久しぶりの天界
スパロウ王国で魔族によって引き起こされたスタンピートを鎮圧した僕達は、今後の相談をしていた。
「シン様。これからどうしますか?」
「もう、この国には用はないよ。カナリア聖教国に行こうか。」
「そうよね。もともと、カナリア聖教国に行くつもりだったんだもんね。」
「ならば、また私が先に行って情報を持ってきます。」
「頼むよ。ドラクさん。」
「はい。お任せを。」
ドラクさんはその場から転移した。
「マギー!ドラクさんってすべての国に行ったことがあるのか?」
「どうしてよ。」
「だって、頼めばどこにでも転移していくじゃないか?」
「言われてみればそうよね~。今度おじちゃんに聞いておくわ!」
目の前の魔物達を空間収納に仕舞っていくが、いたるところに巨大な穴が開いている。
「シン様。このままにはしておけませんよね?」
「しょうがない。治すか。」
『レベルラウンド』
すると、穴の開いた場所と盛り上がった場所が均一に平らになっていく。あっという間にすべての地面が平らになった。
「さすがね。シン君。これだけ広範囲の土地を治すなんて。」
「でも、疲れるんだよな~。今日は結構大変な魔法を連発したからさ。」
「シン様。今日は魔物の森の家に帰りましょう。私がマッサージして差し上げますので。」
「本当?」
「わ、わ、私もマッサージするわ。シン君、疲れてるようだから。」
「なら、私はお風呂で背中流してあげる!」
「マギー!あなた何言いだすの?」
「だって、以前私とギンでシンの背中流したもん!」
「本当なの?シン君!」
「まあね。」
「なら、私も背中流しますから!」
そんなことで僕達は魔物の森に転移しようとした。だが、街の方から大声が聞こえてきた。見ると、グリード侯爵と国王達が大勢でやってきたのだ。全員が僕達に平伏した。
「神よ。この度は我が国をお救いいただきありがとうございました。」
「チャーチル陛下。グリードさん。僕は神じゃないからシンでいいですよ。」
「ですが、先ほどのあの魔法はとても人間のものとは思えません。あれは間違いなく神の御業ではありませんか。」
「僕は魔法が得意ですから。」
すると王子が謝ってきた。
「先ほどのご無礼、平にお許しください。」
「大丈夫ですよ。気にしてないですから。」
ここでグリード侯爵が声をかけてきた。
「ならば、シン殿。私との約束はまだ有効なんでしょうか?」
ここで思い出した。この国ならではの娯楽品を作ることになっていたのだ。
「覚えてますよ。明日、グリードさんのお屋敷に持っていきますから。」
「わかりました。お待ちしております。」
「じゃあ、今日は僕達疲れたから帰りますけど。」
僕達は彼らの前で魔物の森の家まで転移した。突然、僕達の姿が消えてやはり彼らは僕達が神だと思ってしまったようだ。
「シン様。食事にしますか?それともお風呂にしますか?」
「どうしたの?いきなり。」
「いつもシン様に食事の用意をしていただいていますので、たまには私達がおつくりします。」
「わかったよ。なら、今日はお願いしようかな。」
僕は自分の部屋に戻ってベッドに横になった。すると知らないうちに寝てしまったようだ。よほど疲れていたのだろう。気が付くと白い神殿の中にいた。とてもすがすがしく気持ちがいい。間違いなくここは天界だ。
「気が付いたようね。シン。」
「はい。お久しぶりです。」
「そうね。久しぶりね。誤解しないでね。あなたの記憶を消していたのは意地悪じゃないですからね。」
「知ってますよ。母上。僕の修行のためですよね。」
「そうよ。それにしても修行の旅は順調のようね。」
「そうでもないですよ。失敗もしますし、後悔することもありますから。」
「それが修行なのですよ。常に最善の方法を考えることができるのは唯一一人だけですから。」
「そうですね。でも、楽しいですよ。ジパンは地球の日本に似ていましたし、一緒に旅をする仲間達は素直ですし、何よりも世界中の人々と触れ合うのは楽しいです。」
「よかったわ。もしかしたら、苦痛に感じているんではないかと思っていたのよ。」
「そんな時もたまにはありますが、人々の笑顔を見るのはこの上ない幸せですから。」
「成長しましたね。」
「ところで、母上。僕はこの世界で修行を終えたらどうなるんですか?」
「そうね~。お父様に聞いてみないとわからないわ。私も知らないのよ。」
「ギンやマギーやメアリーはどうなるんですか?」
「あなた、あの子達のことを心配しているの?」
「はい。彼女達は僕にとってかけがえのない存在になっていますから。」
「今の言葉をあの子達が聞いたら喜ぶわよ。でも、それもわからないの。彼女達は彼女達で修行の旅の途中ですからね。」
「確かにそうですね。父上以外はすべての存在が修行の途中なんですよね。」
「そうよ。創造主以外はみんな修行中なのよ。そろそろ時間のようね。頑張るのよ。」
「はい。ああ、そうだ。フドウさんとマジクさんにお礼を言っておいてください。」
「わかりましたよ。」
僕が意識を取り戻すと、目の前にはギン、マギー、メアリーが僕を覗き込んでいた。
「良く寝てたわね。シン。」
「よほど疲れてるのよ。」
「シン様、ご飯の用意ができてますよ。」
「ありがとう。」
僕が食堂に行くとテーブルには様々な料理が並べられていた。どれも美味しそうだ。一口食べて思った。ジパンの味付けだ。物凄く美味しい。
「これ美味しいね~。」
「でしょ!でしょ!それ私が作ったのよ!シンが作るのをいつも見てたからね。」
「これも美味しいよ。」
「それは私よ。お母様の料理をジパンの調味料で工夫してみたのよ。」
「これは何?」
「それは私です。シン様は肉料理が好きなので私が作りました。」
ギンの作った料理はライを細かくすりつぶして粉にし、それを水で溶いて薄くのばし、その中に細かくした肉と野菜を包み込んで焼いている。めちゃくちゃ美味しい。
「これ、最高だよ!もしかして、ギンって料理の天才だったの?」
「そ、そんな~!恥ずかしいです。」
マギーもメアリーもギンの料理を食べた。
「本当に美味しい!」
「ギン!あなた天才ね!でも、負けないわよ!」
そういいながらマギーはギンの料理をがつがつと食べていた。
「あ~。お腹いっぱいだよ。みんな、ありがとう。」
「大丈夫ですよ。シン様。」
「そうよ。いつもシンが作ってくれてるんだから。」
「そうですね。それより、お風呂はどうするんですか?」
「メアリー!あなた、そんなにシンと一緒にお風呂に入りたいの?」
「違うわよ!何言うの!マギーちゃんたら!」
「じゃあ、メアリーはシンと一緒に入らないんだね?」
「は、は、入りますから!」
「やっぱり入りたいんじゃないの~。」
「マギー!メアリーをいじめちゃだめだよ。僕は3人といるのが幸せなんだから。」
「シン君~。」
それから全員でお風呂に入って、すぐに寝た。当然、彼女達にはタオルを巻いてもらったからね。マギーだけはタオルが落ちかけていたけど。(だってしょうがないじゃない!タオルが引っ掛からないんだもん!)