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神様修行の旅  作者: バーチ君
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農民が盗賊?

 ヤン王国の国境の街シャンも同じように賑わっていた。西大陸とアルベル王国の貨幣は、デザインの違いはあるがどちらも使用できるようだった。これは白金貨、金貨、銀貨、銅貨の各貨幣の重さを共通にしているからだ。



「シン様。こちらの方が品物の値段が高い気がします。」


「本当ね。あの屋台の肉串なんか1本で大銅貨5枚よ。アルベル王国だったら大銅貨3枚なのにね。」



 確かに物価が高いがそれほど気にしなかった。そして、国境の街シャンを出た後、次の街に向かった。途中で草原地帯を抜けて大きな川に差し掛かった時、後ろから馬車がやってきた。どうやらシャンで仕入れた品物を次の街に運んでいるようだ。すると、川の反対側から10人ほどの男達が手に武器を持って現れた。後ろを見ると後ろにも10人ほどの男達がいる。



「シン君。盗賊よ。」


「そうみたいだね。」



 御者席にいた男は慌てて馬車の中の人物に言いに行った。そして、馬車の中から商人風の男が出てきた。橋の前後から10人ずつがこちらに向かってくる。すると、商人風の男は僕達に言ってきた。



「剣を持っているということは、あなた方は冒険者ですよね。助けてください。お願いします。」


「わかりました。」



 僕とマギーが前に、メアリーとギンが後ろに行った。すると、前後の男達が距離を詰めてくる。よく見ると、男達の服装が変だ。どう見ても一般人の服装をしている。武器を持つ手も震えている。そして、リーダーらしき男が僕達の前に出て震える声で言った。



「こっちは20人いるんだ。抵抗しないで、馬車を置いて立ち去れ。そうすれば危害は加えない。」


 

 マギーが大きな声で言い返した。



「あなた達は自分達が何をしているのかわかってるの?これじゃあ、盗賊だよ!盗賊は命を取られても文句言えないんだよ!」


「そんなことはわかってるさ!いいから、荷物を置いて立ち去ってくれ!」



 どうやら普通の盗賊ではないようだ。僕は脅かすつもりで手を空に向けて魔法を放った。



『シャイニングドラゴン』



 すると、光り輝くドラゴンが大きな口を開けて男達の頭の上を飛んだ。すると、男達は恐怖に耐えきれなくなったのか、武器を捨てて一目散に逃げ始めた。



「みんな、彼らを拘束してくれるかい。」


「うん。」



 マギーは男達に魔法を放つ。そして、ギンとメアリーも魔法で相手を拘束した。



「俺達をどうするつもりだ~!放せ~!」



 すると、後ろから商人がやってきた。



「ありがとうございました。助かりました。それで、彼らをどうするつもりですか?」


「多分、彼らは盗賊じゃないですよ。何かの理由でこんなことをしてるんだと思います。」


「そうですか。やはり、あなたもそう思いましたか。」


「あなたもそう感じたんですか?」


「ええ、剣を持つ手がみんな震えてましたからね。」



 この商人は何者なんだろう。普通なら恐怖でそこまで見ることはないはずだが。


 僕達は河原に男を連れて行った。商人も一緒だ。



「あなた達はどうしてこんなことをしたんですか?正直に答えてください。」


「俺達だって好きでこんなことやってるんじゃねぇや。だけど、生活できねぇから仕方ねぇんだ!」



 すると商人らしき男が聞いた。



「どういうことですかな?詳しく教えてくれませんかね?」



 すると、リーダーらしき男が泣きながら言った。



「俺達は普通の農民なんだ!真面目に一生懸命働いてたさ。なのに、新しい領主が来てから税金が高くなって、集荷の8割をもっていってしまうんだ。自分達の食う分さえもないんだ!」


「確か新しくこの辺りの領主になったのは、ロンバルト子爵じゃなかったかね。」


「ああ、そうだ!前の領主のロベルト子爵の弟さ!兄弟でもえらい違いだ!」


「確か、ロベルト子爵が急な病でなくなったと聞いていたがな~。そんなひどい状態だったのか。」


「そうさ。ロベルト様は領民思いのいい方だったのにな~。」



 この件には何か裏がありそうな気がした。そこで、僕は男達の拘束を解いた。



「えっ?!いいのか?」


「あなた方も被害者のようですからね。でも、もうこんな真似はしないでくださいね。」


「わかったよ。でも、どうすればいいんだよ。これから!ちくしょー!」


「あなた方の村まで一緒に行きましょう。そこで、何か対策を考えましょうか。」


「さっきの魔法といい、お前達は何者なんだ?」


「アルベル王国から来た冒険者ですよ。ですが、皆さんの役に立てると思いますよ。」



 商人は何か悟ったかのように僕達を見て、男達の村まで同行することになった。



「シン様。あの商人は何者なんでしょうか?」


「わからないよ。でも、悪い人ではなさそうだから。」


「そうですね。」



 僕達が村まで行くと、村は想像以上にひどいありさまだった。畑で作物を作っても領主に取り上げられてしまうため、誰も作物を作ろうとしない。その結果、畑は荒れ放題になっていた。また、村の人々は大人だけでなく子ども達も栄養不足のようだ。



「シン!お肉とかたくさんあるよね?」


「マギー!優しいね。この村の人達に食べさせてあげたいんだろ!」


「まあね。」


「シン君。私も手伝うわ。」



 僕は空間収納からありったけの食材を取り出した。その様子を見て村人達は全員が驚いていた。恐らく、空間収納を初めて見たのだろう。リーダーの男性が近寄ってきた。



「あなたは神なのですか?」


「違うよ。ただ、魔法が得意なだけだから。そんなことより、これを今から料理するから全員で手伝ってくれると嬉しいな。」


「任してください!みんな、手伝うぞ!」


「オオ————!!!」



 女性陣が村の広場に簡易的な調理場を作ってくれた。男達は家の中からテーブルと椅子を運び出している。僕達4人は魔物をさばいて調理の準備だ。そして、商人は荷車から野菜と果物を取り出していた。


 そして、料理が完成すると最初に子ども達に配った。その後で大人達だ。



「たくさんありますから、ゆっくりとよく噛んで食べてください。」


「お母さん。これ、すごく美味しい。」


「そうね。今まで食べたことない料理ね。」


「そうでしょう。これは特別な調味料を使っているのよ。ねっ!シン。」



 料理をしている間に僕達は自己紹介をした。リーダーの男はカムイという名前だ。もともと村長の息子のようだ。そして、商人はギルバートと名乗った。


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