5:入学しました。・2
クラスを担当する先生から名前を呼ばれて端から席に着いて行く。私は七番目に呼ばれました。どういう順番で呼ばれているのか分かりませんが、ロロナ様とは結構離れた席です。残念。その後名前だけでいい、と先生が付け加えながら自己紹介をしまして、2クラスのカリキュラムを教えてもらいまして、後は校舎内の案内をする、とのことでサッと移動が開始しました。先生、無駄な動きが無さそうです。私、着いていけるでしょうか。
食堂やらテラスやら図書室やら自主勉強室やら……様々な部屋を案内してもらいましたが覚え切れる自信が無いです。先生は分かっているように案内の最後に、門の近くにある校舎内案内図を見るように教えて下さいました。ありがたいです。これで一日が終わりまして、明日から授業開始だそうです。苦手な外国語が中心の授業ですが、頑張るしかないですね。尚、我が国は三つの国に囲まれた小さな国です。
で。
その三国が全て言語が我が国と違います。
北の大国と我が国の言語は似ているところもありますが、文字が同じでも読みが違うのできちんと習わないと通じません。尚、東の国も南の国も言語がそれぞれ違います。東の国は更にその向こうにある国から独立したので、そちらの言語で話しますし、南の国は東の国に似ているようでいて、言葉が別の意味を為すので南の国の言語をきちんと理解しないと意味が通じません。
じゃあ何故その三国の言語を習うかと言えば、小国ではあるものの、我が国には三国よりも古い歴史ある建造物があることから観光地として有名です。なので三国からの観光客が多いので、三国の言語を覚えないと仕事になりません。特に平民の皆さまは三国の言葉が話せることが何の仕事でも必要なのです。
貴族も然り。
仕事をしない貴族夫人でも社交はします。下位貴族の夫人でも最低限の社交をする際、他国の貴族と通訳無しで会話することが求められます。それくらい、三国からの客は多いということ。ですので、本当は苦手、などと言っていられないのです。ということで頑張って授業で言語を覚えます。
ロロナ様と一緒に帰り支度をしましてカッツェ様とリコリナ様を門で待つ事にします。お二人と顔を合わせて、全員歩きだと分かりました。三人は護衛と一緒ですが私は従兄と一緒です。朝は従兄二人が先に出てしまったので護衛と登校しましたが、帰りは従兄二人から一緒に帰ることを言い含められていましたから、二人を待ちます。ロロナ様達も一緒に待っていて下さるようなので、その間に従兄二人について話しました。
私の誕生日パーティーに来てましたから皆さん改めて紹介する必要は無いですが、ロロナ様・リコリナ様・カッツェ様はどのような従兄達なのか、興味津々だと仰いますので。
「元婚約者のピーテル様と同い年の従兄が、誕生日パーティーで紹介したデリック。彼は弟ですが、兄より背が高くガッチリしてます」
「ああ、あの方ですか! 身体が大きいので、その、少し怖く思ってしまいましたわ」
私が説明すると、リコリナ様がちょっと曖昧に笑います。リコリナ様は小柄ですからデリックみたいに大きな身体の男性は怖く思うのかもしれませんね。
「でも。デリックはあまり話さないので怖がられますが、優しいのですよ。私が怖いのは兄であるシリックの方です。怖いと言っても怒鳴るとかではなくて、間違ったことをすると理解するまで何が悪かったのか細かく説明します。ただ悪い事をしました、ごめんなさい。では、許してくれないので怖いと思います。でもきちんと理解して謝れば褒めてくれますけど」
「シリック様ってそのような方ですか。この前お会いした時はニコニコと笑っている顔が穏やかでしたけど」
「普段は穏やかです。間違ったことをしたら、そういう感じになりますね」
カッツェ様が目を瞬かせますから、私は穏やかですよ、と肯定しました。そんな話をしていたらシリックとデリックが歩いて来るのが見えます。あまり笑わないデリックは、確かに怖そうかもしれません。シリックはニコニコしていて、雰囲気が正反対の兄弟です。身体付きもガッチリして背が高いデリックとやや細身のシリックなので遠くから見る二人は兄弟に見えないようですが、顔立ちは似てます。だからよく見れば兄弟だと分かりますね。
お読み頂きまして、ありがとうございました。