イエティーに遭遇する!
スパロウ王国のスタンピートを鎮圧した僕達は、グリード侯爵とチャーチル国王にこの国の発展のためにと2つの玩具を作って見せた。2人とも喜んでくれた。そして、スパロウ王国のもう一つの懸案事項である、西側に位置するホーク帝国との武力衝突を回避するため、僕達は紛争地域に行くことになった。その途中に標高10000mの山があったため、山の麓の街ヨシダシティーに立ち寄った。そこで防寒服を購入して1泊するつもりだ。
「とりあえずギルドに行こうか?」
「うん。」
僕達が冒険者ギルドに行くとやはり冒険者は少ない。僕達は受付に行って宿屋を聞いた。
「私はリンよ。宿屋は大通りにあるからこの地図を見ながら行くといいわよ。」
「ありがとうございます。」
「いいのよ。ところで、あなた達はあの山を越えるつもりじゃないわよね?」
「どうしてですか?」
「だって、この先に行くにはあの山を越えるしかないからね。」
「何か問題があるんですか?」
「大ありよ!あの山の頂上付近には強力な魔物がいるっていう噂よ。だから、ここの冒険者達も中腹まで行ったらそこから上には行かないわ。」
「ねぇ、シン!何がいるんだろうね?美味しいものだったらいいんだけど。」
「マギーちゃん。魔物とは限らないでしょ?」
「どうして?」
するとギンがマギーに言った。
「さっきシン様が行っていたでしょ!神聖な魔力を感じるって!」
「あっ!そっかー!なら、何なんだろうね?」
「行ってみればわかるよ。でも、その前にみんなの服を買わないとね。」
僕達はギルドを後にして服屋に行った。さすがに山麓の街だけあって、防寒服がいろいろ売っていた。服だけでなく靴も必要だ。僕達は防寒具を一式そろえて店を出た。
「宿屋ってこの辺でしょ?」
「あそこじゃないかな~?シン君。」
「多分そうだよ。いい匂いがしてきたからね。」
僕達が宿屋に入ると料理の仕込みをしているらしく、宿屋の中にはいい匂いが充満していた。
「いらっしゃい。4名ね。」
「はい。」
「部屋はどうするのかな?」
「4部屋あれば嬉しいです。」
「大丈夫よ。今は冬だから部屋は十分空いてるから。」
僕達はお金を払ってそれぞれの部屋に行った。部屋は今までの宿屋と同じだ。ただ、珍しいことに各部屋にお風呂がついていた。やはり、寒い地域だからなのかもしれない。少し部屋で休んだ後、僕達は1階の食堂に行った。お酒もあるようだったが、メアリーもマギーもお酒は注文しない。僕とギンと同じように果実水だ。
「あのいい匂いってどんな料理かな~?」
マギーがワクワクしながら料理が出てくるのを待っている。すると、料理が運ばれてきた。いつもより柔らかいパンと野菜たっぷりのサラダ。それに、ベアの肉をじっくり煮込んだシチューだ。
「パンのおかわりは自由だからね。」
「ありがとうございます。」
ギンもマギーもメアリーも美味しい美味しいを連発しながら食べている。確かに今まで食べた料理の中では、ジパン王国やアラス王国の料理の次に美味しい。恐らく、複数の香辛料を使っているのだろう。
「美味しかったですね。シン様。」
「そうだね。多分、食材もよかったけど、ここの料理を作っている人が相当な時間をかけて煮込んでると思うよ。」
「そうよね。野菜なんかもうとけてたし、肉もほとんど嚙まなかったもん。」
僕達は各自部屋に戻って風呂に入って寝た。そして翌朝、いよいよ出発だ。
「途中までは普通に登っていくけど、きつくなったら言ってくれるかい?」
「どうするの?」
「飛翔して行くつもりさ。」
「最初から飛翔して行けばいいじゃない!」
「ダメだよ。そんなことしたらみんなの修行にならないだろ!」
「エ———!だって、もう十分修行したじゃない!そうよね?ギン!メアリー!」
「普段からきついことをしていくことが大事なんだよ。」
「わかったわよ!」
僕達は山の麓の森に足を踏み入れた。中腹辺りまでは寒いが雪はない。そのため、比較的順調に登ることができた。だが、雪が出てきてからはかなりしんどい。
「シ~ン!きついんですけど!おぶって~!」
「マギーちゃん!私だって頑張っているのよ!」
「そうよ。マギー!子どもみたいなこと言わないで!」
「少し休もうか?」
「はい。」
僕達は雪山に苦戦しながら登っていたが、結構体力を消耗する。全員で竪穴に入って一休みすることにした。
「シン様。この奥から声が聞こえるんですけど。」
確かに僕の魔力感知にたくさんの魔力反応がある。
「行ってみようか?」
「はい。」
音を立てないように静かに歩いていくと、そこには真っ白な毛皮で覆われたイエティーたちがいた。彼らは魔物だが、知性があり人語を理解する。
「ウゴゴギャ!」
「ギャギャウゴ。」
イエティーが僕達に気づいたようだ。棍棒を手に持って何か言いながら近づいてくる。見つかってしまった以上しょうがいないので、僕達はイエティー達の前に出た。
「シン様。どうしますか?」
「彼らは知性があるからね。話しかけてみるさ。」
僕は人語でイエティーに話しかけた。すると、驚くことにイエティーが人語で答えてきた。
「僕達は敵じゃないから。」
「何しに来た?」
メアリーはイエティーが人語を話すのを見て驚いたようだ。
「メアリーさん。イエティーは知性があるのよ。」
「そ~なんだ~。」
僕はイエティーに正直に説明した。
「山の向こうに行きたいんだよね。ここで少し休ませて欲しいんだけど。」
「山の上!行くな!我らの神様いる!」
「君達の神様?」
「そうだ!我らの守り神様だ!山を下りろ!」
「それは無理かな。せっかくここまで来たんだから。」
「ならば、われらの村に来い!そこで聞いてみる!」
「ありがとう。」




