マギーの剣
僕はドワーフ王国を出て、3人が修行している天界に迎えに行った。よほど疲れていたのか三日三晩寝ていたが、起きてからはいつも通り元気だった。自分達が修行していた場所が天界だったと知って驚いていたようだ。すべてを説明すると、僕のことも話さなければならなくなるので、何とか誤魔化した。だが、マギーとメアリーは未だに僕のことを疑っている。ギンは僕の気持ちを分かっているのだろう。2人の視点をそらす話を始めた。
「私達どれだけ強くなったのかな~?メアリーもマギーも気にならない?」
「凄く強くなった気がするけど、自分では分からないわ。今度シン君に確かめてもらおうかな。」
「私も分からないわよ。でも、今度あいつにあったら絶対に負けないんだから!」
「そうね。マギーの言う通りね。私も今ならあのベガとかいう魔族に勝てる気がするわ。」
「ごめん。マギー、ギン。2人はあのベガと戦いたかったんだよね?」
「そうですけど。どうしてシン様が謝るんですか?」
3人は顔を見合わせて僕の方を見た。
「あのベガとかいう魔族は僕が討伐しちゃったんだ。」
「え—————!!!どうしてですか?シン様。では、私達は何のために修行したんですか?」
「そうよ。ギンの言う通りよ。」
「ちょっと事情があってね。でも、まだ100人隊長が一人と四天王は3人残ってるよ。それに魔王もいるしね。」
「それはそうですけど。なんかやられっぱなしっていうのが悔しいです。」
「悪かったよ。ギン。でも、ドワーフ王国で西の湖にヒドラがいて、それを討伐したらあいつが出てきてさ。」
「そうだったんですね。なら仕方ありませんね。」
「シン!私も許してあげるわ。その代わり、今日は一緒に寝てもらうからね。ちゃんと抱き枕になってよね!」
「仕方ないな~。マギーは本当に子どもなんだから!」
「子どもじゃないもん!」
ここで僕は大事なことを思い出した。マギーの剣をドワーフ王国のドルドン国王にお願いしていたのだ。
「マギーにプレゼントがあるんだ。」
「なに?」
「ドワーフ王国に行けばわかるよ。」
その日は魔物の森の家で食事をした後ゆっくり休み、その翌日に僕達はドワーフ王国に転移した。王城に行くと、僕のことを覚えていたのかすんなりと中に入れてくれた。そして、応接室で待っているとドルトン国王がやってきた。
「おお、シン様。待たせしてしまって申し訳ありません。それで、そちらの方々は?」
「僕の仲間のギンとマギーとメアリーです。」
「羨ましいですな。美女3人に囲まれて。」
「そうですね。彼女達との旅は楽しいですよ。」
すると、執事が白い布で覆われたものを持ってきた。
「先日のシン様のご依頼の品です。ご確認ください。」
「ありがとうございます。」
僕が布をとって剣を手にすると、剣がまるで共鳴するかのように光り輝いた。
「な、なんと?!」
「この剣は素晴らしい剣ですね。さすがドワーフ族の鍛冶師です。これほどの剣は人族にはまず作れないと思いますよ。」
ドルトン国王は終始ニコニコしている。僕に褒められたことがよほど嬉しかったのだろう。
「この剣はここにいるマギーに使ってもらおうと思っているんです。」
マギーもドルトン国王も驚いた。
「えっ?!私に?」
「そうさ。昨日言っただろ!プレゼントがあるって!」
するとドルトンは焦った様子で言ってきた。
「これはシン様が使うのではないのですか?」
「はい。僕にはこの剣がありますから。」
僕は空間収納から剣を取り出した。その剣を渡されてドルトン国王は手が震えた。
「も、もしやこの剣は神剣では?」
「ええ、そうですよ。」
「初めて見ました。まさか、このような剣をシン様がお持ちだったとは?やはりシン様は・・・」
「そこまでですよ。僕はただの人族ですから。ただ、その剣を使うことを許されてるだけですので。」
「そうですか。ならこれ以上は何も申しません。」
「それに、ドルトン陛下がくれたこの剣はマギーにふさわしい出来だと思いますよ。」
ドルトン国王は何を言われているのか理解できない様子だ。
「マギー。君の本当の姿を見せてあげて。」
「わかったわ。」
マギーの身体が光始める。そして、黒かった翼は完全に純白の翼へと変わっていた。まさに天使そのものだ。ドルトン国王は驚きすぎて口を開けたまま固まってしまった。
「陛下!ドルトン陛下!」
「ああ、申し訳ありません。驚きすぎて意識が飛んでいました。マギー殿は天使様だったんですか?」
「そうよ。本当は堕天使族だったんだけどね。シン達と旅をしていたら魔がとれたみたい。」
「そうだったんですか~。シン様。大変ご無礼なことを言いました。この剣は是非ともマギー様に使っていただきたい。天使様に使用してもらえるなど、ドワーフ族にとってこんな幸せなことはありませんから。」
「ありがとうございます。ドルトン陛下。」
僕達は城を後にして、再び魔物の森の家に転移した。すると、マギーが僕のところにやってきた。
「どう?似合う?」
身長の小さなマギーにとって剣を腰に差すのは大変だ。そこで、僕と同じように背負うようにしたのだろう。
「似合うよ。でも、ちょっと大きすぎるかな~。」
「そうですね。マギーが持つには少し大きいかもしれませんね。私がいただきましょうか?」
するとマギーは剣を守りながらギンから離れた。
「ダメに決まってるでしょ!これは誰にも渡さないんだから!シンからのプレゼントなのよ!絶対上げないからね!」
「大丈夫よ。マギーちゃん。ギンさんはからかっただけだから。」
マギーは安心した様子だが、やはり体の割に剣が長すぎる気がする。
「マギーちょっと来て。」
「何よ!シン。やっぱり返せとか言わないでよ。」
「違うよ。その剣をちょっと貸してみて。」
マギーが背中の剣を僕に渡してきた。僕は剣に魔法を込めた。すると、剣が光って長さが短くなった。
「これでどうかな?」
「え————!これじゃ短すぎるわよ!どうするのよ!」
「大丈夫だから!その剣を持って自分の好きな長さにイメージしてみて。」
マギーが剣を手に持ってイメージすると、剣が光始めて長くなった。
「すご~い!すごいわ!」
「普段は持ちやすいように短くして置いて、使うときに長くすればいいよ。」
「さすがシンね。ありがとう。」
「どういたしまして。」