘蛛が現れた。どうやら、シリウスが裏切った時のために仕込まれていたのだろう。その蜘蛛がしゃべった。
「貴様がシンか!我に逆らったことを後悔させるさ。ハッハッハッ」
巨大な蜘蛛はその場で光の粒子となって消えてしまった。
「ところで、シン!あなたのその姿は何なのよ?」
「そうよ。どうして、天使でもないのにシン君に黄金の翼があるのよ?」
「多分、ここが天界だからじゃないかな~。神聖なエネルギーが溢れている場所だから、その影響を受けたんだと思うよ。」
すると、ギンが僕の顔を見て言った。
「マギー。メアリー。シン様が言うんだから間違いないわよ。きっと、神獣である私や天使であるあなた達とは影響の受け方が違うのよ。シン様は人族なんだから。」
メアリーもマギーも疑っているようだったが、とりあえず大聖堂に戻った。大聖堂内では普段通りに人々が祈りを捧げていた。そこに、ドラクと一緒にヨハンとベネットがやってきた。
「終わったようですね。シンさん。」
「ええ、すべて終わりましたよ。でも、ヨハンさんとベネットさんはこれからが大変ですけどね。」
2人は顔を見つめあっている。そして、僕達に言ってきた。
「シン殿。私も教皇になる覚悟はできていますが、どういうことでしょうか?選挙は明日ですよ。」
「メアリー!頼むよ。」
「うん。」
メアリーの身体が光始めた。そして、大聖堂の中央でメアリーが背中に純白の翼を出して舞い上がる。人々は何が起こったのか理解できないでいる。
「私は聖女メアリーです。管理神様の言葉を伝えます。」
僕達以外は全員が平伏した。
「この国の前教皇も大司教も世界の平和を乱す魔族でした。魔族全体がいけないのではありません。一部の魔族が世界の平和を乱しているのです。私とその仲間により、この国の平和を乱す魔族は全てうち亡ぼしました。これからこの国は生まれ変わるのです。ヨハン!あなたはこの国の教皇として、国民達のために尽くすことを命じます。ベネット!あなたはヨハンを助けなさい。いいですね。」
2人が同時に返事をした。
「はい。確かに承りました。」
メアリーの様子は僕の魔法で、カナリア聖教国の王都だけでなく各都市にも映像として映し出された。全員が驚愕の事実に驚いている。今度はヨハンが国民に対して話し始めた。
「我が国の民達よ。聞いて欲しい。神々はこの世のすべてを創造され管理なさっているのだ。人族もエルフ族もドワーフ族も獣人族も魔族もすべての種族を平等におつくりになり、愛されているのだ。これより我が国では種族差別は決してしないであろう。そして、神の前ではすべてのものが平等である。教皇である私も司教も国民のみんなもすべてが平等である。ともにこの国の未来を作っていこうではないか!」
街のいたるところで大歓声が上がった。ヨハンが教皇として受け入れられた瞬間だった。
そして、落ち着きを取り戻した後、ヨハンとベネットが僕達に片膝をついて言って来た。
「シン殿。ギン殿。マギー殿。メアリー殿。本当にお世話になりました。もし私どもが誤った方向に進みそうになった時には、是非ともおしかりに来てください。我ら一同、世界の平和を目指して頑張っていきます。」
「立ってください。ヨハンさん。ベネットさん。後は任せましたよ。」
「はい。」
僕達は大聖堂を後にした。
「ところで、これからどうしますか?」
「そうだな~。ドラクさんはどう思う?」
「私としては一刻も早く魔大陸にお越しいただきたいのですが、まだホーク帝国がありますから。」
するとマギーが言った。
「そうよね。ホーク帝国は魔族と戦争しようとしてるんでしょ?」
「確かにマギーちゃんの言う通りよね。軍事に力を入れてる分、国民が犠牲になってるのよね。」
「ドラクさん。ごめん。ホーク帝国に先に行くよ。」
「わかりました。ならば、私もホーク帝国について調べることにしましょう。」
ドラクが転移でどこかに行ったようだ。僕達はホーク帝国に向かって歩き始めた。