2:今のこと・2
部屋に戻って、今までのことを振り返りました。
私の髪の色を錆びた色と言い、目の色を血のようだと言って嫌々ながら謝ったピーテル様。婚約を続けて来ましたが、文句は言うし贈り物は無いしお出かけもしない。考えてみれば、兄と姉が小さな頃に付き合っていた友達とあまり変わらないですね。兄と姉が小さな頃に付き合っていた友達は、二人が学校に行ったら会わなくなりました。安心しました。そしてピーテル様のことは諦めていましたけれど、会わなくていい、結婚しなくていい、と思ったらやっぱり安心してます。
これって……私はピーテル様のことが嫌だった、ということですよね。
漸く自分の気持ちに気付きましたけど、まだ遅くないはずです。学校に入学してませんから、婚約を解消してもお互いに困ることは有りません。父に話して解消してもらいましょう。……何か家に不利益が生じるのなら、学校を卒業してから家から追い出してもらえばいいんです。貴族じゃなくて平民として生きればいい。平民として生きて行くのに必要なことを学校に通う間に覚えればいいのです。
この時の私も思い込みでこんなことを考えていました。この後の両親との話し合いで、現実はそんなに甘くないと教えられるわけですが。
私は両親に怒られることも覚悟して、部屋を出ました。使用人に両親が何処に居るのか尋ね、二人共執務室に居ることを教えてもらった私は、今日は私の誕生日だから他の予定が無いことを知っていたため、遠慮なく執務室の扉をノックしました。ややして「入れ」 という父の声に促されて、私は入りました。固い顔をした両親。同じような表情を私もしていることでしょう。
怒られてもいい。
責められてもいい。
決意が揺らがない内に私は、二人の顔を見てから切り出しました。
「お父様、お母様、私っ、私、ピーテル様と婚約を解消したいですっ!」
かなり大声で叫んだ私。少しだけ落ちた沈黙。
父が静かに呼吸する音が聞こえました。
「どうして、そう考えたのか……教えてくれるかい?」
やがて父の声が聞こえて、私は初対面の時から後のことを思いつくまま、色々と話します。バラバラに起こった出来事を話すから、つい最近のことを話したと思ったら数年前のことを急に話す私。それでも両親は口を挟まずに最後まで聞いてくれました。
話しているうちに、私ってピーテル様から結構酷い扱いをされていたのではないかしら? と自分で思うようにもなりました。
「それに、ピーテル様は学校で好きな人が出来たらしい、とお兄様が教えてくれました。それなら、私と結婚したくないでしょう。私だって、誰かを好きになって、誰かに好きになってもらいたい、です! そんな人と結婚したい、です!」
ちょっと息が切れてしまいました。
……ああでもそうです。
今、こうして言って分かりました。別にピーテル様のことは好きじゃなかったし、私も誰かに好きだって言ってもらいたい。好きになりたい。そんな相手と結婚したいって思っているんだって。
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