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3:私、変わりたいんです!

「話は……分かった」


 父の静かな声に、ハッと我に返る。私……大きな声を上げてましたね。恥ずかしい。


「あなたがそんな風に気持ちを言うのは、初めてね」


 母の優しい声に目を向ければ、優しい目で私を見る。そう言われてみれば、確かに私は気持ちを言うことはあまりなかった。……家族みんなが気持ちを言う前に私の気持ちに気付いてくれていたから。


「シフレーがこんなに大きな声で気持ちを告げてくれたんだ。婚約は解消しよう。私達、親の口約束だったし、政略的なものも何一つ無いから直ぐに解消出来る」


 父の話に、私はポカンと口を開けた。そんな私をおかしそうに笑って父は婚約について詳しく教えてくれた。……確かに私は思い込みが強い。だからきちんと人の話を聞いてないこともある。それにあまり人を悪く思いたくないのかも、しれない。

 指摘される度に私は顔が熱くなっていくから、きっと真っ赤になっているはず。


「思い込みで話を聞かないところは直したいと思います」


 熱くなった頬を触りながら父に頭を下げて。

 もっと早く婚約を何とかすれば良かったと頭を下げる両親に頭を上げてもらい。


「私、引っ込み思案だったから、もっと自分の思っていることを口に出したいと思います。私……変わりたいんです!」


 私の決意に両親が涙を浮かべて頷いてくれて。後は父に任せることにした。執務室を出た私を、兄と姉が待っていてくれて。今までのことを話して。ピーテル様と婚約を解消することも話して。力強く頷く兄と優しく笑う姉が頭を撫でてくれて、私はワンワンと声を上げて泣きました。

 それから思ったことを口に出来るように頑張ることを決めた私に、姉が話してくれました。


「シフレーがね、私とお兄様のお友達に嫌なことをされていたのを知っていたの。だから注意をしていたんだけど。お友達は多分、それが余計に嫌だったのね。私とお兄様が見てない所であなたに嫌なことを続けていたでしょう? 使用人が見ていたらしくて教えてくれたわ。だから私達はそのお友達を、もうお友達と思わないで縁を切るつもりだったの」


 どうやら、私が小さな頃、お二人のお友達にされていたことを二人は知っていたようです。


「だが、その使用人に言われたんだ。そうやって前もって色々とやってしまうから、シフレー様はいつまで経っても自分の気持ちが伝えられないのでは……と。嫌なことをされて、嫌だ、とはっきり言えないのは、シフレー様が大きくなって困ることになりますよ、と」


 兄が続けてそんな話をします。その使用人の名前を聞いたら、私によく思ったことは伝えて下さいね、と教えてくれる使用人でした。兄と姉は、そこで私が気持ちを言えない原因に気付いて、私が嫌だ、と言うのを待っていてくれたそうです。

 でも、兄も姉も使用人達も、私が思い込みが強くて我慢してしまうし、人を悪く思いたくない子だと気づくのが遅くなってしまったため、いつまでも嫌だと言わない私に待つのも待てなくなってしまって、二人は学校に通い出したらあの頃のお友達との付き合いを辞めてしまったそうです。


 成る程。


 学校に入学したらあのお友達と会わなくなったのは、そういうことでしたか。

 そしてピーテル様のことも家族みんなも使用人達も気付き始めていたので、今度こそは、私がきちんと話をしてくれるだろう、と待っていたそうです。……それでも私が何も言わないので待ちくたびれていたとか。


 ……私、みんなに心配をかけていたんですね。気付きませんでした……。しかも、自分の気持ちをはっきり言えるまで待っててもらっていたことも気付かないって、ダメな子じゃないですかね?


 でも、ようやく。

 ようやく私が気持ちをはっきり言ったので、兄も姉もホッとしたそうです。

 すみません、お二人とも……。

 でも、今度はちゃんと気持ちを言います!

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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